表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
色を司りし者  作者: 彩 豊
第三章 赤茶色くなり始める世界樹
227/546

3-3-2(第226話) 忘却された約束

 ある日俺が、

「…はぁ~。やっぱ、横になるって最高だな」

 休息を楽しんでいると、

「お兄ちゃん!今日はルリと遊ぼ―♪」

 邪魔者(ルリ)がやってきた。俺は速やかに排除すべく、

「ルリ。今日俺は忙しいんだ。またの機会に、な?」

 俺は優しく言う。

「え~?ルリはお兄ちゃんと遊びた~い!」

 と、幼少期ならではの我が儘を言ってのける。ち。

「…そうか。そういえば、クロミルに新作のお菓子を…、」

「今すぐクロミルお姉ちゃんのところに行ってくる!!!」

 そう言って、ルリは俺の前から消えた。

「渡したような、渡してないような…、」

 と、続きの言葉を独り呟く。もちろん、さっき言った言葉は嘘ではない。だが、最後まで俺の話を聞いていなかったルリは間違い無いなく、勘違いしただろう。俺の平穏のために、クロミルよ、ルリの面倒を見ておいてくれ。

「さて、俺は寝るか」

 こうして、平穏を無事に取り戻せた。


 なんて思っていたが、

「・・・!?」

 俺が貼っておいた【結界】外で、ルリがなにやらお怒りのようだ。ちなみに、この結界には【遮音】を付与している。だから、音は遮断され、俺の耳に聞こえないのだ。こっから見ると、ルリが必死に口パクしているようにしか見えない。

「・・・!?」

 口パクしていたルリは俺の【結界】に近づき、

「・・・!」

 拳を振り下ろす。結果、【結界】は破られてしまった。ま、1枚だけだったからね。しょうがないと言えばしょうがないな。

「お兄ちゃん!クロミルお姉ちゃんに聞いてみたら、クロミルお姉ちゃんも“どういうこと?”って聞き返されたよ!どういうこと!?」

 あ~あ。こんなことになるんだったら、もっとばれにくい嘘をつくべきだった。今更な後悔をしつつ、

「いや、あの話には続きがあってな、それを最後まで聞いていたら、ルリも思いとどまったかもしれなかったのにな~」

 と、俺は思いっきり開き直り、ルリのせいにする。まるで道化だな。

「ふ~ん?そういうこと、言っちゃうんだ~?」

 ルリは腕を組み、若干呆れ顔をしている。

「それで、そんなことを言うとどうなるんだ?」

 経験則から言わせてもらえば、俺が危ないと自覚しているが、強がりを言ってみる。俺だって強がりたいお年頃なのだ。

「あれからお兄ちゃん、全然動いていないよね?」

「そうだな」

 あのバンダドとの戦いから数日経過しているが、俺は運ばれた数日前からこの部屋をほとんどでていない。出ていく用があった時は確か…ようをたすくらいだったか。

「全く何もしていないよね?」

「そうだな」

 俺は暇になればネットサーフィンをし、眠くなれば難しそうな情報を読み漁り、いつも途中で寝落ちする。そんなサイクルを不定期に繰り返していたな。

「ということは、あれを全く作っていない、ということだよね?」

「ん?あれ?あれって何だ?」

 正直、嫌な予感がした。一瞬、とてつもなく寒い風が背中に走るが、俺は気のせいだろうと心の中で断言し、話を続ける。

「…チーズケーキ」

 ルリのはっきりとした声。そして、その声で、

(チーズケーキ?・・・あ。ああ!!??)

 俺は今まで記憶の奥底にしまい込んでいた情報を引っ張り出す。そういえば約束していたんだっけ?すっかりうっかり忘れていた。

「…もしかして、本気で忘れていたの?」

 ルリは一気に悲壮感溢れる顔になり、

「作って、くれないの?」

 泣きそうな顔をしていた。

 ・・・はぁ。俺もまだまだだな。

「…すまん。少しゴタゴタしていて忘れかけていた」

 俺はルリの頭の上に手を置き、

「だが、必要な材料の調達が出来なくてな。ここ数日どうしようかと悩んでいたんだ」

 よし!とりあえず、咄嗟に考えたにしてはかなり良い言い訳だな。言い訳に関してはかなり上達した。…嫌な上達だ。

「ほんと?」

「本当だ」

 ルリの問いに俺は即答した。こういう時は即答し、相手に考える時間を与えないようにしないとな。少し考えれば嘘だと見抜かれる可能性があるからな。

「…ほんとのほんと?」

「そんなに俺のことを信じられないのか?」

「うん」

 ・・・。

 ま、現在進行形で嘘ついているわけだし、疑う気持ちも分かるけどさ。本人目の前にして言う事ですか?俺、結構傷ついていますよ。

「…分かった。必要になったらルリを呼ぶから、また後で来い」

「…絶対、絶対につくってよ」

「おう」

「忘れないでね!」

 そう言って、ルリは去っていった。

 ・・・。

「よし!時間稼ぎ成功!」

 罪悪感は多少あるが、仕方がない。さて、

「とりあえず、必要な材料と時間、作り方を調べておくか」

 俺は検索機能を用いて、チーズケーキの事について調べ始めた。

次回予告

『3-3-3(第227話) 大人なひと時』

 チーズケーキの作り方を、検索エンジンを用いて調べていると、リーフ、イブ、クリムが部屋にやってくる。3人が来たきっかけは、彩人のあの言葉であった。


 こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。

 感想、評価、ブックマーク等、よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