3-2-16(第205話) 女エルフ達の現強さ
後日。
俺は女エルフ達の計画について話を聞いた。それで、計画というのが、
「みんなで進み、生き残った誰かが国王を殺す!」
だそうだ。
・・・。
「え?ここで私を見る理由は何ですか?イブ?さっきから見せているその笑みは何!?」
みんながみんな、こう思っただろう。
“こいつら、クリムと同じ思考だ”
と。
作戦としてはどうかと思うが、考え方はそれほど間違っていないと思う。
みんなで協力して最大戦力を温存しつつ、男エルフ達を蹴散らし、最大戦力をもって国王を殺す。これを基盤として、今後の詳細な作戦を考えていきたいと思う。そう話したら、
「「「「「賛成!!!!!」」」」」
クリムと女エルフ達以外の5人は返事を返してくれた。
「なんで私を無視するんですか!?とても素敵ないい案でしょ!?」
そんなこと知らんがな。
俺達は話を密にする。
ここで、女エルフ達の強さについて聞いた。
一番強いのが、今も女エルフ代表で話をしているカーナ。次に強いのが、
「…な、なによ。私が強いことに何か問題があるって言うの!?」
「こら!またあなたはそうやって!ごめんなさいみなさん!」
…先日、モミジを貶してくれた女エルフ、エーガン。
この二人が女エルフ達のエース的な立ち位置らしい。カーナはともかく、こんなやつに頼るとか嫌だな。性格悪いくせに仕事は出来る上司に似ているな。
使える色魔法は全員、緑魔法だけだそうだ。そういえば、2種類以上の色魔法に適性があることは珍しいことなんだっけ?俺は全種類使えるから、時々忘れそうになるな。忘れずに覚えておこう。
武器は何を使えるのか聞いてみたら、
「「「与えられたら何でも使います!!!」」」
…なんか、自己PRをされた気分になった。使いたい武器とか、扱いに長けた武器とかないわけですね。となると、女エルフ達の主戦力は魔法、護身程度に武器を扱えるようになればいいのか。今後の課題として達成しなくてはならないものは見えたが、今はそんなことは後回しだ。とにかく今は、出来るだけ短時間で習得できる武器にしてもらおう。となると、一番習得しやすいのは、赤流剣術か。確か、力任せに武器をぶん回し、力を最大限に利用する剣術だったな。これを剣術でなく、遠心力がある槍とか、こん棒に変えることもありかも。そういえば、こいつらの力はどれほどなのだろうか。
「お前らって、力はどれくらいなの?」
そんなことを聞いてみたら、
「「「力には自信があります!!!」」」
なんでも、長いこと自然の中で生活していたため、自然と力がついていったんだとか。確かに、ひきこもりのボッチより、野生児の方が力は強そうだな。体を使う場面も多いだろうし、事実、そうなのだろう。
「なら、ルリと力試ししてみる?」
そんなルリの挑発に、
「いいわよ!やってやろうじゃない!」
と、エーガンはのってきてしまった。おい、ルリはああ見えてクロミル以上の力が…、
「それでは…はじめ!」
俺の制止しようとする意志を無視し、勝手に審判をやりはじめたカーナが合図をだす。力比べ競技、腕相撲の結果は、
「「「「「「あ」」」」」」
ルリ以外の6人は間が抜けたような声をだしてしまった。何せ、俺達はいくら予想していたとはいえ、あまりにも呆気なさ過ぎたからである。
さしずめ、ミジンコが像に対し、
“おいお前!俺様と貴様、どっちが重いか勝負だ!”
と言っているようなものだからな。
「「「・・・」」」
女エルフ達は呆気に取られていた。俺達とは異なり、本当に驚いているようだった。もしかして、見た目幼女に負けたことがそんなに驚くことなのか?…驚くことか。
「う~ん…。本気のお兄ちゃんの方が、まだ数百倍強かったかな~?」
止めと言わんばかりの発言に、エーガンは力なく気絶した。腕を抑えながら、涙を流していた。今回のことがよほどショックを受けたのだろう。上には上がいることの証明になっただろうか。だが、このままにしておくのは俺の良心が良しとしないので、腕の治療はしておいた。
「あ、ありがとう、ござい、ます…」
言葉は途切れ途切れだったが、感謝の言葉を言われたのでよかった。これで憎まれ口をたたかれたものなら、その腕を蹴っ飛ばしていたところだ。…ま、そんなことはもちろん致しませんが。…ほんとですよ?
