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色を司りし者  作者: 彩 豊
第二章 鮮緑と老緑混じり合うエルフ達
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3-2-8(第197話) 女エルフ達からの謝罪

 翌朝。

 俺がまず思ったことは、

「体、超いてぇ…」

 体の痛みである。

 そういえば、全治一か月の大けがをしたにも関わらず、ルリのあの圧を直に受け、それでも無理やり体を動かしたからな。あー痛い。魔力の方は…うん。かなり戻っているな。これなら俺の全部のけが、治せるかね。早速試すか。

「治らねぇ…」

 結果、全快、とはいかなかった。だが、昨日のダメージはもちろん、全治一か月の大けがも多少治った。おかげで魔力は残り少なくなってしまったが、まぁ良しとしよう。


 それにしても、

「昨日は言い過ぎちまった、かなぁ…」

 昨夜のことを考えていた。

 まぁ、俺としてはあの世界樹同様、あの女エルフどもも同じ屑だと思っているが、よくよく考えてみると、あいつらも世界樹の被害者、つまりはイブ達と同じ立場なんだよな。だから、同情の余地はあるし、リーフと同じエルフだから、救おうかとも考えていた訳だが、

「あの発言がなぁ…」

 気が動転していたのかもしれない。

 女の子の日だったから、正常に物事が判断出来なくなっていたのかもしれない。

 理由は多々あるかもしれない。そのことに対し、俺達は過敏に受け取り、あんな行動に移したのかもしれない。だけど、あんな発言をされて、平然と受け流す事が出来るほど、俺もルリも大人ではない、ということだ。もちろん、我慢という意味では、俺はまだまだ子供だろう。地球で言えばまだ高校生。社会のしぐらいしか知らないわけだし。…ま、俺はボッチだったわけだから、ネット社会をある程度知っていただけなのだが。それに、ボッチとは違い、仲間を貶されて黙っているほど、人がいいわけでもないし。こう考えると、俺もまだまだ子供だなと実感できる。

 とはいえ、

「早く卒業したいなぁ…」

 自分自身、まだ子供なため、俺の子供なんてもってのほかだろうが、行為じたいはとても、とても興味がある!毎日したいとは思っているが、ここは思春期の男の子。下心を悟られないよう、別のことを考えるので精いっぱいである。それにしても、未だに手を出していない俺って紳士だよな?自分で自分を褒めたくなる。けど、ちょっと辛いな。あ~あ。早く…あれ?何、考えていたっけ?

 ・・・。

 ま、いいか。

「とりあえず、起きるか」

 こうして俺は、眠い体を起こす。ちょっと体が痛むが、昨日に比べれば、蟻に噛まれた程度だ。なんぼのもんじゃい!って感じだ。早く明日になんねぇかな~。…ちょっと、朝のテンションがおかしいな。気を落ち着けて行こう。

 そして、俺はテントを出た。出たのだが、

「・・・何、しているの、です?」

 つい敬語で声をかけてしまった。だがこれはしょうがないことだろう。だって、

「先日の謝罪の意を示すため、こうしてお待ちしておりました」

 全員、土下座して俺のテントの前にスタンばっていたのだから。


 一瞬、地面が緑に見えた。あ、ちなみに女エルフ達の髪の色が緑だからそう見えただけであって、決して、この女エルフ達の雑草魂がそう錯覚を起こした、とか一切考えてないから。だが実際、そう感じざるをえなかった。あまりの出来事に、俺も驚き過ぎてしまったわけだから。

「先日の件に関しては、私達の全てをもって謝罪いたします。ですから、この謝罪をうけていただけないでしょうか!?」

 ・・・。

 どうすれば、いいのだろうか?このままこいつらの頭を踏むのは間違っている気もするが、何もさせずに頭を上げさせるのも間違っているような…?

