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色を司りし者  作者: 彩 豊
第3色 緑の国 第一章 赤と緑が混在するフォレード
188/546

3-1-30(第188話) 同じ境遇の者達

「お兄ちゃん達、大丈夫かな…」

 彩人を兄と慕う者、ルリは心配していた。

 今までも数多くの修羅場を乗り越えてきたとはいえ、ほとんど大けがをして戻ってくるのだ。それを何度も見てきたルリとしては心配に値するだろう。それでも、“大丈夫!お兄ちゃんだもの!必ず帰ってくるよね!”と、自分にそう言い聞かせ、今も休んでいるクロミル、そしてイブ達の近くにいた。

「それにしても、なんでリーフお姉ちゃん達は服を着ていないの?」

 もしかして、暑くて脱いじゃったとか?

 そういえば、お風呂に入るときはみんな服を脱いでいるよね?てことは、ここに来るまでに一回、お風呂に入ったのかな?とはいえ、この布一枚じゃ寒そうだし…、

「そうだ!お兄ちゃんにもらったこれで…!」

 私はアイテムブレスレットから毛布を3枚取り出し、それぞれイブお姉ちゃん、クリムお姉ちゃん、リーフお姉ちゃんにかぶせようとする。

「…あれ?」

 股のところに、血?がついている。何の血だろう?見たところ、どこも怪我していないのに。ま、いいか。私は股についている血をぬぐってから毛布をかぶせる。これで寒くなくなったかな?

 するとここで、

「…ん」

「あれ?ここは?」

「私達、助かった?」

「お姉ちゃん!」

 良かった!みんな、目を覚ましてくれたんだね!本当に良かった♪

 だけど同時に、

「大丈夫?」

 三人が心配。どこも怪我していなかったとはいえ、服が無くなる何かがあったのだから。

「…駄目、かもしれない」

「そうですね。まだちょっと…」

「もうちょっとだけ、待ってくれますか?」

 私は3人の態度の変わりように、

「え?あ、うん…」

 素直に頷くことしか出来なかった。

 だって、今も全身が小さく揺れ動き、目が常に動いていた。多分、このお姉ちゃんに何かしたのだろう。だからここまで、お姉ちゃん達の様子がおかしくなっているんだ。

 私はそう考え、クロミルお姉ちゃんの頭を撫でながら、リーフお姉ちゃん達が落ち着くまで待った。


 三人が落ち着いてきたので、私はリーフお姉ちゃんから話を聞いた。

 それは、

「やっぱり、お兄ちゃんは世界樹と闘っているんだね」

 私が心配していた通りになった。

 三人に何かした世界樹に怒り、お兄ちゃんは世界樹を殺すつもりで戦っているのだろう。そして、何をされたのか具体的に聞いたけど、

「女性として、一番大切なものを奪われてしまいました…」

 と、涙を流しながら小さくか細い声で語った。イブお姉ちゃん、クリムお姉ちゃんも頷いたけど、私には、一番大切なものがなんなのか分からない。なので、「その一番大切なものって何?」って聞いてみたけど、

「アヤトにあげる予定だった初めて、です」

 と、答えてくれた。

 ・・・?

 結局何なのかは分からなかったけど、あの世界樹がお姉ちゃん達から大切な物を奪った、ということが分かったからいいか。そんな話を聞いて世界樹に嫌な気持ちがどんどん溜まっていくなか、

「…そういえば、周りが静かすぎませんか?」

 リーフお姉ちゃんが私達に言う。確かに、お兄ちゃんと世界樹が闘っているわりには、音があまり、というかほとんど聞こえてこない。それほど離れているわけでもないと思うし。

「もしかして、闘いが終わった、のでしょうか?」

「…決着がついた、ということ?」

「ええ」

「!?アヤトさんが心配です!今すぐ…!」

「危ない!」

 急に立ち上がって倒れそうになっているクリムお姉ちゃんを、私は助ける。

「もう!少しは安静にしないと駄目だよ!さっきまで気を失っていたんだから」

「ごめん。それとありがとうね、ルリちゃん?」

「分かってくれればいいよ~」

 だけど正直、お兄ちゃんのことが心配だ。モミジお姉ちゃんが代わりに行ってくれたけど、あれから返事が一切ないし。もしかして何かあったんじゃ…?