さて、軽いデモンストレーション?ぽいことも済ませたことだし、情報を整理しよう。
女エルフ達は、魔法は使えるが、運動能力はそこそこで、得意な武器は無し。ゲームでいう所の典型的な後衛タイプだな。
次は俺達7人の分析だ。
俺、クリム、リーフ、ルリ、クロミルは前衛として起用できるだろう。
イブは後衛だな。
モミジは…どっちだ?なんとなく後衛な気もするが、近接系の武器を使えない、とは断言できないし。
「そういえば、モミジは戦闘に関して、何が出来るんだ?」
「わ、私ですか!?」
「?あ、ああ。俺達の力もある程度把握しておこうと思ってな」
「…私は主に、緑魔法で蔦を生やし、その蔦で攻撃したり、みんなの肩に手を置き、魔力を譲渡したり、木の枝を鋭くして飛ばしたりできます」
「…なるほど。分かった、ありがとう」
つまり、イブと同じ後衛タイプ、ということだろう。
…さて。ちょっと困ったな。
全22人のうち、5名が前衛で、17人が後衛か。バランス悪すぎだろ!ゲームなら、前衛の人が挑発して相手の攻撃を集中させる、という手も使えたが、ここは現実。挑発に乗らず、後衛のやつらに攻撃がいく可能性もある。それに、前衛だからといって、全員守りが堅いわけじゃない。接近して相手を攻撃するから前衛なのだ。となると、この22人でやるには、壁になる人が数人必要となる。そうすれば、勝率も生存率も高くなるだろう。相手が一撃必殺の魔法を使ってこない限りは、だが。ま、最悪の事態を考えるのは後回しだ。今は俺達の今後についてだけを考えるとしよう。
俺の意志、考えを伝えたところ、
「だったら、前に出る人を増やせばいいのでは!?」
と、クリムが発言。
分かってはいるのだが、
「…珍しく、いいことを言った」
「え?」
イブがクリムに対し、褒めた、だと!?
「…珍しいですね。あなた、もしかしてイブの偽物ですか?」
「…せっかく数少ない利点を突いたと思ったのに、所詮は…」
「ちょお!?それどういうことよ!?」
ここでイブとクリムがまたキャットファイトタイムに移行した。…おい。誰かイブの発言を詳しく説明してくれよ。意図が全く分からないのだが?
「…なるほど。そういうことですか」
「え?リーフお姉ちゃんは分かったの?ルリは何一つ分からないのに」
「さすがはリーフ様です」
「え、えっと…。お役に立てずすみません」
「…リーフ。説明を頼む」
俺も分からないので、ルリ達の発言を利用した。
「おそらく、イブはこう言いたかったんだと思います。まず武器は盾を中心に覚えさせ、相手の攻撃をひきつけるようにすること。そして、後衛の人が全力で魔法を撃てるよう、環境を整えるんです」
「…確かに。それはかなりいい案だ」
ゲームでも盾職の人を増やすことで、盾職の人だけがダメージを食らうようにすれば、盾職の人だけを治療すればいいし、悪くない案だ。だが、
「それだと盾職の人にかなりの負担がいかないか?」
俺達前衛の5人を除いたとしても、後衛は17人もいる。数人、盾職に移行させたとしても、守るべき人数は十人以上。これでは負担が、
「ええ。ですが、それを解消させる案はすでに実行されていたわけですよ。他でもない、アヤトによって」
「…え?お、俺が?」
思わず言い淀んでしまった。だが、急にそんなことを言われても憶えが…、
「先日やった狩りです」
「狩り?たしかに昨日言ったけど…」
それが一体何だというんだ?
