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色を司りし者  作者: 彩 豊
第三章 赤茶色くなり始める世界樹
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3-3-7(第231話) チーズケーキ作り~レアチーズケーキ~

 三日目。

 今日も俺は、チーズケーキを作るため、朝から厨房に入る。中に入り、材料の確認をする。

「材料よし。器具よし」

 後は、

「やる気皆無。なので、作りません」

 どんなにいい人材でも、いいものを使ったとしても、やる気がなければ、全てを台無しにしてしまうだろう。なので、やる気皆無の俺が今作る行為は、材料を無駄に捨てることと同意義と言えよう。よって、作りません!…昨日と一昨日も同じことを思っているが、そんなことは知りません。さて、今日こそさぼりましょう…、

「あ、アヤトさん!今日はよろしくお願いします!」

「zzz…」

「あ、リーフさん。アヤトさんが来ましたよ」

「…ふぇ?」

 …なんか、やる気がさらに無くなったな。俺の目の前で寝られたらたまったものではないな。

「俺、寝るわ。モミジ、後はよろしく」

「え?あ、ちょっと!」

 いいところに椅子があったし、ここに座って、と。座り心地が悪く、背もたれがないが、立って寝るよりましだろう。

 さて、お休み…、

「あの!チーズケーキ!作りませんか!?」

「「!!??」」

 モミジの語りかけにより、俺とリーフは起き上がる。

「チーズケーキ!それはぜひともいただかないと!起こしてくれてありがとうね、モミジちゃん!」

「あ、いえ、そんな…」

 と、リーフはモミジに感謝していた。俺はと言うと、

(なんか怠いな…、)

 やる気どころか、生気すら感じられない目をしていた。あ~、面倒くさい。だが、俺もやらないとな。ほんと、面倒くさい。

「さて、頑張る、か…」

 なんか、怠さだけでなく疲れも出てきたな。2日連続で一日中料理していたからかね。だが、これを毎週料理人はやっているのか。凄いな、料理人。俺には一生出来ないな。俺なら楽に生活できるようになりたい。例えば…投資をして、楽に大儲けしたいな。その後は、大儲けした金でメイドを雇い、身の回りの世話を頼みたいな。俺はその間、一日中寝っ転がり、楽で自堕落な生活を延々と送っていきたい。これが今の俺の夢だ!

 え?そんな夢無理だって?まぁそうだろうな。まず、投資で上手く成功できるかどうかである。投資で失敗すれば間違いなく、生活が破綻するからな。そして…、

「やと。アヤト!」

「おおぅ!?」

 おおっと。無理や綻びがあり過ぎる将来設計を考えていたら、思わず現実から意識逃亡を図るところだったぜ。あ~、早く夢の中で自堕落を謳歌したい。

「チーズケーキですよ!早く作りましょう!」

「…そうだな」

 ま、こんなところで現実逃亡していても仕方がない。今はチーズケーキ作りに集中するとしよう。


 今回作るチーズケーキはズバリズバリ!レアチーズケーキだ!

 作り方はこんな感じだ。



・材料に魔力を込める

・ビスケットは細かく砕く。バターをレンジで溶かしてボウルに入れてビスケットと混ぜる

・ビスケット生地を型に敷き、冷蔵庫で冷やしておく

・新たに,クリームチーズをレンジで十数秒チンし、柔らかくする。砂糖を加え、なめらかになるまで混ぜる

・新たに、生クリームに残りの砂糖を加えて八分立てにする

・柔らかくしたクリームチーズと、砂糖を加えた生クリームを混ぜ、ビスケット生地の型に入れる。冷蔵庫で冷やす

・出来上がりを待ちつつ、冷蔵庫の前で祈りを捧げる

・出来上がり



 こんなものだろうか。ちなみに、祈りを捧げるのは各自自由でやってくれ。もしかしたら美味しくなる、かも?ま、愛情で料理の味が変わる、なんて言われるくらいだし、祈りでもいけるのではないだろうか。そんなこと知った事ではないが。

 材料は、クリームチーズ、生クリーム、バター、ビスケットくらいだろうか。足りない時は…知らない。ま、それで作れなくなったら…どんまい。そう自分に言い聞かせてくれ。これらの調理工程をリーフとモミジに話したところ、

