3-2-23(第212話) 王都シンペキの門番
「さぁて。まずは王都への侵入か」
「うん」
「最初は、俺が行ってくるから、合図を出したら来てくれ」
「「「はい」」」
それじゃあ、ちょっと門番に会ってくるか。
王都シンペキの前。
当然ながら門番はいる。
「失礼しま~す」
俺はばれないようにゆっくり進む。
「おい。ここで何をしている」
ま、門周辺は何もないし、当然ばれるわな。別にいいけど。
「この王都に美味しい食べ物があると聞きまして、それを食しに遠方から来ました」
と、社長にゴマをする専務の様な態度をとりつつ、俺は隙を窺う。やり方は少し卑怯な気がしないでもないが、そこは気にしない。あながち嘘もついていないし。
「…ふむ。となると、【シラリア】を食いに来たのか?」
「シラリア?」
確か…カルボナーラうどん、のことだったな。確かにあれは美味かった。
「あれ?でもそれは他の街にもありますよね?」
「ああ。でも、この王都で食った方が一番美味いんだよ」
「もしかして、あの麺とソースがよく絡んで、ですか?」
「おお!?お前もいける口か!?」
「そうですね!俺も、です」
こういう時はうまく相手に乗っかることが大切だ。長いボッチ生活を経て、俺が知った方法の一つで、相手を調子づかせることで相手に隙を作らせるのだ。これも、長い間、ボッチでいたがために会得した会話術である。ま、実践は初めてだがな。何せ、いつも脳内シミュレートで予行練習していたからな。それの賜物と言えよう。…言えるよな?
「そうだよな!やっぱり…!?」
そう言った瞬間、門番の男は倒れた。
「…さすがはご主人様です。臨機応変に作戦を変え、自ら相手の注意を最大限引くことで、私達の不意打ちを促すとは」
「え?い、いや~…」
実は、クロミルのいきなりの不意打ちに俺も驚いている。作戦では、この後で俺がこの門番に一発かまし、気絶させてから乗り込むつもりだったのだが…。まさか、急に作戦を変えてくるとは思わなかったぞ。
「そうなの?さすがはお兄ちゃんだね」
「…アヤト、やる♪」
「さっすがです」
「うんうん」
「・・・」
いつの間にか俺の周りに集まってくる面々。…ここはどうしようか?とりあえず、
「さ、さぁ。次はいよいよ侵入するぞ。ばれるのも時間の問題だしな」
「「「はい」」」
ごまかしておいた。女エルフ達の内、何人かは俺を尊敬のまなざしで見ていた気もするが、そんな目を俺に向けないで欲しい。俺は単なるボッチで、たまたま上手く事が運んだだけなんだからな。
そんな言い訳を脳内でしつつ、俺は冷や汗をかきながら王都内に侵入する。
さぁ。もう後戻りはできないぞ。とはいっても、するつもりもないがな。
こうして俺達は、王都シンペキへと侵入を成功させた。
さぁ次は、国王がいる王城だな。
次回予告
『3-2-24(第213話)シンペキへの乗り込み戦~その1~』
彩人達はついに王都、シンペキに乗り込む。ついに、彩人達と男エルフ達との総力戦が始まろうとしている。その先陣を切ってくれたのは、女エルフ達であった。
こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。
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