3-2-17(第206話) 相手の戦力
そして、そんな日々を続けていくと、とあることを思い出す。
「…そういえば、緑の国に関する情報は?」
そう。相手の情報である。
このごろ、自分達のことばかりやっていたため、相手の研究を一切行っていなかったのだ。なんてアホなんだ、俺。
だが、
「あ、それなら私とすでにある程度共有済みですよ?」
「はい」
そんな返事がリーフとカーナから返って来た。まじか。またもボッチによる弊害が…。なんて思っていたが、今回はリーフ、カーナ、イブの3人だけで話し合っただけらしく、詳しい話はこれから、とのこと。よかった。俺がボッチだからハブられたとかじゃなくて、ほんとよかった。今回話しておきたいことは・・・、
・緑の国の王都の位置
・敵の数や戦力
・王都にある王宮?城?までの道のり
これぐらい、かな。
これらの情報をみんなで共有し、どんな計画で行くかはみんなで話し合うとしよう。
夜。
みんなで夕飯を食べていた。夕飯は猪のフルコースだ。女エルフ達が今回頑張ってくれたのだ。ルリやクリム達の食が進む中、俺達は話を始めた。
「今回、入る王都はこのようになっています」
と、カーナは懐から紙をとりだし、大きく広げる。
「これが王都の形、か」
「はい。門から最短で王城に行くには、この道を真っすぐ突っ切ることが最善策です」
「確かに。だがそれだと…」
「ええ。付近には多くの民家があります。私達女エルフの場合、見かけ次第、即拘束しろとのことでしたので、すぐに多くの男性が私達を狙い、襲い掛かってくるでしょう」
なんともまぁ、野蛮だこと。そうでもしないと、自分達の命の保証ができないってか?
「ですが大丈夫です。私達が盾となり、あなた様方を守ります」
と、盾を自慢げに見せてきた。ま、俺が渡した魔銀製の盾、なんですけど。
「そして、王城に着いてからなのですが、ここからが苦しくなります」
「そうなのか?」
「はい。なんでも王城には、【3闘士】がいます」
「3、銃士?」
「いえ、3闘士です。彼らは冒険者ランク黒、もしくは白に匹敵する強さです。生半可な者では目を合わせることすらできません」
何そいつら?目力強すぎね?
「それじゃあその…3闘士?をなんとかすれば大丈夫なのか?」
「いえ。最大の問題はあの国王です」
「?もしかして、国王も強いのか?」
「はい。何でも、世界樹から加護を与えられ、そのことで身体能力が向上しているのです」
「世界樹の加護、ねぇ…」
確か、フォレード達も言っていたような気がするな。強さも段違いに強くなっていたし。今考えると、俺ってかなり重要なことをサラリと聞き流していないか?今後はきちんと人の話を聞くようにしよう。
「ですので、一番厄介なのは、世界樹から加護を受けた国王、だと思っていてください」
「なる、ほど…」
俺はリーフ、カーナから聞いた話をまとめる。
優先事項は国王だな。王城にいるらしい、から…?そういえば、
「王城って当然、入り組んでいるよな?」
「?ええ。それがどうかなされましたか?」
「俺ら、王城で迷子になるかもしれないから、誰か道案内できるか?」
これってちょっと無茶ぶりだったか。なんせ、ここにいる女エルフ達は全員、一般市民と言ってもいいだろう。そんなやつらが王城の内部を詳細に知っているわけが…、
「それでしたら私が知っているので、私を含んだ第1グループが案内します」
「…え?知っているの?」
な~ぜ~?
「あれ?言っていませんでしたっけ?私はカーナ=シンペキ。元!緑の国の第2王女です」
え~?ってえーーー!!???
思わず2度驚いてしまった。確かに、他のエルフ達よりしっかりしているな~とか、落ち着いているな~とかは思っていたが、王女だからか。驚愕と同時に納得もしてしまった。
「ちなみに、エーガンも貴族、それも公爵ですよ?ほら、」
と、カーナはエーガンをこづいて、挨拶を促す。おい、ちょっと待って。情報量が大きすぎるのだが?
「改めて名乗ります。エーガン=トクサ。トクサ公爵の元!娘よ。…元々私、公爵だなんだの色眼鏡で見られたくないのよね」
と、エーガンも貴族なのだと知った。おまけで小言を言ったような気もするが、とても、とても共感できた。色眼鏡で見られたくない気持ちはよ~く分かる!俺もボッチというレッテルを張られ、それから友達が出来にくくなったからな!…これはどうでもよかったな。
「なら、お前らに案内をお願いしてもいいか?」
「「「はい!!!」」」
これで王城内は大丈夫だろう。次は、
「その3闘士についての情報を教えてくれないか?」
「それは…難しいです」
「何でだ?」
分からないなら分からないでいいのだが、その返事はどういう意味だ?
「…私が知っているのは数年前の3闘士です。今の3闘士はもしかしたら別もの、かもしれません」
「…なるほど」
少し考えてみれば簡単なことだ。こいつらは長い間、世界樹に捕まっていた。だから、最近のことなんか知るはずも手段もない。まったく。俺はなんて気の使えない男なんだ!
「…すまん。余計なことを言っちまった」
「いえ。アヤト様が謝る必要はありません。なので、気にしないでください」
「…そう言ってもらえただけでも助かるよ」
「はい」
…ほんと、異世界の女性って心強いよな。俺とは違って。
「それでは、3闘士のことですが、昔は…」
こうして話は進み、終わるころには、
「う~ん…。もう食べられないよ、お兄ちゃん…」
ルリは夢の中でもホットケーキを食べていた。
「それじゃあ、俺達もそろそろ寝るか」
「「「はい!!!」」」
「それじゃあみんな、お休み」
「「「お休みなさい!!!」」」
そう。今日の見張りは俺と、
「みんな寝たか」
「寝た、と思います」
モミジの2人である。
「…いよいよ、ですね」
「ん?ああ」
モミジの発言に返事を返す。
「…やはり、ちょっと不安です」
「?どういうことだ?」
「私なんかが、みなさんの役に立つかどうかが分からなくて…」
「別に、役に立つか立たないかなんて考える必要はないさ」
「え?」
「やれることを思う存分してくれたらいい。お前がどう思っていようが、俺達はお前に命を救われた。だから、俺も、ルリも、そしてみんなも感謝しているぞ」
「そんなこと、ないです。私は結局、アヤトさんを人として死なせてしまったわけですし…」
モミジの発言に、
「・・・え?」
俺はしっかり間をおいてから問いかける。
「俺って、人間じゃない、のか?」
俺が恐る恐る聞いてみると、
「…はい」
モミジはそう返した。
次回予告
『3-2-18(第207話) ボッチは人外へと変化する』
彩人は、モミジから人間じゃないことを知らされ、改めて落ち込んでしまう。だが、それでも命を救われたことに感謝し、彩人はモミジに感謝を伝える。
こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。
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