3-3-8(第232話) チーズケーキ作り後のみんな
さらに日が経ち、
「アヤト、遅いですね」
「…ん。もしかして、何かあった、とか?」
「何かって?」
そんな問いあいをしているなかに、
「それは…何でしょうか?」
「なんだか、怖いです…」
リーフ、モミジまで参戦する。モミジに至っては、見知らぬものに恐怖し始めていた。
「大丈夫だよ!なんて言ったってお兄ちゃんだもん!ね、クロミルお姉ちゃん?」
「そうですね。私のご主人様でもありますから」
一方で、ルリとクロミルは、彩人が無事であることを確信していた。根拠は何もないが、それでも信じていた。
「ですが、どうしてあれから丸二日も、あの厨房から出てこないのですか?」
と、モミジは見えている厨房を指さす。そこには、
“進入禁止!!!”
と書かれている大きな紙が貼ってあった。その紙に従い、六人は厨房に入らなかったのだが、モミジとリーフが彩人と調理をしてから2日経過している。その間、厨房から何も音が聞こえないのだ。最初は偶然か?と考えていた六人だが、時間が経つにつれ、その不安が大きくなっていき、
「あ、あの~…。アヤトさん、遅くないですか?」
このモミジの言葉をきっかけに、また六人が集結したのだ。
その間、六人は別々のことをやり、緑の国に貢献していた。
まずはクリム。
クリムは、首都全域に渡り、さきの戦いででてきたゴミを廃棄していた。このゴミは、首都の外へと持ち出され、クリムの赤間法で跡形もなく燃やし尽くした。また、自衛団に対し、特訓という名の模擬戦を行っていた。クリムは1対複数の模擬戦を行い、戦い方に関するアドバイスを自衛団にしていた。もちろん、クリムが1の方である。
イブはというと、今後の国の在り方について、カーナと詳しく打ち合わせしていた。今まで女王になるために身に着けた教養を元に、カーナと情報をすり合わせ、この緑の国での最適な環境や施設等、社会基盤についての話をしていた。その間、大量のホットケーキを食べながら話していたが、カーナはそんなことを一切気にせず、事務的な話を続行した。
リーフはというと、ギルドの再建に動いていた。壊れてしまった建物を女エルフ、モミジと共に直した。そして、建物が直ると次に、冒険者を登録させることとなった。ここで、冒険者志望の女エルフを数名、冒険者として登録させ、依頼を受けさせた。依頼内容は主に、壊れた建物の再建、食料の確保、魔獣討伐、王都の周辺調査等、様々である。時々、冒険者として登録していたリーフも、王都周辺に異常がないか調査をしていた。
ルリは、子供エルフ達の遊び相手になっていた。さすがはルリ、といったところだろうか。無限に近い体力を持ってして子供と遊んでいるため、子供の方がばてているほどである。また、冷蔵すべき食品を冷やすため、氷を出したり、体を洗うために必要な水をだしたりしていた。
クロミルはというと、怪我していた女エルフ達、重傷な女エルフ達を癒すため、古今東西走り回っていた。そして、他六人のサポートを兼任していた。ここ数日、もっとも忙しかったのは間違いなくクロミルだっただろう。
モミジはというと、女エルフ達とともにギルドを建て直すとともに、数多くの建物を修繕を行っていた。
そんなわけで、六人は緑の国再建をそれぞれの方法で貢献していたのだ。そんなことをしている間、当のあいつは何をしているのかというと、
「それで、この数日、お兄ちゃんを見た人、いる?」
「「「「「「・・・・・・」」」」」」
現在ここにいる六人には知りえないことだった。なので、最近まで一緒にいた厨房に六人は集合したのだ。
「じゃ、じゃあ、開けますよ?」
「「「「「「((((((こくり))))))」」」」」」
全員が首を縦に振ることをきっかけに、モミジはゆっくりと扉を開ける。
そこには、
「・・・」
若干白に近い透明な四角形に囲まれ、横になっているアヤトがいた。
「「「「「「!!!!!!??????」」」」」」
六人は目を見開き、近くに駆け寄ろうとするが、アヤトが設置したであろう【結界】にある程度の行動を阻害されてしまう。だが、
「邪魔」
ルリの一言と拳で、【結界】は決壊し、音が聞こえ始める。その音は、
「ふが~。ふが~。ふげ~・・・」
アヤトが、寝息をたてて寝ている音であった。
「「「「「「はぁ~~~・・・」」」」」」
その寝息に、六人は安心しきった声を口から漏らす。
そして、
「お兄ちゃん!」
ルリはアヤトに飛びつく。その飛びつきにより、
「ひでぶぅ!??」
アヤトの意識は強制的に覚醒する。
「んあ?おえ、なんか激しい痛みが…あれ?」
確かあれから・・・何だっけ?確か、新しいチーズケーキを試作してそのまま・・・そのまま?ああ、寝ていたのか。寝ていたから記憶が曖昧なのか。
「良かった~♪お兄ちゃんが無事で♪」
「んっと、ルリ?それに、みんなも!?」
なんで厨房に全員集合しているんだ?ここで喜劇でもしてくれるのか?そんな訳ないか。だとしたら一体…?
