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色を司りし者  作者: 彩 豊
第二章 鮮緑と老緑混じり合うエルフ達
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3-2-14(第203話) 女エルフ達の覚悟

 え?

 国王を倒す?

 こいつ、何言っているんだ?しかも、俺以外の全員はどうやら予め聞いていたのか、一切驚く表情を見せていない。もしかして、また俺だけ聞いていなかったパターンか?

「…それで、どういうことだ?」

 俺は自分自身に感じる疎外感を覚えながら聞く。

「はい。私達がああして世界樹に捕まった元凶は、アヤト様が倒してくれました」

「まあな」

 あれで倒れて欲しいが、今思えば死体でも確認すればよかったかなとちょっとだけ後悔している。あ、でもあの時、俺は赤魔法で世界樹の体を焼き尽くしたんだっけ?なら、死体を確認しようにも、もう手段は残っていないのか。

「ですが、もう一つの元凶は今も生きています」

「…なんだと?」

 それは初耳だ。俺は、リーフ達が攫われ、性を貪られた全ての元凶は世界樹だと思っていた。だが、ちょっと深く考えると、おかしい点は存在する。

 例えば、リーフ達は誰に運ばれたか、である。

 確か、モミジはこう言っていたな。

“はい。夜遅くに、男が女を担いで森の奥に行った、と言っています”

 と。

 女がさすのはイブ達のことだろうが、男がさすのは誰だ?最初は世界樹かと思ったが、それは違うだろう。世界樹の見た目は大きな樹、樹木だ。木と男を見間違えることは無いだろう。そして、この場にいる男、俺を除くと、考えられることは…、

「まさか、もう一つの元凶と言うのは…」

「ええ。あの国に住んでいる男性のエルフ。そして、それらを束ねている国王、バンダド=シンペキです」

 あいつら、影でリーフ達を誘拐しようと画策していたのか。そういえば最初、リーフ達を見た時の反応もおかしかったし、今思えば、あそこで不信感を抱くべきだった!くそ!何やっていたんだ、あの時の俺!

「大丈夫です。アヤトは何も悪くありません」

 この時、

「大丈夫です!それを言ったら、攫われた私達も悪くなってしまいますよ」

「…ん。だから、アヤト一人が悪くない」

「…悪い。もう大丈夫だ」

 俺はみんなに触れていた手をゆっくり放す。俺ってほんと弱いな。

「…続きを頼む」

「あ、はい。ですから、私達は命を懸け、あの国に乗り込み、元凶達を殺すつもりです」

 カーナの発言に、女エルフ達は全員頷いた。

「…ほんとに勝てると思っているのか?」

 俺はカーナ達に聞いてみる。ちなみに、男エルフ達がどれくらい強いのかなんて知りません。単に聞きたかっただけです。だが、こいつらを無駄死にさせたくはないかな。救った命なわけだし。

「…私達全員が生きていけるとは思っていません。上手く生き残っていて、一人でしょう」

「!!??」

 上手くやって一人、だと!?

