3-3-6(第230話) チーズケーキ作り~スフレチーズケーキ~
二日目。
今日も俺は、チーズケーキを作るため、朝から厨房に入る。中に入り、材料の確認をする。
「材料よし。器具よし」
後は、
「やる気皆無。なので、作りません」
どんなにいい人材でも、いいものを使ったとしても、やる気がなければ、全てを台無しにしてしまうだろう。なので、やる気皆無の俺が今作る行為は、材料を無駄に捨てることと同意義と言えよう。よって、作りません!…昨日と同じことを思っているが、そんなことは知りません。さて、今日こそさぼりましょう…、
「ご主人様。今日も頑張りましょう」
「…ん」
と思ったが、クロミルとイブが既にスタンバっていた。
「クロミル、イブ。今の俺には、やる気が皆無なんだ。だから、チーズケーキは作れません!」
と、きっぱり断り、俺は近くに会った椅子に座る。そしてそのまま深い眠りへと、
「…さぼり、だめ」
「ふんげぇ!?」
いざなわれなかった。俺はイブに強制的に立たされ、
「ご主人様。お手を拝借させていただきます」
と、クロミルは俺の手を水道の水で洗ってくれた。なんか、ちょっとした貴族気分だ。手を洗うのにも、立つだけでも人の手を借りる。自身の力をほとんど使わない生活って、素敵だ。
「…これで、ご主人様のお手は綺麗になりました」
「…ん。次はアヤトの番」
と、イブから材料を渡されてしまう。あ~あ。やっぱ作らなくちゃ駄目なのか。いざ作るとなると、萎えるんだよな。ま、
「「・・・」」
あそこまで期待の眼差しで見られたら、いやでも頑張らなくちゃ、とか考えちまうよな。
は~。俺は気合いを入れ直し、
「さ、今日も頑張りますか!」
「「はい!!」」
こうして俺達は、材料に手を付け始める…前に、1つだけ言いたいことがあった。
「…?どうかした?」
イブが俺に向けて疑問を投げかけてくる。
「ああ。それはな、」
「…ん」
「イブ。今日はつまみ食いすんなよ?」
「!?…ひどく侵害!私だってそこまでしていな…、」
「いや、かなりの頻度でしているからな!?クリムにも指摘されたことあっただろ!?」
「…あ」
「な?」
「…それは気のせい。…とにかく、今日は大丈夫」
「「・・・」」
「…もしかして、疑っている?」
「うん」
「えっと…、申し訳ありません…」
こんなやり取りもほどほどにし、ケーキ作りを始めよう!
本日作るチーズケーキは、ズバリ!スフレチーズケーキ!!レシピはというと、
・材料に魔力を込める
・クリームチーズと牛乳、分量の砂糖の半分を入れて弱火で材料が混ざるまでかき混ぜる
・かき混ぜたものを人肌以下になるまで冷ます
・冷ます間に卵を卵白と卵黄に分ける
・分けた卵黄を、冷ましたチーズ生地に入れ、混ぜる
・ふるった小麦粉を入れ、混ぜる
・卵白をボウルに入れて混ぜ、途中、半分残した砂糖を3回くらいに分けてしっかりとしたメレンゲを作る
・チーズの生地にメレンゲを少し入れ、ヘラで完全に混ざるまでよく混ぜる。全体に混ざったら、再びメレンゲを少し入れて、ヘラで混ぜる
・一度目よりざっくり~な感じで混ざるまで混ぜる
・残ったメレンゲのボウルに、メレンゲを混ぜたチーズ生地を全て入れ、ヘラでざっくり全体が混ざるように混ぜる
・型に生地を流し入れる
・オーブンに入れ、焼く
・焼く内に表面を焼き過ぎてしまう場合、途中でアルミホイルをかぶせる
・焼きあがったらすぐにオーブンから出さず、ドアを薄く開けてゆっくり冷まし、粗熱が取れたくらいでオーブンから出す
・最後、出来たスフレチーズケーキを片手にブイサインする
・完成品に祈りを捧げる
こんなものだろうか。昨日作ったベイクドチーズケーキより工程が多く、非常に面倒くさく感じてしまう。だが、せっかくみんなが楽しみにしているのだ。なら、その期待に出来る限りこたえるため、これぐらいはしなくては、かな。
