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色を司りし者  作者: 彩 豊
第二章 鮮緑と老緑混じり合うエルフ達
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3-2-27(第216話) シンペキへの乗り込み戦~その4~

 場所は王都シンペキの町の中。

 そこでは、

「い、いたぞ!早くあいつらを捕まえろ!」

「生け捕りだぞ!殺すのはダメだぞ!」

 男エルフ達が、

「そんな攻撃は通用しません!」

「それより、自分の身を心配したら?」

 女エルフ達が交戦していた。

「貴様ら!こっちが手加減しているとはいえ、俺達にケガさせるなんて…!」

「あなた達こそ、何様のつもりですか!?」

 男エルフ達は手加減しつつ、緑魔法で【空気の刃(エアカッター)】を用いり、相手をけん制する。それを女エルフ達は、彩人からもらった魔銀製の盾で受け流す。

「ちっ!その盾、どこで手に入れた!?」

「あなた方には関係ありません!お願い!」

「「うん!!」」

 女エルフ達は、男エルフの隙を見逃さず、

「し、しまっ…!?」

 緑魔法で風を起こし、男エルフを吹っ飛ばす。

「がっ!」

 男エルフは民家に衝突し、崩壊した家の中へと飲みこまれた。

「貴様ら!俺達の仲間を!同じエルフなのに…!」

 男エルフは、同胞が傷つき倒れたことに対し、憤慨するが、

「こちらこそ、絶対に許しません!」

「あなた方が私達にしてきたこと、忘れたとは言わせませんよ!」

 女エルフ達も男エルフ達に怒りを忘れた瞬間はあの時から存在していなかった。

 そして、

「うおおお!!!」

 男エルフ達はさっきより大人数で女エルフ達に向かう。

 それは、自身の保身と、一時の平穏のためである。

 今まで、女エルフ達を世界樹に貢いでいれば、男エルフ達は助かっていたのだから。だが、その平穏は壊れつつある。何せ、その貢物がこうして牙を向き、襲い掛かってきているのだから。

 最初、男エルフ達は舐めてかかっていた。それは、今までろくな生活をこなしていないから、戦い方も知らないだろう、という達観である。それも正解、だった。確かに、最初は凡人以下、という言葉が当てはまるほど、女エルフ達の戦い方はつたないものであった。だが、それをリーフという女エルフが、何年も冒険者として活動していた女エルフが直々に指導を施したのだ。日にちは少ないが、要点をしっかり押さえ、相手を甘く見ない、戦闘する者の目をしていた。

「てめぇらみたいな女はな!一生俺達の身の安全のために、その身を世界樹様に捧げればよかったんだよ!」

 その言葉に、

「!!!???」

ある女エルフは動揺を隠せずにいた。

 

実は、さきほどの発言をした男エルフと、動揺している女エルフは幼少期から知っている仲、所謂幼馴染、という関係だった。

 最初は、信じていた。こんなことをするとは信じたくなかった。

 だが、自身の体が世界樹によって弄ばれていくうちに、考えてしまった。

 何故、助けてくれないの?

 と。

 彩人に助けてもらった時も、その幼馴染のことを頭の片隅に置いていた。

 その女エルフは、

(きっと、今も私のために戦っているから、私の前に出てこられないんだ!)

 そう考え、彩人と生活を共にした。そんな生活を送っていくうちに、幼馴染への思いも消えていき、完全に彩人に対する思いが芽生えていた。だが、その女エルフは彩人のことを好きにはなれなかった。無意識に幼馴染のことが脳内に残っており、幼馴染に対する思いが完全に消えていないからである。だから、彩人と幼馴染、2人の間で揺れ動いていた。

