表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
色を司りし者  作者: 彩 豊
第二章 鮮緑と老緑混じり合うエルフ達
225/546

3-2-35(第224話) シンペキへの乗り込み戦~その12~

「はぁぁぁ!!」

「ふん!」

「「そこ!!」」

 俺達とバンダドは今、均衡状態となっている。

 バンダドの攻撃は、俺の所有している神色盾、【魔力障壁】、【結界】の3つを用いて全て防いでいる。時折、カーナとエーガンを襲ってくるが、地盤を固くすることで、蔦が生えてこないようにした。蔦や植物は、土を押しのけて、地中から顔を出す。なら、その土を押しのけることが出来なければ?植物は地中に存在したまま、日光を浴びることなく枯れ果てるだろう。

 そして、カーナとエーガンの攻撃は決定打にならない。確かに、バンダドの戦力は削れている。だが、奴の体は人間、というより植物に近くなっている。足が人間の足、ではなく、さらに樹木の幹のような太いものが数本、腰からでている。そこで体を支えているのだろうか。動きを制限してもなお、メリットを優先させたのだろう。そのメリットはおそらく、

(地面からの養分補給、か)

 地面から栄養を摂取することで体力を回復させ、蔦を増やしているのだろう。だから、多少動けなくなってもいい、ということなのだろう。本当にうざいな。

「カーナ、エーガン」

「何でしょう?」

「何よ?」

「…何か、決め手はあるか?」

「…一つ、あります」

「なるほど。あれね」

 どうやら、何か思い当たる節はあるらしい。なら、それに任せるとしよう。

「…分かった。時間は十分稼ぐから、任せる」

「分かりました」

「了解」

 俺は再びバンダドの前に向かう。

「いい加減、お前もそいつらも目の前から消えたまえ。王の御前だぞ」

「お前こそ、いい加減死ね」

 奴の蔦を、俺の神色盾で受け流す。

「貴様はさっきから守ってばっかで攻撃なぞ一切していないではないか」

「信頼、しているからな」

「なら、そいつらを殺す!」

 そして、バンダドの蔦が二人を襲おうと向かっている。

「させると思うか?」

 俺はその蔦を神色盾で受け流す。

「俺がいる限り、二人には蔦一本、触れさせはしない!」

 神色盾を構え、横に逸れる。

「今だ!」

「「【竜巻風刃撃】!!」」

 カーナ達から竜巻のような風がバンダドに襲い掛かる。その風は、通過した蔦をボロボロに切り刻み、みじん切りしたキャベツのようになっていた。その攻撃を、

「ち!」

 バンダドは地面を持ち上げ、盾代わりにする。その地面の盾は大量に切り傷をつけ、土をえぐっていったが、全壊、とはいかなかった。

 くそ!

 あれでも届かないのか!?

 あの土の壁が無ければ…!無ければ?そうか、そうか!

「【六色装】!」

 俺は魔法を使い、

「おりゃああぁぁ!!」

 土の壁を思いっきり殴り、

「な!?」

 全壊させた。

「今だ!もう一度…!」

「甘いわ!」

 だが、俺にできた隙を、バンダドは見逃さなかった。バンダドは鋭利な蔦の先を俺めがけて発射させる。

「!!??」

 やばい!?このままじゃ…!

