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色を司りし者  作者: 彩 豊
第二章 鮮緑と老緑混じり合うエルフ達
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3-2-30(第219話) シンペキへの乗り込み戦~その7~

 刻は少し遡り、

「さぁ~て。俺らも殺し合おうか?しいてはまず、」

 男は、

「そのふざけた面を見せてもらおうか!」

 大剣を大きく振り、女性が身に着けていた外套が飛ばされる。その姿は、

「・・・」

「ほう?その面は牛人族、といったところか」

「ええ。我が主のため、あなたを足止めするよう申し付かり、この場にいます」

「ふん。その主というのは誰だ?俺がお前の主になって…」

「それ以上ふざけた発言をしないでください。非常に迷惑です」

 と、その女性は男に嫌悪感丸出しで発言する。

「いいぜ。俺が力で捻じ伏せて、俺の女にしてやる!」

「そんなことは永遠に訪れませんので」

 こうして、クロミルと3闘士が一人、ガルド=ターキンとの闘いが始まる。


 ガルドは、

「おらおらおらぁ!!」

 大剣を振り回しながら、クロミルに接近しようと試みる。クロミルはそれを、

「・・・」

 冷静に躱していた。振りが大きいおかげか、躱すこと自体は非常に楽である。だが、

「おらぁ!!」

 ガルドの大剣が地面に叩き付けられた瞬間、半径数メートルのくぼみができる。クロミルはそれに巻き込まれないよう、さらに距離をとる。

(これほど、ですか)

 クロミルは、ガルドが作ったクレーターにそこまで驚いてはいなかった。むしろ冷静に観察し、

(これですと、紙一重で躱すのは少し危険かもしれませんね)

 分析していた。ガルドはそんなクロミルの思考を邪魔するかのように剣を振り回す。クロミルも紙一重、まではいかないが、奴の剣を冷静に躱していた。

「…おい。てめぇ、やる気があんのか?」

 ガルドは剣を地面に軽くさし、クロミルに会話をふっかける。

「…何故、そんなことを聞くのでしょうか?」

「そんなの決まっている!」

 そういうや否や、ガルドは地面にさしていた剣をクロミルに向け、

「さっきからずっと避けてばっかいるからだ!こんなの闘いじゃねぇ!臆病者のすることだ!」

 そんなガルドの発言に、

「そうですか」

 何も言い返さなかった。

 今、クロミルにとって重要なことは、彩人がこの国の国王を倒すまでの時間稼ぎだ。だから、馬鹿正直に闘う必要なんてない。そう考えたクロミルは、回避の一手をうち続けていたのだが、相手には不満のようだ。だが、

「でしたら、私に攻撃を当ててからそのようなことを言ってください」

 と、挑発まがいなことを発言する。

「は!いいぜ、その口もその体も俺のものにしてやる!」

 と言い、ガルドは再びクロミルに突っ込んでいく。

(もしかして、考え方はクリム様に似ているのでは…?)

 と、目の前にいる男と、若干脳筋気質な少女を同一にまとめようとしたが、

(いえ。クリム様はこういう下劣なことは申しませんね。となると、同一に考えることは失礼ですね)

 そんなことを考えつつ、ガルドの攻撃を躱していく。


「!??ちぃ!」

 ガルドはイラついていた。原因は目の前の牛人族である。

 目の前の牛人族は攻撃もせず、ただガルドの攻撃を躱しているだけであった。そんな行動にいら立ちを覚えたのか、

「ふん!そんなことでこの俺様に勝てると思っているのか!?この、ポンコツ!」

 ガルドは目の前の牛人族を動揺させるため、罵ることにした。その後、

「ブス!馬鹿!死ね!屑!」

 様々な罵倒を繰り返す。

 その言葉を、

「・・・」

 少女は何も返答しなかった。言われても気にしなかったからだ。怒りより憐れんでいたかもしれない。

(そんなことでしか人を中傷できないなんて、悲しい人です)

 と、人生を達観しているような、子供の反抗期を生暖かい目で見る親のような反応だった。

「…糞が!」

 ガルドは攻撃を辞め、自身に悪態をつくかのように捨て台詞を吐く。

「は~あ。こんな奴のご主人なんて、きっと大したことないんだろうな」

 そんなガルドのため息交じりの発言に、

「…取り消してください」

「あ?」

 クロミルは過敏に反応する。

「今の発言、取り消してください」

 その言葉に、ガルドは勝機を見出す。

「はん!てめぇみたいなやつの主だもんな!その主もさぞ滑稽なやつなんだろうよ!」

 その言葉に、

「取り消し、なさい」

 クロミルの感情に波が生まれる。

「そういえば、他にも女がいたな。お前をいただいた後にそいつらをいただくのもいいかもなぁ~?」

「!?」

「そういえば、一人だけ男がいたな。そいつ、は!」

 ガルドは言葉と同時に大剣を振り、大きな風を生み出す。その風はクロミルの頬を掠め、血を流出させた。

「この剣で殺してやるよ。そうすれば、お前も含めた全員俺の女だ」

 その笑みは女にとって生ごみ以下の価値も存在しなかった。

「でも、あの森災は殺しておくか。災いを招くだけ出しな~」

 と、薄気味悪い笑みを隠そうともしないガルド。

 そんなガルドの様子に。今までの発言に、

「…分かりました。でしたらこちらにも考えがあります」

 クロミルは静かに言葉を交わす。

(ほぉー?今の言葉が引き金になったわけか)

 ガルドは気づいていた。クロミルに感情の変化が訪れていることを。

 だが、気づいていないこともある。

「でしたら、あなたを倒す最大の手をお見せします」

 それは、彩人やイブ達に対する誹謗中傷、何より彩人、モミジに対する殺害宣言である。クロミルはモミジに対し、親近感を抱いていた。それは髪の色である。クロミルとモミジ以外の5人の髪の色は単色である。それに対し、当の2人は複数色。このことでクロミルは親近感を覚え、そのことでモミジとの仲も大いに深まる。その仲は、兄弟の盃を交わした義兄弟、と言ってもいいだろう。そんな大切な者達を言葉だけとはいえ、貶すだけ貶し、ついには殺害宣言。それが真実だろうと嘘だろうと、

「先ほどの発言。どう転ぼうと絶対に許しません」

 クロミルは自身の手に魔力を集中させる。

(ほぉ~?いったい何をするつもりだ?)

 ガルドはこの状況を楽しんでいた。おそらく、本気のクロミルと剣を交えることを楽しみにしているのだろう。

 だが、

「覚悟しなさい。あなたが私に勝つことなんて、微塵もないことを」

 クロミルは魔力で、

「顕現せよ。【疑似牛刀・牛若丸】!」

 剣の形に魔力を形成する。

次回予告

『3-2-31(第220話) シンペキへの乗り込み戦~その8~』

 クロミルは牛刀を顕現させ、剣と剣との闘いが始まる。クロミルにとって、剣を扱うことは、これが初めてではなく、ガルドと互角以上に渡り合う。


 こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。

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