3-2-34(第223話) シンペキへの乗り込み戦~その11~
場所は変わり、
「まったく。愚かな男がいるものだ。私には世界樹様の加護があるというのに」
緑の国の王城。そこには、
「ああ。俺は愚か、なんでな」
「アヤト様。分かっていると思いますが、」
「あんな奴の言うことに従うことなんてありません!」
「そうよ!あんな馬鹿の言っていることなんて無視よ無視!」
ああ。分かっているさ。俺にだってやることはあるんでな。
「…ふむ。その後ろで喚いている者は邪魔だな。手始めに…」
「!?気を付け…!」
俺が言い終える前に、盾を持っていた女エルフが吹っ飛ぶ。
なんだ?一体何が!?
「さて。まずは一人」
「「た、タンカ!!」」
あ、あいつ!一体何を…!?
「さぁ。次は私の餌食になりますか?」
俺、カーナ、エーガンはバンダドに睨みをきかす。俺は静かに盾を持っている女エルフ、タンカに白魔法をかけ、傷を癒す。
「ほお。やはり、白魔法まで扱えるという情報は本当だったようだな」
こいつ、部下の情報まで信じていないのか。それとも、自身の目で見ないと信用できないのか。
「…カーナ、エーガン。守備は俺に任せろ」
「「え?」」
「俺が代わりに努める」
俺は剣を構える。
「で、ですが…」
「それだと防げないんじゃ…?」
「大丈夫だ」
俺には、防御手段が複数あるからな。
「だから、お前達には攻撃を頼む」
「分かりました」
「ふん!無茶しないでよね!」
「ああ」
「それで、お話は済んだのかい?」
バンダドは挑発気味に話しかける。
「ああ。あいつの分まで俺が頑張るさ」
「そうか。無駄な努力をするなんて、なんて愚かなんだ」
と、呆れ気味に話しかける。
「それと、君みたいな死亡志願者には、出来るだけ早く死を与えないと、ね!」
と、バンダドは蔦を高速で俺に伸ばしていく。
だが、
「そんな攻撃は、効かん!」
【魔力障壁】で奴の蔦を防ぐ。
「ほぉ?やはり、それは使えるようですね」
「当たり前だ」
そして俺は後ろを向かずに、
「だから二人とも、攻撃は頼んだぞ」
言葉を二人に送る。
「「はい!!」」
こうして、俺、カーナ、エーガンとバンダドとの戦いが始まる。
「・・・!」
「・・・!?」
「エーガン!」
「分かっているわ!」
バンダドの蔦攻撃に、俺は【魔力障壁】で防ぐ。だが、やはり単体では何度も防ぐことは出来ないので、常に複数枚発動させ、奴の攻撃を防ぐ。
そして、俺がバンダドの攻撃を防いでいる隙に、カーナとエーガンの二人が攻撃をしていく。
「・・・!」
「…くそ!」
「「アヤト(様)!!??」」
「だ、大丈夫だ」
くそ!やはり【魔力障壁】と【結界】では上手く受け流せないな。やっぱり、
(あの時みたいな…)
と、俺は神色剣を少し見つめる。
「アヤト!」
「!?ち!」
襲い掛かってくるバンダドの攻撃に反応し、俺はすぐさま【魔力障壁】を張る。危ない、危ない。ちょっと余所見をしていたせいか。気を付けないと。
「ほらほら。余所見をしていると、死にますよ?」
「!?くそったれが!【結界】!」
俺は前方に【結界】を張り、バンダドの攻撃を防ぐ。
「「【空気の刃】!!」」
そして、二人が緑魔法、【空気の刃】を放つ。
だが、
「ふん!」
バンダドは自身の蔦を数本か犠牲にし、二人の魔法を防ぐ。そして、
「そんな攻撃では、永遠に勝てませんよ?」
すぐに蔦を再生させた。蔦に攻撃しても無意味、ということか。ほんと、植物みたいな特性を持ちやがって。
「ですが、あいつにも限界はあるはずです」
「そうね。それまでこうやって、」
と、エーガンは【空気の刃】でバンダドの蔦を数本切り落とす。
「切り落としてやればいいのよ!」
「…そうだな。それまではしっかり守ってやる」
確かに、エーガンの言う通りだ。相手の体力が、再生力が無くなるまでやりつづければいい。
だが、
(いつまでやり続ければいいんだ?)