「…なるほど。大体分かりました」

 リーフは納得していた様子だったが、

「へぇ~。こんな風に調理するのですね」

 モミジはレアチーズケーキ、というより、料理そのものに感心したようだった。そういえば、モミジが調理している場面、一度も見ていなかったな。

「モミジは料理するのは初めてか?」

 と、軽めの雰囲気で言ってみた。まぁ雑談程度だし、深くは気にしないよな。

「え、ええ。初めて、です」

 と、モミジの発言に、

「「・・・え??」」

 俺とリーフ共々驚いた。だって、

「だって、今まで一緒に料理してきたじゃないか?」

「そうです!この前のホットケー、キ、も…」

 と、リーフは深く考え始めていた

「そう言えばあの時、まだモミジちゃんはいませんでしたね」

「あの時ってどの時だ?」

「青の国にでてから数日経った後、大量にホットケーキを作ったじゃないですか」

「大量に…ああ。そんなこともあったな」

 確か、クロミルは30枚ホットケ―キを焼いていたんだっけ?リーフもかなり焼いていたよな。そのおかげで、カーナ達女エルフにもホットケーキを振る舞うことが出来たんだけどな。確かにその時はモミジ、いなかったよな。

 あれ?でも、

「モミジもけっこう作っていたんじゃ…?」

 俺は言いながら気づく。

 そういえば、モミジが料理しているところ、一度も見たことが無いな。今思い返すと、主にモミジが手伝っていたのは、皿を運んだり、洗ったり、用意したりと、主に調理以外のことをしていた気がする。それでも問題が無かったと言えばなかったが、ここにきてまさか、まさか…!

「あ、あの」

「…ん?どうした?」

 俺は冷静になってから返事をする。

「もしかして私、何かしたのでしょうか?」

「…いや、何も悪いことはしていない。だから大丈夫だ。だよな?」

 俺はリーフに確認をとる。独りよがりな判断はよくないからな。団体行動においては、ですけど。

「そうです。最初はみんな、そんなものです。これを機に料理しましょう?ね?」

 と、リーフは優しくモミジに語りつつ、体を寄せている。俺もあの幸せな温もりに包まれたい。

「は、はい…」

 モミジはリーフの…母性?母なる雰囲気?そんなものに後押しされ、料理を頑張ることとなった。

「ではアヤト、頑張って一緒に作りましょう」

「そう、だな」

 さて、モミジの料理教室も兼ねて、頑張るとするか。


 料理を作り始めてしばらく。

「・・・ふぅー」

 大体こんなものか。見た目もケーキ屋やコンビニでよく見かけるものとよく似ているし、これで完成したのだろう。

「これで完成、なのですか?」

「どうなの、アヤト?」

 俺が完成品をマジマジと見ていると、リーフとモミジが話しかけてくる。そういえば、二人はレアチーズケーキの完成品を見たことなんてなかったんだもんな。これで完成なのか不安なのだろう。

「ああ。これで完成だぞ」

 俺は二人を安心させるため、二人に完成した趣旨を伝える。

「ほ、ほんとですか!?これで私も立派な料理人に…!」

「モミジちゃん。これだけ出来ていても、料理人にはなれないわよ?」

「そ、そうなのですか。料理人って、奥が深いです…」

「とはいえ、これは素晴らしいです…」

「はい。とても、とっても、です…」

 と、二人はレアチーズケーキを見ていた。

 確かに、こういったケーキ?洋風料理?デザート?には、味が勿論の事、見た目が重視されることもある。だから、見た目にもある程度気にしなくてはならないわけで、この点では、俺は成功したのだろう。自分で自分を褒めてやりたい。ナイス、俺!

「さて、試作品用に小さく作った事だし、食うか?」

 と、二人に話を振ると、

「いつでも食べる用意は出来ています」

「フォークとお皿はバッチリです!」

 リーフは自分の分のフォークと皿、モミジは自身の分だけでなく、俺の分まで用意してくれていた。相変わらず、用意の速さが尋常じゃないな。その速さだけは見習いたいものだな。俺は三等分に切り分け、それぞれの皿に盛る。本当なら、これに何か葉っぱ?みたいなものを添えるべきかもしれないが、今回は大目に見て欲しい。これはあくまでレアチーズケーキの試食だからな。完成品ではないのだ。…なんか、言い訳ばかりしているような気がしないでもないな。気にしたら負けだと思うので、気にしないようにしよう。

