3-1-26(第184話) VS世界樹~その2~
ここで、狭まっていた視界が少し広がる。
【色気】、だと?
【色装】ではないのか?
「ふっはっは!聞いて驚け見て驚け!貴様ごときに、この我が数百年磨き上げたこの技で、貴様を葬ってやろう!」
と、何故か自慢げだった。
なんだ?
何かが引っかかっている?一体何が?
「ぐっ!」
「ほれほれ~。よそ見をしている暇はないぞ~?」
俺の思考が横道にそれた瞬間、俺の腹を蔦で貫通させてくる。俺はとっさにその蔦を切り刻み、白魔法で腹を回復させるが、
(くそ!何余計なことに思考をまわしていやがる!しっかりしろ!)
腹に違和感が残っているままだった。無理もないだろう。腹を貫通されて、平然としている人間はいないはずだから。
「ふっ【色気】は【色装】より格段に身体能力が向上するのだ!貴様の【色装】ごときが相手になると思うな!」
と、世界樹は再び蔦を伸ばし、俺に襲い掛かってくる。
(さっきと同じように切り刻むだけだ)
俺は神色剣を構え、蔦を切り刻もうとする。だが、
「なぁ!?」
神色剣は蔦に弾かれ、勢いで俺の体が後退してしまう。
そしてそのまま、
「がっ」
蔦で足を貫通されてしまう。何とか、方向転換出来たものの、結局くらってしまった。
(くそ!もしかして本当に…。いや、もしかしたら、俺の【六色装】が切れていたのかもしれない)
そう自分に言い聞かせる。そして、
「【六色装】!」
再び【六色装】を発動させる。
「ふっ。また【色装】か。いいぞ、我の【色気】とお主の【色装】、どっちが強いか勝負だ!」
そう言って、奴は、
「【樹海】!」
魔法を発動させる。
俺も、
「【蒼炎】!」
蒼い炎を剣に纏わせ、地面から出てくる樹を徹底的に切り刻み始める。
だが、俺はこの時気づかなかった。
別の魔法を使えば、勝機があったということに。それほど視界が狭まり、相手を抹消することに固執していることに。
(なんで、なんで!??)
俺が徹底的に切り刻もうとしても、奴の蔦は完全には切り刻むことができなかった。おそらくこれは、やつが言っていた【色気】と【色装】との違い、なのだろう。
そしてとうとう、
「ぐは!?」
奴の攻撃を捌ききれず、【樹海】の攻撃が俺の身に直撃する。
一度直撃してしまうと、どうしても隙ができてしまう。その隙を狙われ、何度も何度も、俺の身に【樹海】で発生した樹が俺に襲い掛かる。
「あっ…。う…」
俺の体に突き刺さった樹が、俺の動きを封じ、心を壊していく。
反撃できる気力も、方法もなかった。
ただ一つ分かったことは、
(こんなやつに、イブ達を傷ものにしたこいつなんかに負けるのか…)
負けることに対する恐怖だった。
俺がどんなに攻撃しても、その攻撃は通じず、奴の攻撃は一発一発が重い。
これがいわゆる、【色気】と【色装】の違いだというのか?
「ふん!これで貴様も、我の強さが理解できたか?」
俺は世界樹の発言に、
「あ…。い…」
何も、言えなかった。今も血を流し続け、話せる状態ではなかったのだ。それを見越してか、奴は話を続ける。
「…なんだ?貴様も壊れてしまったのか?」
と、俺を蔑み、そのまま奥に行こうとする。
「ま…。て…」
俺は必死に引き止めようとするが、体が、唇が動かない。
「ふむ。我をここまで追い詰めた褒美として、面白いものを見せてやろう」
と、世界樹はどや顔で俺に言ってくる。
俺にはなんのことだか分からない。いや、そのことを理解するより、こいつを倒したい気持ちと、こいつに勝てなかった悔しさで、頭がおかしくなりそうだった。
「ほら、こいつらは、我が今まで遊んでいた者達だ」
瞬間、奥の木が何本か抜け、全裸の女性達の姿が見えだす。その姿は、リーフに似ていた。
(もしかして、エルフ、なのか?)
俺はおかしくなっていく頭で女性達のことを見ていく。
蔦で身動きがとれなくなっており、服は当然着ておらず、服の残骸が地面に薄汚く残っている。何人かは、目がおかしくなっており、地面が何か所か膨らんでいる場所もある。
そんな光景を見て、
(こんなに女性がいるのに、イブ達はその中の三人だった、ということなのか?)
狭まっていた視界で、思考を開始していく。
なんで、俺はこんな血まみれでいるんだ?
世界樹を抹消するためだ。
そんな世界樹は今、何をしている?
イブ達とは別の、他の女性を弄んでいる。
イブ達はどうなった?
こいつに弄ばれたが、今はモミジが救い、何とか助かった。
あれを見て、助けたと言えるのか?
…言えないな。事後だもの。
なら、そんな状態にさせた世界樹をどうする?
抹消する!それだけだ!!
でも、今はこんなにボロボロだし、【六色装】が通用しないんだぞ?
だったら、俺も使うだけだ!
こうして、俺の意識は覚醒する。
富士の樹海みたいな迷路にいた俺が、ようやく辿り着いた答え。
不安だろうが何だろうがボロボロだろうが、そんなの、関係ない!
俺は!
ズバン!!
「な、なんだ!」
他の女性を弄んでいた世界樹は変な音に驚き、音がした方向を向く。
なんせそこには、
「な!?なぜ貴様が立っている!?」
俺が、死にかけていた俺が世界樹の前に立っていたのだから。
「俺もやってやるよ」
俺はボロボロな体を強制的に行使し、
「【緑色気】」
俺の目が緑色に変化した。
次回予告
『3-1-27(第185話) VS世界樹~その3~』
ついに【色気】を発動させた彩人。だがそれは、自身の命を大きく削る諸刃の刃でもあった。その刃が世界樹に、そして彩人自身にも襲い掛かる。!
こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか?
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