相手の底知れない力に恐れを感じ、
(あれを使えれば…!)
ちょっとした期待を抱いていた。
「ほらほら~?そんな攻撃では私を討伐できると思っているのか?」
「くそったれが!」
「「はああ!!」」
今現在、こっちがやや、というより、かなり劣勢になっている。なぜかというと、
(どうやったら、奴に攻撃が通る!?)
カーナとエーガン、二人の攻撃がバンダドに直接届かないのだ。全部、バンダドの蔦で防がれてしまうのだ。その蔦もすぐに再生するし。俺は【結界】や【魔力障壁】等であいつの攻撃を防ぎことで精いっぱいだし。それに、
(あいつのあの余裕。むかつくな)
バンダドの方はまだ余力が残っている感じが見て取れる。人間らしい戦い方をせず、蔦に頼り切った戦いをしている。…人間らしい戦い方って、腕や足、武器を使った戦い方でいいよな?その場から動かず、蔦だけを器用に動かす戦い方、のことじゃないよな?
いずれにしろ、
「はああ!」
「これ、で!」
二人が頑張っているが、状況は芳しくない。
(打開策は何か…?)
俺は【結界】と【魔力障壁】を駆使して二人を守る。
「…さて。準備はこれでいいとしよう」
「?」
何だ?あいつ、急に何を…?
「!?アヤト様!」
「切り落とした蔦が…!」
「なぁ!?」
切り落としたはずの蔦が、動いている、だと!?何だそのキモイ悪い現象は!?トカゲの尻尾か!
「!?ち!【魔力障壁】!」
瞬間、切り落ちていた蔦が鋭利な棘の形を成し、カーナとエーガンを襲う。俺はすぐさま【魔力障壁】を張るが、
「「きゃああ!!」」
「!?カーナ!エーガン!」
間に合わず、何発かもらってしまったようだ。致命傷でなかったことが唯一の救いだったが、
(また、守れなかった!)
タンカを守れず、そして二人も!これじゃあ、
「お前は役に立っていないな?なぁ、愚か者?」
「!!?」
そうだ。また、俺は何も助けられなかった。
あの三人も、そして、ここにいる女エルフ三人も。
結局は守れず、傷つけられる。俺は何も出来ずに、ただただ…。
(くそ!くそ!くそ!)
何で!なんで俺はこんなにも無力なんだ!俺にもっと力が、守る力があれば…!
「…何ですか?もう潰れてしまいましたか。それでは、土に還っていただきましょう」
と、バンダドは言い、俺に向けて蔦を伸ばす。
「…嫌だ。こんなのは絶対に、」
こんな現実なんか、認めない!だから、
「守る!!!」
俺は剣を構え、
(これ以上、絶対に傷つけさせない!!)
決死の覚悟で守ろうとした。
すると、
「な!?」
「「え??」」
俺以外の全員が驚く。
「これ以上、好き勝手させねぇぞ!!」
「へ、変形する武器、だと!?」
俺の剣が盾に変形したのだから。
(よし!これならもしかしたら…)
俺は、剣が盾に変形して少し嬉しい。これようやく、
(みんなを守れる!)
「さぁ来いよ」
「…なんだと?」
俺は笑みを顔に張り、
「こっからはもう、誰も傷つけさせない!」
俺は神色剣改め、神色盾を構え、そう宣言する。
次回予告
『3-2-35(第224話) シンペキへの乗り込み戦~その12~』
神色剣が盾へと形状を変え、彩人は防御態勢をとる。そして、支援をしつつ、カーナとエーガンはとどめの一撃を放つ。
こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。
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