「はっ!」

 瞬間、誰かが俺に向かっていた蔦を弾く。

「お、お前は!?」

 最初にやられた女エルフ、タンカであった。どうやら隙を伺い、俺にピンチを救ってくれたらしい。感謝を言わなくてはならないだろうが、今は後だ。

「カーナ!エーガン!」

「「【竜巻風刃撃】!!」」

 再び、渦上の風がバンダドを襲う。

「ぐあああ!!!」

 バンダドの全身には数え切れないほどの切り傷ができ、血が流れ始めていた。

 …これで、終わったのか?俺は油断せず、神色盾を構える。今はタンカと共に防御態勢をとっている。

「ぐ、こんなもの、こんなものーーー!!!」

 バンダドは雄叫びを上げる。その雄叫びは、

「…ねぇ、やばくない?」

「…そうだな」

 ある種の危機を覚えるものであった。

「ぐおおお!!!」

 バンダドは自身の足2本を残し、腰から伸びていた蔦全てを引きちぎる。

「「「「!!!!????」」」」

 俺達はバンダドの行動に驚くも、すぐに態勢を整える。

「殺す!貴様だけは絶対に殺す!!!」

 俺を見ながら、

「殺すーーー!!!」

 雄叫びを上げ、俺達に接近してきた。

「あ、アヤト様…」

「あんなの、人じゃないよ…」

 カーナ、タンカも怯えていた。ま、あれは確かにホラーだな。血まみれの男?木?が叫びながら向かってくるんだもの。ストーカー以上に恐ろしいかもしれない。

「貴様のせいで!!貴様のせいでーーー!!!」

 それと、さっきから俺を非難しているような発言。

 ・・・。

 いい加減、俺も頭に来ているんだよ。さっきから人のせいにしやがって…。

「【緑色気】」

 瞬間、俺の目が緑色になり、口の中に鉄の味が広がる。

 ごめん、ルリ。俺はまた、大けがするかも。だが、出来るだけ最小限にするよ。そんなことを考えながら、

「!?ぐはっ!?」

 俺は無言でバンダドを地面にたたきつける。

「き、貴様――!!頭が高いぞ!貴様は我にひれ伏し、頭を差し出し、死ね!」

 そう言って、複数の蔦を巻き、拳の形にした蔦で俺を殴ろうとする。

「ふん!」

 俺はそれを殴って蹴散らす。

「お前こそ、覚悟しろよ?」

 俺はバンダドに近づき、距離を詰める。蔦が襲ってくるが、避けるか、躱している。

「何なんだ?何なんだお前は!?」

「どうでもいいだろ?」

 さて、

「だが、これだけ言っておくよ」

 軽く息を整え、

「俺の女に手ぇだしてんじゃねーよ!!!」

 俺は思いっきり体を、全身を使って、横になっているバンダドめがけて拳を繰り出す。その拳は全身の力、怒り、思いを込めて放つ。その拳は今まで以上の勢いを持ち、バンダドに直撃する。

 そして、その言葉は、

「「「!!!???」」」

 その場にいた女エルフ達にも伝わり、頬を赤くする。

 

…残念なことに、彩人の言う、“俺の女”に、カーナ達は含まれていないのだが。

 

その拳により、玉座の間の床はヒビだらけとなる。これで謁見しづらくなったことだろう。

「…ふぅ。これで少しは…、」

 瞬間、俺の視界がぐらつく。

「アヤト様!?」

 が、盾を持っている女エルフ、タンカが俺を支えてくれた。やはり、今の俺では【色気】を十分に扱えない、ということなのか。瞬間的に使うならまだしも、長期的に使うことは避けよう。

「タンカ。申し訳ありませんが、あのゴミの監視をお願いできますか?私は勝利宣言してきます」

「分かりました。アヤト様、一人で大丈夫ですか?」

「あ、ああ。もう大丈夫だ。ありがとう」

 俺はタンカの肩から手を放し、一人で地面に足をつける。…うん。問題はないみたいだな。これなら大丈夫っぽい。

「ほら。早く行くわよ」

「ああ」

 そして、城門まで俺達3人は行き、

「みなさん!戦いは無事、私達の勝ちです!男エルフ達は今すぐ降伏すれば、命までは奪いません。ですが、あくまで抵抗するのであれば、覚悟だけしてください」

 そんな声をはっきりと言った。エーガンは緑魔法でカーナの声を都市中に飛ばしていた。原理の詳細は分かりかねるが、緑魔法の応用、ということで納得しよう。

 そして、

「やったーーー!!!」

「アヤト様の大勝利よ!」

「「「アヤト様万歳!アヤト様万歳!アヤト様万歳!アヤト様…!」」」

 こんな歓声とともに、男エルフ共は降伏した。

 これで事実上、俺達は勝利した、ということになった。

「アヤトー!」

「大丈夫だったですかー?」

「・・・」

「ま、待ってくださーい!」

 あれは、クリム、リーフ、イブ、モミジ!

「ご主人様はご無事ですか!?」

「お兄ちゃんは元気~?ルリは元気で無事だよ~♪」

 どうやら、クロミルとルリも無事だったらしい。

 良かった。本当に良かった。女エルフ達もあの歓声を聞くに、無事なのだろうな。…あの歓声はすぐにでも辞めてほしいのだが。は、恥ずかしい。

「ふぅ~…」

 気を抜き、大きく息を吐き出した後、

「「「アヤト!!!???」」」

「ご主人様!?」

「お兄ちゃん!?」

 俺はいつの間にか、意識を手放していた。

次回予告

『3-3-1(第225話) 黒くなった彩人』

 王城での戦いを終え、彩人は看病を受ける。そして、男エルフ達の今後の境遇に、彩人は黒き感情を見せる。


 こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。

 感想、評価、ブックマーク等、よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