 そうこう悩んでいるうちに、

「あ、おにい、何しているの?」

「ごしゅじ…」

「アヤトさ…」

 ルリ、クロミル、モミジの3人が起きてきたらしい。だが、この惨状を見て、固まっているようだ。俺も同じ状況だったら固まるだろうけどさ、それにしてもルリ。俺に変な視線を送るのは辞めていただきたい。

「俺も今起きたから分からん」

 とりあえず言い訳しておいた。ま、事実を言っているわけだし、間違ったことも言っていないわけだし。…あれ?そういえば、起きてからどれくらい時間が経過したんだ?確か起きた後、しばらく考え事していたわけだから…。ま、いいか。

「…あや、と?」

「おはよ、う?」

「何かあった、みたいですね」

 続いて、イブ、クリム、リーフも起きてくる。そして、何故か俺を冷たい目で見てくる。理由はおそらく…こいつら、だろうな。当然といえば当然かもしれない。昨晩、暴言を吐いた人達が一晩経つと土下座して出迎えているのだから。ま、俺になんですけど。

「俺も分からん。ただ、」

 俺は女エルフ達を見てから、

「何か話し合ったのは、間違いないと思うぞ?」

 この一言でイブ、クリム、リーフの3人は首を縦に振る。

 さて、いつまでもこんな空気にするのはなんかいつまでもいつまでも嫌だし、

「さ、朝食にするか」

 この俺の一言で、

「「「「「「はい」」」」」」

 女エルフ達に送っていた視線を外し、昨日使ったテーブル近くに集合する。

「「「・・・」」」

 女エルフ達は終始、無言だった。


 朝食のひと時。それは今日という一日を過ごすうえでとても重要になってくる時間、といっても過言ではないほど大切で、大事な時間である。それは科学的にも証明されていたと記憶にあるし、俺も賛成だ。だが、今日は無理だった。その朝食の時間を大切にとることができず、リーフが作ってくれた味噌汁の味がする緑色のスープも、水の味しか感じ取ることが出来なかった。非常に不愉快である。理由は、

「「「・・・」」」

「「「「「「・・・」」」」」」

 女エルフ達の土下座である。俺達の食事時間、ずっと頭を下げ続けていた。無論、動かずに、である。もうね。完敗ですよ。なんでそこまで長い間、頭を下げ続けることが出来るのやら。

「…あー。今日のリーフのこれ、美味いな」

「…え?あ、はい。実はこの付近に美味しくて栄養満点な草が生えていたので、それも加えたんですよ。どうですか?」

「うん。美味しいよ、リーフお姉ちゃん」

「大変美味です」

「…うまうま」

「ですが…」

 このクリムの一言で、また空気が重くなる。これはクリムを責めているわけではない。だから、クリムの言いたいことも分かる。けど、今の俺ではどうすることも出来ないんだよな。決めるのは多分、

「それにしてもアヤト、けがの方は大丈夫なのですか?」

「え?あ、ああ、大丈夫だ。戦闘さえしなければ、日常生活に支障はないぞ」

「あの大けがを一晩でそこまで回復させるなんて…」

 ま、確かにすごいことだな。

 全治一か月のところを一晩で治したようなものだからな。ま、まだ軽傷はまだ残っているが、体を動かすことが出来ないほど、というわけでもないし。そう考えてみると、俺って凄いのか?いや、魔法が凄い、という方が正しいだろう。

 俺自身、凄くないという自覚はある。何せ、生きてきて十数年。友達のとの字も見せなかった俺が凄い、なんてことはないだろうからな。いや、負の観点から考えてみれば凄いのか?…この思考は自分を苦しめるだけだから辞めておこう。

「後、あの方々をどうします?」

「ああ、あれね」

「どうします?とりあえず殴ります?」

「…はぁ。これだから脳筋は…」

「イーーーブーーー?もう、今日という今日は許さないんだから!」

「…ふ。望むところ」

 あ~あ。あの二人はまたやっているよ。リーフも止めに入っているとはいえ、期待はしない方がよさそうだな。ここは、

「それで、あの馬鹿どもをどうするの?」

「ご主人様がどのような判断を下そうとも、私は一生ついて行きます」

「これは…モミジ次第、だろうな」

「え!?わ、私ですか!?」

 モミジはこれまで以上にアタフタしていた。情緒不安定ではなかろうかと心配になってくる。近くに病院があったなら、精神科に連れていきたいくらいだ。

「そうだ。お前があの発言を許せるのか。それとも許せないのかを決めるんだ。それで問題ないな?」

 一応、ルリとクロミルに聞いてみる。昨日、あんなに怒っていたからな。本当はリーフにも聞きたかったが、イブとクリムのキャットファイトを止めるのに尽力していて、こっちには見向きもしない。ま、これもいつも通りと思って諦めるか。