材料は、クリームチーズ、牛乳、砂糖、小麦粉、マーマレードジャム(表面に塗る用)くらいだろうか。足りなくなったら随時足していくことにしよう。
…ところで、最後のブイサインはいらないんじゃね?という声も出るかもしれないが、これは必須事項である。せっかくできた料理。ピースくらいしてもいいだろう。さて、これを二人に説明したところ、
「「???」」
…二人とも、よく分かっていないようだった。特にメレンゲ、という言葉に違和感を覚えている様子だった。なので、俺が一人で作り、説明しながら作っていく。その俺の様子に、
「なるほど」
「…よくこんな工程を思いつく」
二人とも感心していた。
そして、
「・・・ふぅ。とりあえずこんなものか」
スフレチーズケーキが完成した。
「表面にはマーマレードジャムを塗ってみたが、成功だな」
見た目的にも香り的にもかなりいいな。地球でこれをやったらパティシエに…なれないだろうな。これぐらい作れる奴は地球に2億といるだろうし。だが、今ぐらいは誇っていいだろう、うん。
「お、美味しそうです…」
「…早く食べたい」
二人は涎を垂らさんばかりに凝視している。俺はそのスフレチーズケーキを3等分に切り分け、
「ほい」
「「・・・」」
切り分けたそれぞれのスフレチーズケーキを穴が開くぐらい見る二人。
「どうぞ」
「「!?」」
二人は最初、猛虎のような目でスフレチーズケーキを見つつ、上品にフォークを用いて口に運ぶ。
「「!!?お、美味しい!!?」」
どうやら、二人にはこのスフレチーズケーキは気に入ったらしく、目をトロトロにさせていた。これ、そんなに美味しいのか?俺も食べてみるとするか。・・・うん、確かに美味いな。フワフワで食感が良く、ベイクドチーズケーキとは異なったうま味があるな。これはこれでやみつきになりそうだな。これだけ食べて、栄養失調にならないよう、注意しないとな。二人は…もう食べ終えているし。俺、まだ三口しか食べていないのだが?相変わらず食べるスピードは凄まじいな。
「さて、」
俺は自分のぶんを半分にし、
「残りはやるよ」
と、俺は二つに切り分けたスフレチーズケーキをクロミルとイブに差し出す。
「よ、よろしいのですか?」
と、クロミルは既に手をだし、
「…それじゃあいただきます」
と、イブは差し出したスフレチーズケーキを小さく切り分け、フォークを突き刺して口に運ぶ。
さて、俺は再び材料の準備をして、と。
「お、美味しかったです…」
「…ん。美味美味♪」
良かった。二人とも満足してくれたみたいだ。
さて、
「それじゃあ次は、二人にもやってもらうからな?」
この言葉に、
「「はい!!」」
二人は返事を返す。その返事から、さっきより強固たる覚悟を感じられた。
時間が経過し、
「ふぅ。こんなもの、でしょうか…」
「…ん。なかなか大変」
無事、二つ目のスフレチーズケーキが出来上がった。さっきと同じように、今回は表面にブルーベリージャムを塗ってみた。見た目的には、さっき作ったスフレチーズケーキと変わらないと思う。どうやら、上手く出来たみたいだ。焼き時間も不足した、なんてことはないだろうし。実際、美味そうである。食べたい。せっかくだし、味見で食べるか。二つ目だが、小さく作ったし、全部食べられるだろ。俺独りで食べる訳じゃないし。
俺達は再びスフレチーズケーキを食べる。
「うん…うんうん」
さっきとほぼ変わらない味と食感だ。若干、さっきより甘みが強いような気がするが、これぐらいは許容範囲だろう。
「・・・」
クロミルは、言葉では言わないが、尻尾がクルクルと器用に回している。
「・・・」
