3-3-13(第237話) タンカ来訪
みんなで同じ部屋に泊まった後日。
「ふ、あぁ~・・・」
少し眩しいことに気が付き、目を覚ました。そこには、
「全員、既にでかけたのか」
全員の姿がなかった。代わりに置手紙があり、そこには、
“先に朝食を食べてくるので、起きたらロビーに来てください”
と書かれていた。俺は置手紙に従い、ロビーに向かうと、
「あ、お兄ちゃん。おっはー♪」
ルリはどこかの番組のような挨拶を交わし、
「アヤト、おはようございます。今日もいい筋トレ日和ですね」
クリムは相変わらず筋トレのことしか考えていないらしい。
「…ここの朝食は美味♪」
イブは寝起きでも食べることばかり考えている。
「…まだ眠いzzz」
リーフは食事しながらも、半分寝ていた。
「あ、おはよう、ございます」
モミジはいまだに挙動不審だった。
「ご主人様、おはようございます」
クロミルは礼儀正しい挨拶を交わしてくれた。
「さて、俺も朝食をいただくか」
こうして、俺もみんなの輪に入り、一緒に朝食をいただいた。
朝食を食べ終え、俺達が宿屋を出たところで、
「お久しぶりです!」
見慣れた?女エルフがいた。正直、ボッチな俺に人の顔を覚える、なんて至極難しいことは出来ないのだが。それにしても見覚えが…あるような?ないような…?
「お姉ちゃん、誰?」
ここで俺の意思を代弁してくれたかのように、ルリが代わりに聞いてくれた。ナイス、ルリ!
「私は緑の国の兵士団団長のタンカです!」
と、敬礼しながら答えてくれた。兵士団団長?というのはよく分からなかったが、タンカ、という名には聞き覚えがある。確か…、
(あ!?あいつ、バンダド=シンペキとの戦いでカーナ、エーガンと組んでいた3人組の1人か!?)
と、ようやく思い出した。名前や顔を見ても思い出せないなんて、さすがはボッチ!リアルの人の名前なんか微塵も思い出せないな!…自虐はこれくらいにして、話を進めるとしよう。
「た、タンカか。久々だな」
「は、はい!」
「それで何の用だ?」
そういった瞬間、タンカの顔が濁る。
「?どうかしたの?」
ここで何かを察したらしく、リーフも話に加わる。
「実は…、」
ここでタンカは、意味ありげにルリ達を見た。一体どういう意図で見たのかは分からないが、話をする際、ルリ達には聞かせたくない、ということなのか?俺がタンカの意図に悩んでいると、
「…クロミルちゃん。ルリちゃん、モミジちゃんを連れてどっか行ってもらえませんか?」
リーフはいつにもなく真顔ならぬ真声で話した。
「ねぇ?ルリもリーフお姉ちゃん達と一緒に…、」
ルリが言い切る前に、
「ごめんね。でもこれは、私達だけでまず話し合う必要があるの」
子に言い聞かす母親のようにリーフは諭す。
「…私、要らないの?」
ルリの言葉に、
「ううん。ルリちゃんは私達に必要よ。でも、ルリちゃんには聞いてほしくないことがあるの。だからごめんね?」
…正直、リーフには嫌な役を押し付けてしまったと思う。これでルリが承認しても、ルリが恨むのはリーフただ一人。本当なら俺が言うべきことなのだが、言わせてしまったな。
「・・・分かった。クロミルお姉ちゃん、モミジお姉ちゃん、行こう?」
「…かしこまりました」
「…うん」
何か言いたそうにしていたが、二人ともルリの後についていった。そういえばあの3人、どこに行くのだろうか?ま、クロミルがついているから大丈夫だろう。
「…あなたもルリ達に付いて行った方がいいんじゃないの、筋肉お化け?」
「ほう?私にそんなふざけたことを言える立場ですかね、この食欲お化けが」
「「・・・」」
二人は喧嘩を始めんばかりの視線をぶつけ合ったが、
「これは後でけりをつけましょう」
「…ん」
どうやら、後で決着をつけるらしい。確かにこの場で行われても困ったから結果オーライだな。
「これで話せるか?」
これで話すことができない、なんてことはないだろう。
「…実は、この国、シンペキの門に、その問題があります」
「「「「問題????」」」」
タンカが言う問題について疑問を持ったまま、
「ここで話すより、見た方が早いかと。私がご案内いたします」
俺はタンカの案内につき、この国の入り口に向かう。
そして、実際に向かった俺達を待っていたのは、
「ちょっと、いいかな?」
「「「「!!!!????」」」」
フォレードの一員であるウッドピクシーがいた。
そして俺は無意識に、
「【空縛】」
魔法を発動させる。
「ま、待ってください!」
「?どうした?」
俺はある女エルフの兵士の言葉を聞きつつ、
「ぐっ」
確実にウッドピクシー達を束縛する。あいつらが完全に動けないようにして、それからは確実に殺す。
「そのピクシー達に敵意はありません!むしろ、このピクシー達がアヤト様方に大事なお話があるみたいです」
「ほぉ?」
俺は完全に束縛していた状態から、顔の部分だけ束縛を緩ませ、話を出来る状態にする。
「俺の大事な人達を傷つけた本人達が一体何の用だ?」
俺は憎たらしくウッドピクシーに聞く。
「私は話をしにきました」
「話だぁ?」
「はい。その話を聞いた後でしたら、私を殺しても構いません。ですから、話を聞いていただけませんか?」
「・・・」
俺は出来るだけ今の怒りの気持ちに整理をつけ、
「分かった」
俺は魔法を解除した。それは、周囲に女エルフ達が常に武装し、臨戦態勢を取っていることに安心したからだ。今のこいつらなら、いきなりこいつが暴れだしても大丈夫だろう。俺も臨戦態勢だけしておこう。
「さ。話を聞かせてもらおうか?」
「はい。実は、」
そして、ウッドピクシーからの話は、
「暴走している世界樹様を助けてほしいのです」
この場にいる全員が驚きを隠せずにいた。
『3-3-14(第238話) 世界樹、森災として復活』
シンペキの門に現れたウッドピクシー達から言われたことは、死んだはずの世界樹が蘇り、しかも、森災として暴走している事であった。そこで森災や世界樹についての話を色々聞かされる。
こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。
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