 そんなの駄目だ!と、言いそうになったが、さっきのあの目を見てしまってはそんな迂闊な発言をしていいのかと戸惑ってしまう。

「…ほんとにそれでいいのか?」

「ええ。覚悟の上です」

 と、またしても全員を見てみる。全員、覚悟を決めていたようだった。

 ・・・。

「…そうか」

「はい!」

 俺はルリ達を見る。

「ルリはお兄ちゃんについて行くよ~♪あ、もう一枚食べていい?」

「私もご主人様についていきます。それとルリ様、なんでしたら私の分を半分食べますか?」

「わ~い♪ありがとう」

「わ、私も構いませんよ?」

「…ん。異論はない」

「この食いしん坊お化けと同意見なのが悔しいですけど、私も大丈夫です」

「私はもとより、カーナ達の意志を優先したいと思っています」

 全員、俺の考えを読んでの発言だった。というかルリ、あんだけ食べてまだ食うか?それなら俺も、

「…分かった」

「それでは…!」

「ああ。連れていくよ。そして、俺もやる」

「…え?」

 俺の発言が聞こえなかったのか?なら、もう一度言うか。

「聞こえなかったのか?俺もお前らと一緒に戦うと言っているんだ」

「え?ですが…?」

「戦う理由がないってか?」

「・・・」

 カーナは無言で首を縦に動かす。

「それなら大丈夫だ。今、俺の中で理由ができた」

「理由、というのは…?」

「ああ。それは…」

 こうしてお昼は過ぎていった。

 そして、話をし過ぎたのか、太陽はそろそろ見えなくなろうとしている。感覚的には夕方の4時、くらいだろうか。今から出発しても、すぐにまた馬車から降りるはめになりそうだし、ここ周辺で魔獣でも狩るか。俺がそう提案すると、

「「「はい!!!」」」

 みんなそろっていい返事を返し、そのまま狩りに向かった。前回と同じグループ編成なのか、俺はまたもボッチ!孤高の俺、超かっこいい!とか、全然思えない…。ま、俺はホットケーキでも焼いておこうかね。だいぶ在庫が減ってきているわけだし。

 ホットケーキはみんな大好きソウルフードとなっていた。日本人で言う白米、みたいな感じになっており、三食だしても文句を言う人は一切なく、喜んで口に運んでいる。そして、俺の料理力はホットケーキだけ群を抜いている。具体的には、見ずに作ることが出来るようになった。分量も目で見れば十分の一グラム単位で分かるようになってしまった。どれもこれも、何百、何千枚とホットケーキを焼いてきた経験の賜物だろう。体感でそろそろ1年経つと思うが、この1年でどれくらいホットケーキを焼いたのだろうか。もしかしたら、万を超えているかもしれない。前、ホットケーキの作り過ぎで腕が筋肉痛になったし。今では7人全員がホットケーキを作れるようになったし、俺の負担も単純計算で7分の1に減ったし。

 ホットケーキを焼いたら、次はホットケーキに乗せるジャムでもまた作ろうかな。リンゴや桃に似た果物があるし、それから作るジャムもまた美味いんだよな。そういえば、これらの果物ってリンゴや桃に似ているが、本当にリンゴや桃なのだろうか?この果物はバナナに似ているが、果物の名前なんて知らないし。今誰もいないからちょっと腕の検索機能で調べてみよう。…なるほど。基本的には、見た目と名前は一致しているのか。つまり、このバナナみたいな果物はバナナで、このキウイみたいな果物はキウイ、と…?あれ?この果物、前に買ってあったっけ?リンゴや桃は買った覚えはあるが、キウイは買った覚えが皆無なのだが?まぁいいや。ジャムを作る時間はこれからだとあまりなさそうだし、後日、作ることにしよう。後は…、

「うわぁ!?」

 いきなり俺の目の前に大量のホットケーキが出現しただと!?誰だ!?誰がこんなことを…って、

「俺しかいないよな」

 無意識に作っていたとはいえ、こんな高さになるまで作り続けていたのか。俺って凄い。

 俺は大半のホットケーキをしまい、今日の夕飯分のホットケーキを残しておく。

「こんなもんか」

 一応、50枚は残したが、これぐらいで足りるだろうか?普通なら足りるけど、ルリとイブがたくさん食うからな。女エルフ達は結構遠慮していたが、うちのメンバーは良く食うからな。一人二枚は確実だからな!俺を除いて。ちなみに、今回作ったホットケーキは普通のサイズである。

 そして、

「「「ただいま!!!」」」

「お?おかえり」

 みんなが帰ってきた。さて、夕飯の準備を続けようかな。

次回予告

『3-2-15(第204話) 即席大浴場』

 夕飯を食べ終え、彩人はお風呂の準備を始める。今回は旅の人数が20越えなので、かなり大きい浴場を即席で作る。そして、みんなはその日の疲れを癒そうと、浴場へと足を運ばせていく。


 こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。

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