イブの方は、さっきと同じように、目がキラキラと輝いていた。この目だけを見れば、純真無垢の子供みたいだ。俺もこんな純粋な時代があったんだよなぁ。今はもう穢れ切っているが。…美味しい物食べたはずなのに、何故ここまで気持ちが沈むのだろうか。…俺の自業自得だな。
「さ。これで大体コツとか分かってきたと思うし、これからガンガン作るぞ!」
俺は自身の気持ちを切り替えるため、若干大きな声で二人に話しかける。近所迷惑のことは…考えなくていいよな?ここ、王城の厨房だし。
「「はい!!」」
こうして、俺、クロミル、イブの3人はケーキ作りに精をだしていった。
さらに時間が経過。
厨房内には、それはもう甘いあま~い香りが厨房を独占していた。それ以外の香りや匂いはここにいづらくなったのか、どこか別の場所に行ったみたいだ。そんなことを頭の片隅で思いながら、俺は厨房内にどんどん出来上がるスフレチーズケーキを見る。乾燥しなきゃいいけど。あ、俺のアイテムブレスレットに全部収納すれば問題ないか。というわけで、全部アイテムブレスレットに収納して、と。これで厨房内も少しは片付いたものだ。うん。
さて、
「お~い。大丈夫か~?」
「も、問題、あるかもしれません…」
「…う、腕が…」
二人はダウン、と。
無理もないか。このスフレチーズケーキ、かき混ぜる工程がかなりあったもんな。3人で分担したとはいえ、それはもう重労働だろう。となると、パティシエの腕って何故あんなに細いのだろうか。毎日こんなことをしていれば、腕だけがパンパンになり、腕だけ激マッチョになること間違いなしなのにな。・・・あ。そういえば地球にはミキサーとか、ハンドミキサーとか、そういった類の道具があったこと、すっかり忘れていたな。こっちは全部人力でやっていたからな。後でそう言った類の道具も開発したいものだ。いや、もしかしたらどこかに売っているのかも?
一方の俺はというと、そこまで痛くないんだよな。おそらく、ホットケーキを作りまくったおかげ、だろうな。もちろん、クロミル達もたくさん作っているが、俺は文字通り、作った桁が違うからな。ほんと、ホットケーキばかり作っているよな、俺は。ま、いいけどさ。
さて、大きさ的にも枚数的にも、あれだけあれば、22人分の胃袋を鷲づかみに出来るだろう。ふふふ…。おっと、気味の悪い笑みがでてしまった。反省反省。さて、
「今日はもう疲れただろう?もう休んだら?」
「で、ですが…!」
「ほれ」
俺は今も強がっているクロミルの両腕を軽くつつく。
「!!?」
クロミルの体が急に震える。こう思うのは悪いことなんだけど、もう一回試したい。
「…私は、休ませてもらう」
そう言って、イブは腕を抑えながら厨房を出ていった。
「ほれ。後は俺がやるから、クロミルも休んでおけ」
「かしこまり、ました…」
こうして二人は、厨房を後にしていった。
さて、片づけはほとんど済んでいるし、明日作るやつの工程でも確認しておくとするか。
「おっと」
いつのまにかいやらしいテクニックについて調べていたようだ。いっけな~い、てへぺろ♪…自分で言うのも何だが、やっていて恥ずかしくなるな。さて、今度こそ真面目に調べるとするか。
「ふぅ…」
予習はこれぐらいにして、と。
「俺も寝るか」
こうして俺も、厨房を後にする。
『3-3-7(第231話) チーズケーキ作り~レアチーズケーキ~』
チーズケーキ作り3日目。リーフとモミジの監視の元、第3のチーズケーキ、レアチーズケーキを作り始める。
こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。
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