「忘れたのですか?アヤトはその時、こう言いました。“数人に分かれて狩りをしてくれ”と」
「…言ったな」
確かに、食料も少なくなってきたことだし、ここで食料の確保を!と思っての発言だが、
「それがどうかしたのか?」
「その狩りによって、自分の役割は自ずと決まってきます。それからは簡単です。その能力を伸ばしていけば、」
「攻撃守備とバランスの良いグループになれる、ということか?」
「はい!ここまで考えたうえで発言していたなんて流石アヤトです。やるときはやりますよね」
「・・・」
どうしよう?俺の発言が過大評価されちょるのだが?とりあえず、
「お、おう」
ごまかしておくとしよう。
「ですから、今回の作戦も1グループ3人の構成で突入させよう、とイブは考えていたのだと思います」
「そ、そうだったのか」
全く分からなかった。というより、イブはそんな長々と言っていなかった気が…?・・・気にしないでおこう。これはおそらく…イブとリーフの以心伝心、ということだな、多分。
…あれ?そうなると、俺はどこに行くんだ?・・・。まさか、また俺独りですか?
「さ、というわけでみなさん。これから頑張っていきますよ!」
「「「はい!!!」」」
女エルフ達は士気をあげていたが、
(ほんと、本気でどうしよう?)
頭をかかえてしまう俺であった。
その後、女エルフ達は盾の扱い方を学び始めた。なんでも、多少ならリーフは知っているらしく、基礎を教えた後、実際に攻撃を受けてもらうらしい。俺は…見ているだけにしよう。狩りで体を動かしているとはいえ、治りかけている体にわざと負担をかけるなんてまねはしたくなからな。今は見ているだけでいいか。後で詳しく教わろう。こうやって、女エルフ達の盾の扱いが上手くなっていった。実際にクリムやイブの攻撃を受け流せるようになってきているし。本当に初心者か?と聞きたくなるくらいだ。残りの女エルフ達は魔法に全力を注いでいた。それというのも、攻撃の要になる魔法は必須、ということだからだ。盾で防いで隙をつくり、そこに魔法を当てる。ま、いい作戦だと思う。ゲーマーの俺からしてもいいと思うぞ。隙が無ければ隙を作ればいい。対人戦の時もその心得を忘れずにやってきたからな。…それなのに、現実では対人能力に関しては一切上がっていないわけだが。…。お、俺のことはいいや!
次にリーフ達だ。
リーフ、クリム、イブ達3人は、女エルフ達の盾持っている人に対して攻撃していたり、3人の連携を確認していたり、1対1で模擬戦を行っていたりしていた。ま、緑の国に喧嘩ふっかけるようなものだし、それぐらいの準備はして当然かな。後は武器や防具の点検もしていた。…俺、いつも使っているこの神色剣でさえ、まともに点検していないのだが?だけど、いざ、点検しようにも、どこを点検していいのか分からないんだよね。いつの間にか傷が消えているし、欠損している箇所も、おかしい箇所もない。この剣、怠け者の俺にピッタリな剣なんだよ。それにしても、リーフ達はあれだけ魔力を使っていても魔力不足による酔いとかないのかね。俺なんか魔力池で数回魔力補給をすると酔いがまわってきて嫌なんだよな。あれの克服方法ってないのか。今度調べてみよう。
次はルリ、クロミル、モミジ達3人だ。
こいつらは連携の確認、というより、個人技能の上達に時間をかけていた。特に、ルリとクロミルが模擬戦を行い、モミジはその戦いを見て2人にアドバイスする、という形になっている。2人の模擬戦を見る限り…俺はつくづく味方でよかったと思っている。あの2人を敵にしたらと思うと、ゾッとする。地球にいたころの俺なら、殺された回数は365回以上となっているに違いないな。ルリは相変わらず生身で身軽だな。軽快な動きでクロミルの攻撃を躱しているし、クロミルはルリの動きを読んだ上で攻撃をしているし。モミジはさしずめ、2人の戦いを見て戦い方を学んでいるのか?戦闘中、モミジは真剣な顔でずっと見ているし。
っと、俺もやることをやらなくてはな!こうして、数日間の稽古?修行?の日々は過ぎていった。
次回予告
『3-2-17(第206話) 相手の戦力』
国王を倒すために動き始めた彩人だったが、相手の情報を一切知らないことに今更のように気づく。そして、女エルフ達からその情報を聞き、頭の中に残していく。その夜、見張り当番である彩人とモミジ達2人は、ある話を始める。それは、彩人にとって大切で、重要な話だった。
こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。
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