 それが間違いだったと、先ほどの言葉で目が覚めた。

 あの時の幼馴染は、もういない。

 私を思い、行動してくれていたあの人は、死んだ。

 そう理解せざるを得ない発言だった。


「よ、よくも…!」

「へっ。事実を言った、までだよ。この、ブス」

「・・・」

 女エルフはもう、戦う気が起きなくなっていた。魔法の準備もせず、ただ虚無をみつめる。

「何、やっているの!?」

 突如襲い掛かるビンタ。

 それは、

「!?」

 隣にいた女エルフが静止している女エルフに対する制裁であった。

「これは何のための戦いか、分かっているの!?」

「でも…」

「これであいつらをアヤト様の元へ行かせたら、今までの苦労が水の泡よ!」

「アヤト、様…」

 ここで不意に、彩人との生活を思い出してく。


“お~い。そろそろ夕飯にするぞ~”

“ホットケーキには色んなジャムが合うんだ。まずはこの蜂蜜から試してみるといいぞ”

“あ~…。リーフのしごきはやばいよな。俺も何度か受けたからな。辛さは痛いほど分かるよ。今でも怖いし”

“あ、飲み物注いでくれてサンキューな”


 かつて、失言してしまった私達を暖かく迎えてくれた。

 そして、

“さぁ!少し休憩したらまた特訓の再開ですよ!”

“えぇ~?もっとやりましょうよ~?”

“…脳筋おバカ”

“あっはっはー。あいかわらずイブお姉ちゃんとクリムお姉ちゃんは仲良しだねー”

“こちらのタオルをどうぞ”

“え、えっと…”

 アヤト様だけでなく、他の方々も、優しく接してくれた。

 だから、

「…ごめん。もう大丈夫」

「そう?なら行くわよ!」

「うん!」

「はっ!貴様ら女に何が出来るって…!?」

 瞬間、男エルフの横を何かが通り過ぎる。その奥には、

「な、なんだこれ…?」

 円柱のような形の窪みができていた。まるで、弾丸のような窪みが。

「もう、迷いません。私自身のため、そして、みんなのために…、」

 二人の女エルフも同じ思いとなり、

「「「勝つ!!!」」」

 盾を持っていない女エルフ2人は男エルフにさっきした攻撃と同じ攻撃を、

「ぐはっ!?」

 肩に繰り出す。男エルフは思わず肩を抑え、数歩後ろに下がる。そしてその数歩歩いた時間、その隙をついて、

「はあああ!!」

 盾を持った女エルフは男エルフに近づいていき、

「しまっ!?」

 男エルフは、女エルフの接近に気づくも、時すでに遅し。

「ぐは!?」

 女エルフの拳が男エルフの顔にのめり込む。数メートル吹っ飛んだあと、その男エルフは意識を失う。

「て、てめぇ!」

「よくも俺達の…。おいおまえら、やっちまうぞ!」

「「「おお!!!」」」

 それを陰で見ていた男エルフ達も参戦することとなり、さっきとはうってかわって、圧倒的不利な状況と化した。

 だが、

「「「負けない!!!」」」

 武装している男エルフ達に一切臆せず、立ち向かおうとする。

 その意思はやがて、

「な、なんだ!?」

「おい!こっちからも…!」

「あ、あれは…!?」

 人という形をもって、

「そっちは大丈夫?」

「加勢にしに来たわよ!」

「「「みんな!?」」」

 町に残った女エルフ達総勢12名が集結し、陣形を組みなおす。前方に盾を持った女エルフ達。総勢4名。それに対し、後方で構える女エルフ達。総勢、8名。

 その者達は王城を背にし、決して、決して王城に近づけさせなかった。

「みんな、行くわよ!」

「「「はい!!!」」」

 12の意思は大きな1つの意思へと変わり、男エルフ達の攻撃を、進撃を防いでいく。

 女エルフ達の攻防は、彩人達次第で有利にも不利にもなるだろう。

次回予告

『3-2-28(第217話) シンペキへの乗り込み戦~その5~』

 少し離れた場所に、3闘士が一人、アルド=ラースンと、イブ、クリム、リーフ、モミジがいた。アルドの猛攻にイブ、クリム、リーフの3人は絶命の危機に瀕する。そんな時、今まで動けなかったモミジがついに動き出す。


 こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。

 感想、評価、ブックマーク等、よろしくお願いいたします。

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