「…なら、みな様で行ってみては、いかがでしょう?」

「そうしたいけどクロミルお姉ちゃん、が?」

「私なら大丈夫です。ルリ様のおかげでだいぶ、楽になりましたから」

「だけど、」

 クロミルの体ボロボロだよ?見ているこっちは心配で心配で…。そんな私の気持ちを察してなのか、クロミルお姉ちゃんは私に微笑みかけ、

「本当に大丈夫です」

 そう言った後、クロミルお姉ちゃんは自身に白魔法をかける。

「これでもう傷は消えました。さぁ、ご主人様のところへ行きましょう!なんなら私がみな様を支えますから!」

 とクロミルお姉ちゃんはリーフお姉ちゃん達の近くに言ったけど、「別にそんなことしなくていいですよ!?」とか、「…クロミルも自分の体を大事にする」とか、「いっそのこと、みんなで体を支え合いながら歩きませんか?」等を言う。最後は5人一緒になっておぼつかない足をゆっくり、ゆっくりと歩いていく。

(お兄ちゃん。どうか無事でいて…!)

 私はみんなを支えながら、お兄ちゃんの無事を心から願った。


 そして、5人が見た光景は、

「何、あれ…?」

 植物に囲まれている彩人と、必死になっているモミジ。そして、横になっている多くのエルフ達がいた。


「え?何がどうなって…?」

 リーフを中心にクリム、イブもうろたえ始める。心ここにあらず、という言葉がしっくりくるだろう。

「ルリちゃん!何がどうなって…!?」

 てんぱり過ぎて、ただ近くにいて何も知らないルリに聞いてしまうほどである。もちろん、ルリも初めてこの状況を見て驚いているのだが、

「大丈夫だよ。モミジお姉ちゃんを信じよう」

 ルリはモミジの真剣な目を見、全てを悟ったかのように言った。その発言に、

「…そうですね。ここはルリ様の言う通り、大人しくしていましょう。モミジ様の邪魔にならないようにしなくてはですね」

 クロミルもモミジを信じ、待つことにした。

 二人の落ちつき具合に、

(((そう、ね)))

 三人は落ち着きを取り戻し、エルフ達の容態を確認しつつ、アヤト達の様子を確認した。

 二人の無事を願い、祈りながら。


「…出来るだけの事はやったつもりだけど、それでも駄目だったの?」

 私、モミジは困っていた。

 私は出来る限りのことをし、さっき目を覚ましたアヤトさんが、また意識を失ってしまった。これ以上はもう…。

 いや!まだ何か出来るはず!

 体はさっき、【強制寄生】により、私が寄生し、ある程度体の修復はした。けど、それはあくまである程度なんだ。もっとしっかり、隅々まで修復をすればいいのでは?

 私はそう考え、またアヤトさんに【寄生】する。前の【強制寄生】により、アヤトさんの体の一部を植物に変えたおかげで【寄生】しやすくなったな。今回はそこを見直してから、全体の修復をしよう。

 私はアヤトさんの体の奥底まで潜り込み、傷ついた体を丁寧に、着実に修復させていった。


 ・・・。

 こんなもの、でしょうか?

 体外部の傷はある程度残っていますが、体内部の、生死に関わる重要な器官は治したと思います。ですがそれでも、

「・・・」

 アヤトさんは、目覚めません。

 どうしたら、どうしたらいいの!?

 何か!何か私に出来ることは…!

「「「「「危ない!!!!!」」」」」

 そんな声が聞こえる直前、私は強烈な眩暈に襲われ、体の自由がとれなくなってしまう。

 そんな私の体を支えてくれたのは、

「み、みなさん!?」

 いつの間に!?

 まったく気づきませんでした。

「お疲れさま。後はゆっくり休みましょうか?」

「で、でも…!」

「そうです!やれるだけのことをやってくれたみたいですし、後は時を待つだけです!」

「…ん。クリムに同意」

「でも!それじゃあ…!」

「大丈夫だよ。お兄ちゃんは必ず、起きてくるから」

「一緒にご主人様を待ちましょう」

「み、みなさん…」

 私、こんな優しい人達に囲まれて、幸せ者です。

「あ、ありがとうございます…」

 消え行くような声で言った後、私はゆっくりと目を閉じた。


 そして、

「あの…」

「ん?」

 誰かがリーフ達に話しかける。

 それは、

「もしかしなくとも、あなた様達が私達を助けて下さったのですよね?」

 女エルフ達である。

「あなたは、リーフ=パールさん、ですよね?」

「?そうですが?」

 いきなり話を振られたことにより、リーフは戸惑いを隠せない。だが、今までの記憶に思い当たる顔があった。

「もしかして…?」

「はい。私は…」

 こうして、リーフ達は女エルフ達と話を始める。

 時には同じ被害者として。時には助け助けられた関係として。

次回予告

『3-1-31(第189話) 再会を果たす7人』

 悪夢にうなされ始めた彩人だったが、赤と緑が混ざったような色の者に助けられ、目を覚ます。そこには、モミジ含めたみんながいた。


 こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか?

 感想、評価、ブックマーク等、よろしくお願いいたします。

 

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