「よ、よかったです~」
「ご主人様。こんなところで寝ていたらお風邪をひいてしまいます」
「体の方は大丈夫ですか?」
「…こんなところで寝るなんて…、」
「一体、何をしていたの?」
何故か、質問総攻撃を受けてしまった。俺、そんなに長期間寝ていたのか?でも、一体どれほど寝ていたのだろうか?ま、そんなことは後回しにしよう。まずはリーフの質問に答えるとするか。ここで一体何をしていたのか、か。何をって、厨房でやることは一つしかないと思うのだが…。
「それはもちろん、料理だが?」
というか、みんなも料理していたわけだし、聞かなくても分かることなんじゃないのか?
「え?三日も、ですか?」
「え?」
三日?・・・あ、そうか。
ベイクドチーズケーキ、スフレチーズケーキ、レアチーズケーキ。一日一種類のチーズケーキを大量に作ったからな。計三日。なるほど。
「そうだぞ。何より、お前らも一緒に作ったじゃないか?」
「「「「「「・・・え??????」」」」」」
「え?」
なんだそのえ、は。俺が何かしたのか。何かした記憶は…ああ。独りで新作チーズケーキを作っていたな。もしかして、それのことか?でも、あれからすぐに寝て今に至るわけだし、それはないな。
「…もしかしてアヤト、気づいていないの?」
「?何がだ?」
俺がいかにボッチであることか。それはもう、神が認めるくらいには…。
「アヤトさん。私とチーズケーキを作ってから、もう三日経っていますよ?」
「え?・・・え?」
確か、モミジと一緒に作ったのはレアチーズケーキ。でもあれは昨日作ったはず。だが、モミジが言うには、あれを作ったのは三日前だという。これは・・・どっちが正しいんだ?言っている様子から、モミジが嘘言っている訳はなさそうだし、他のみんなも同意している感じだ。まさか、四面楚歌か。この矛盾を確認するには、
「今日は何日?」
と、イブに確認してみたところ、確かに、レアチーズケーキを作ってから三日が過ぎていた。あ~あ。俺の貴重な休日が…。これでは、碌に休みも取れていないじゃないか。ここで俺がとるべき行動は…、
「そうだったのか」
とりあえず、六人の意見に賛成の意を示し、
「そうです!」
「…心配だった」
「とりあえず、無事で何よりです」
「うん。俺は無事だ。だから、お休み」
そして、安眠をとることだな。俺はアイテムブレスレットから寝袋を取り出し、それに入る。ああ。このフカフカ感、さいこー♪
「それじゃあおやす…、」
「「「「「「させません!!!!!!」」」」」」
「ああ!!??」
俺の寝袋!!返して!というか、どうやって取ったの!?返せ!返して!!
「お兄ちゃん?何か言うことがあるんじゃないの?」
と、ルリは若干、というかかなりの怒気を感じさせ、
「…それだけ?だったなら、許さない」
「アヤト。それは許しませんよ?」
「イブとクリムの言う通りです。これはもうきついお仕置きが必要ですね?」
イブ、クリム、リーフも同様であった。
あ。これ、やばいやつだ。早く逃げ…られないな。この厨房って、出入り口が一つしかないわけだし。今になって、この厨房の造りにいら立ちを覚えてしまう。そんなところに怒っていてもしょうがないのだが。
「!?クロミル、モミジ!お、お前らは味方だよな!?」
俺はまだ敵対していないであろうクロミル、モミジの2人に応援を頼む。あの4人に対抗するためには、1人では絶対に無理だ。だから、
「な?お前らなら、な?」
頼む!俺の味方になってくれ!
「「「クロミルちゃん???」」」
「クロミルお姉ちゃん?」
「!!??…」
プイ。
「…外の様子を見てきます」
そう言って、クロミルは厨房から出て行った。
はぁ!?
く、クロミル!?俺を裏切ったな!?
だったら、
「も、モミジは俺の味方だよな!?だよな!!??」
「え、えっと…」
モミジは、
「「「「・・・」」」」
4人の無言の視線攻撃に、
「わ、私も外の様子を見てきますね!!」
耐えきることが、できなかった。
つまり、この場には俺の味方がいない、というわけで…、
「え?え??」
みんな、俺の元にゆっくり近づいていく。逃げ道を完全に塞ぎつつ、俺を追い込むさまは、用意周到な策略に嵌った愚者の気持ちだ。
「「「「覚悟してね????」」」」
「いーーーやーーーー!!!」
俺はこの日、自身の体の動きを一切制御され、あんなことやこんなことをされてしまった。
『3-3-9(第233話) 女エルフ達との祝杯』
みんなが働いている中、彩人は熟睡していたため、4人にお仕置きされてしまう。その後、彩人達は祝杯を、みんなで作ったチーズケーキを女エルフ達に振る舞うため、国を挙げての祝杯を行う。
こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。
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