「うん。ルリはお兄ちゃんの意見でいいよ」

「私も同意見です」

「…だとよ。それでどうする?」

「え?えっと…」

 ここでモミジは悩み始める。

 俺としては、こいつらを置いて行っても構わないと思っている。どちらにしろ、あの町に行きたくないし。だが、何もせずに逃げるような真似はしたくない。だから、

「私、決めました!」

「お、おおぅ…」

 急に大声をあげたモミジに驚いてしまった。しょうがないじゃないか。自分、ボッチだもの。…ま、下らないことを考えるのはこれぐらいにして、と。

「それで、どっちにするんだ?」

 俺としてはどっちでもいいけどな。許すにしろ、許さないにしろ、やることは大して変わらない気がする。多分だけど。

「私は、許そうと思います」

「…分かった。ルリ、クロミルもそれでいいな?」

 理由を聞いてみたいところだが、そこまで話す義理はないだろうなと思い、何も聞かなかった。

「…ま、モミジお姉ちゃんがそれでいいならいいんだけどさ」

「私も一向にかまいません」

 よかった。二人とも賛同してくれたみたいだ。

 さて、

「…というわけだ。だから、お前らの事を心優しいモミジは許してくれるから、後は自由にしてくれ」

 俺は今も土下座をし続けている女エルフ共に話をする。

 また、どう罰を下してやろうかとも考えていたのだが、

「私のことを考えてくれてありがとう。だけど、みんなが私のことを想っているって分かったから、それだけで十分です」

 と、聖母みたいなことを言われてしまった。思わず抱きしめたくなるの優しさだった。あんな劣悪な環境下でこんな優しさを濃縮した原液みたいな人格を育むことが出来たのだろうか。俺みたいな屑に育ってほしくないな。

「あ、ありがとうございます…」

 泣きながら感謝される俺達。俺よりモミジに言って欲しいのだが。

「…話はまとまった?」

「えっへん!全ては私の思った通りです!」

「クリムはずっと、イブと痴話喧嘩していただけでしょう?」

「…最後はリーフも混ざっていたけど」

「う!そ、それは、二人が私の胸を…」

 胸を、なんですか?その話、詳しく聞かせて頂きたいですぞ!

 …ま、今はそんなことより、

「イブ様!クリム様!リーフ様!昨晩は本当に!本当に申し訳ありませんでした!!」

「「「申し訳ありませんでした!!!」」」

 次は3人に向けて土下座をかまし、謝罪の言葉を述べていた。

「モミジちゃんは何と?」

 ここでリーフは、俺に視線を送る。おそらく、さっきの問いの答えを聞いているのだろうか?

「許すってさ。それはもう、海より深い優しさだったよ」

「え!あ、あの!そんなんじゃなくて私…!」

 と、顔を赤くしながらアタフタする。それをルリが慰める。まったく、微笑ましい光景だこと。

「なら、私から言うことはありません。今後、気を付けてくれれば結構です」

「…リーフが言うなら」

「ですね」

 その三人の発言に、

「あ、ありがとう、ございます」

「私達には勿体なきお言葉です…」

 女エルフ達は涙を流し始めた。

次回予告

『3-2-9(第198話) 女エルフ達と俺達』

 謝罪をした女エルフ達は、モミジが許したことにより、盛大に感謝する。そしてその日は1日中、同じ場所に居続け、話をしていた。一方、会話に参加していない彩人はこれまでの感謝の意を示すため、モミジ達にある物を贈ろうとしていた。


 こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか?

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