「さ、いただきます」

「「いただきます!!」」

 こうして俺達は、レアチーズケーキの試食会が始まる。


 試食してみた結果、

「「お、美味しい!!??」」

 二人は、俺がビックリするくらい驚いていた。そんなに驚くことか?確かに上手く出来た自信はないこともないが、それほどなのか?俺も一口食べてみるとするか。

 ・・・うん、美味い。舌触りが滑らかで食感もいい感じだ。いい感じと言っても伝わり切れないかもしれんが、そう言うしかない。これは確かに美味しいな。そういえば、これを始めて食べた時の感想は、リーフやモミジと同じ反応をしていたかもしれない。そう考えると、俺の舌も肥えてきたのかもしれない。いや、それほど俺の心が荒んでいるのか?その結果がこれなのかもしれない。新しいことに対してもやや冷めているような、冷静なような、そんな感じだ。だから、二人が輝いている見えるのもそのせいかも。

「うん、美味いな」

 その一言で、

「確かに美味しいですよね!」

 と、リーフからの相槌が送られ、

「こんな料理を作れるなんて、さすがです」

 モミジからは尊敬の眼差しを送られた。いや、別にそこまで尊敬されるほどの実力はないのだが?

「いや、偶然だぞ?」

 俺だって、食べたい料理を検索エンジンで検索し、作り方を調べただけだし。だからこれは俺自身の力ではなく、ネットの力と言えよう。ネットの力はボッチを支える貴重なアーティファクトなのだ!…俺は何を考えているのだろうか?

「ま、美味しいならよかった。これを食べ終えたら、これからガンガン作るぞ」

 最初は結構、調理器具や材料の確認、調理工程の確認等、思った以上に時間がかかってしまった。料理に関してはド素人のモミジがいるのだから、時間がかかるのは考慮していたが、これからはガンガン手伝ってもらうからな!

「は、はい!頑張ります!」

 モミジはやる気に満ち溢れていた。そんなにもやる気なのはいいことだが、俺のやる気は皆無なんですよ?

「一緒に頑張りましょう!ね、アヤト?」

 と、やる気皆無な俺に話を振ってきた。どうしよう?急に俺、やる気が…。だが、やらなくてはならないだろう。あんなにもキラキラ穢れを知らない者のためにも。

(ふぅ)

 俺はやる気を吐き捨て、

(やりますか)

 そう覚悟を決める。

 こうして、3人のレアチーズケーキは再開する。


 さらに時間は経過。

「も、もう作れません…」

「ま、魔力が…」

 リーフとモミジ双方ともお疲れだった。まぁ無理もないだろう。かき混ぜる工程で、腕が疲れたからといって、魔力を使い、緑魔法で風を上手く使ってかき混ぜるにしても、魔力を消費するのだから当然疲れるし。

 え?それじゃあ俺は疲れないのかって?それはきっと、ホットケーキを大量に作っていたから、その慣れだよ、多分。それ以外思いつかないし。無論、リーフ達もホットケーキを作っているだろうが、俺はその何倍も作っているからな!これだけは、俺が自慢出来る唯一の点と言えよう!これこそ、婚活パーティ等で言える、数少ない自慢の一つだ!!

 ・・・ま、婚活パーティに行けるほど、友好関係は厚くないですけどね。婚活パーティとか、どうやったら行けますか?誰か教えてください。ま、俺には既に最良の…おっと。これ以上は惚気になるので控えましょう。

「さて、今日はありがとな」

 俺は作ったレアチーズケーキを全てアイテムブレスレットに収納し、お礼を言う。

「い、いえ…」

「大丈夫です。私も十分楽しめましたから…」

 と、リーフとモミジは疲れつつ、返事をしてくれた。ま、疲れたなら休息は必要だよな。

「それじゃあ、今日はお疲れさん。後は部屋で休んでくれ」

「は、はい…」

「お、お疲れ様でした…」

 二人はゆっくりと部屋に戻っていった。よほど疲れたのだろう。きっと今日は安眠に違いないな。

 さて、

「おまけにあれを作るかな」

 独りになった俺は、検索エンジンを使って、とある料理を調べだす。

「・・・うん。これなら、みんなも喜んでくれるかな?」

 俺はみんなの喜ぶ顔を想像しながら、

「・・・」

 頬をひとりでにかく。あんな笑顔が見られるなら、作るかいがあるかも。それじゃあ、

「始めるか」

 俺は料理研究を一人で始める。この料理でみんな喜んでくれるといいな、なんて。そんなことを考えながら料理を作り始める。

『3-3-8(第232話) チーズケーキ作り後のみんな』

 3日間のチーズケーキ作りを終え、彩人以外の6人はそれぞれ緑の国に貢献するため、働いていた。一方、肝心の彩人はというと・・・。


 こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。

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