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色を司りし者  作者: 彩 豊
第二章 鮮緑と老緑混じり合うエルフ達
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3-2-29(第218話) シンペキへの乗り込み戦~その6~

「ほぉ?森災であるあなたが戦うのですか?いやはや恐ろし…!?」

「うるさいです。さっさと黙って死んでください」

 さっきとは打って変わり、度胸が据わったようだ。彩人が見れば、「ど、どうしたんだお前!?」と、目玉が飛び出るほど驚くことだろう。

「も、モミジ、ちゃん…」

「リーフさん。それにみなさんも。今まで甘えていてごめんなさい。ちゃんと頑張りますからどうか…」

 瞬間、アルドから鋭い槍の追撃をもらいそうになる。不意打ちまがいのことをしてくるが、この戦いに正々堂々も卑怯も嘘も存在しない。

 だが、そんな不意打ちをモミジは、

「!?」

「…私がみなさんとお話ししている最中でしたのに、邪魔をしないでください」

 蔦を大量に生やし、槍の勢いを殺していた。そして、そのまま冷たい眼差しでアルドを見つめ、

「待っていてください、みなさん。必ず私が…」

「そういう気遣いは無用です。何故ならあなたは死ぬのですから!」

 そんな意気込みを持ちつつ、アルドは槍を携え、モミジに槍を向け、突進する。

「・・・」

 対するモミジは、何もしなかった。

 否、

「ふ。これでこの国に平和が…」

「訪れるとでも?」

「!!??」

 何もする必要がなかった。

 モミジは自身の体に空洞を作り、そこに槍が通るよう仕向けたのだ。そして、アルドに作った隙は、

「死ね」

 数日前のモミジはどうやらいないと断言していいだろう。それくらい変わったモミジは、アルドめがけて木の棘を体に突き刺す。

「がぁ!??」

 瞬間、アルドの胸から棘が出現する。誰がやったのかは…言わなくてもわかるだろう。

「そこで大人しくしていろ。さて、みなさんの治療をっと」

 モミジは地面に手を置き、

「【養分譲渡】。からの、【自然治癒】」

 イブ達の体に蔦が迫り、その蔦はイブ達の体に接触する。その後、その蔦から緑色の輝きを放ち、その蔦を通し、何かがイブ達の体内に入っていった。体内に入っていったものは、養分である。そして、その養分を基に、自然治癒力を上昇させているのだ。モミジは、彩人みたいな白魔法を使えないが、回復手段を持っていない、というわけではなかったのだ。

 こうして、イブ達の傷は少しずつ着実に治っていく。その速さは、見ていてすぐに気づくレベルである。

「ば、馬鹿な!?あれほどの傷を瞬く間に!?」

 イブ達も大きな傷を負っていた。その傷は、貫通はしておらず、槍の先が数センチ体内に入ったり、深くえぐれてしまったりと、地球で日常生活を送っている一般市民にはまず体感しないであろう傷である。そんな傷をみるみる治していくのだ。日本の医療技術もお手上げものだろう。

「…これで大丈夫かな?けがそのものは…治ったみたい。良かった~」

 さっきまで殺伐とした雰囲気とは真逆と言っていいくらい、ほんわかとした雰囲気をモミジは纏う。まるで、子供の安否を聞き、安堵する母親のよう。

「ありえん!?さっきまであんな屑が!あんな出来損ないがどうし…!?」

「それ以上の発言は許しません」

 モミジの活躍により、さっきまで倒れていた人とは瓜二つの双子かってくらいに回復したリーフのレイピアが、アルドの頬をかすめる。

「…ありがとう、モミジ。おかげで助かった」

「はい!おかげで自身の弱点も分かったことですし、後でまた特訓ですね!」

 いつの間にか回復し復活した二人もアルドの元へと近づく。

「…それで、こいつはどうする?」

「とりあえず、ボコること確定ですよね?」

 と、女ヤンキーさながらな発言をかましつつ、手首を鳴らし始める。

「ま、待ちなさい!今私を開放すれば、世界樹様からの裁きも軽くなることでしょう。ですから、これを早く解くのです!」

 今、アルドはどういう状況かというと、全身蔦まみれで足どころか、指一本、関節もろくに曲げられない状況となっており、かろうじて話ができる状態となっていた。傷をある程度回復した理由は、話をするためである。…きっと、苦しむさまを見て楽しむ、なんてことはないだろう。多分。

「その世界樹がこの方々に、私を救ってくれた方々に何をしたのか分かっているのですか?」

 モミジは抑揚も感情もなく、機械のような発言をする。それは今まで他の誰にも見せたことがない声質であった。

「そ、それは我々の命のために…」

「つまり、この方々を犠牲にしても構わない、ということですよね?」

「・・・」

 アルドはモミジの問いに答えない。否、答えることができない。下手に答えれば、絶命する危険性を感じていたのだ。

「…そうですか」

 モミジは冷静にアルドの処遇を考え、

「それで、みなさんはどうしますか?」

 さっきみたいな冷酷無慈悲とは裏腹に、にこやかにモミジはイブ達に話しかける。

「「「・・・」」」

 3人は少し話し合った後、

「「「スッキリするまで殴り続ける」」」

 まさかのクリム案である。

「…分かった。それで、あの…」

 そして、

「無茶、しないでね?」

 いつものモミジとなった。きっと、イブ達のことを心配しての発言だろう。

 一方で、

「…え?嘘、ですよね?この私を殴るとか。私今、何も出来ないんですよ!?」

 アルドは自身のこれからに恐怖し始めていた。それもそうだろう。これから無抵抗で複数の人からタコ殴りにされるのだ。これを喜ぶ人はほとんどいないだろう。

「そうやって無抵抗な人を保身のために生贄にしたんですよね?」

 モミジの言葉に、

「・・・」

 アルドは何も言い返せなかった。

 そして、

「それでは、殺りましょうか?」

「…ん」

「殺しては駄目ですよ?こいつらと同じになってしまいますから」

 3人のリンチタイムが始まった。

(みんなが無事で、本当に、本当に良かったです)

 その時を、モミジは涙を流しながら見ていた。3人の生命を守れたことに感謝しながら。

次回予告

『3-2-30(第219話) シンペキへの乗り込み戦~その7~』

 一方、クロミルも3闘士が一人、ガルドターキンとの闘いを始めていた。ガルドの苛立ちに、クロミルは一切気持ちを揺らさず落ち着いていたが、ガルドのある言葉で、感情の波が立ち始める。


 こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。

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