1-1-14(第18話) グランの過去
ある日、今日も今日とて眩しい日差しがさす中、フードをかぶった褐色の青年と紫色の少女が草原を歩いていた。
「今日も日差しが眩しいね、お兄ちゃん♪」
「言うな、妹よ。余計につらくなる」
ペルセウスことグランと、その妹のアイである。この二人は今、人間国側の街に行くために、草原を抜けようとしていた。
「ねぇ大丈夫お兄ちゃん?水いる?」
「大丈夫だ、妹よ。それよりお前の方が辛そうだ。ほら、兄ちゃんの水やるから頑張れ」
実はこの二人、互いにシスコンブラコンと言えるほど仲がいいのだ。魔国では兄弟結婚を噂されるほどである。
二人は街に入ったあと、食事をしに店に入った。ここでもブラコンシスコンが発動し、周りからの痛い視線を送られても一向に気にしないのである。周りからは、「死ね!」とか、「どっか行けよ!」とか視線を通していわれても気にせず、付き合いたてのカップルのように食事を楽しんでいた。
そんな幸せタイムも終わり、二人はそれぞれ買いたいものがあるため、一時間程、別行動することになったのだ。
「それじゃ、私は食料を買うから」
「うむ。俺はギルドで素材を売って金をもらってくるよ」
「さすがお兄ちゃん♪わかってるぅ」
「そっちこそわかっているじゃないか妹よ」
「「それじゃ、一時間後に」」
そう言って、二人は別れた。これが最後の挨拶になるとも知らずに。
一時間後、グランはきっかり待合場所にきたが、アイは来ていなかった。
「何をしているんだ、妹よ」
少し不満なグランだったが、それでも十分、ニ十分、三十分と待ったが、一向に表れなかった。
「何かあったのか妹よ?」
そういいながらグランは妹を探し始めた。商店街、宿、ギルド。思い当たる場所全て探したのだが、どこにもいなかった。
「あとは路地裏か。待っていろ、妹よ」
そういって、グランは路地裏に向かって駆け出した。
いくら路地裏を探しても見つからないことに、グランは焦り、次第に走るスピードも上がっていく。
「どこだ!?我が妹よ?」
そう言いながら、グランはある死体を見つけた。その死体は頭が無く、体が白い液体まみれで臭かった。
「んん!?なんだ?この匂いは?まったく人間もろく…な……」
グランは驚いていた。その死体はよく知っている人物によく似ていたから。そしてグランはある考えに至ってしまう。
「もしかしてアイは…いやいやいやそんなことはない!そんなことより早く探さないと」
グランは焦っていた。本来、真名を公共の場で言うことはタブーとされているのだが、それに気付かないほど、アイの安否を気にしていたからだ。
その場を後にしようと足を動かしたとき、何か蹴ったような感覚を感じた。
「ん?なんでこんなところにぼ…―…る…」
グランが驚くのも無理はない。グランが蹴ったのはアイの頭だったからだ。
「あ、アイ!!??う、嘘だろ!!?な、なんで!?」
グランはわからなかった。いや、わかりたくなかったのだ。妹が誰かに犯され、殺されたことに。
「なぁ、アイ。目を覚ましてくれよ。俺は…俺は…うわああああああああ!!!」
グランは泣いた。路地裏に住んでいたものが顔を覗かせていたのだが、そんなことは気にしなかった。とにかく泣いた。
次にグランは妹だったものを精一杯抱いた。全身が臭くなろうと汚れようと構わなかった。最後に妹にお別れを言うためだ。グランは妹だったものをアイテムボックスに入れた。
そして、グランは次にやるべきことを考えた。
「妹をこんなにしたのは誰だ?」
「何故妹がこんなひどい目にあうんだ?」
「誰がこんなことをしたんだ?」
「ここにいる人間だ!」
「だったらどうする?」
「殺す!」
「誰がやったかなんてもうどうでもいい」
「人間は皆殺しだ!」
そう考えると、グランは人間に偽造するために、魔道具を使い、見た目を人間に変えた。
武器屋に行き、ありったけの武器を購入した。
妹の形見のアイテムボックスにはいっている食料を確認した。
準備は整った。
「うおおおおおおお!!!」
こうして殺人鬼ペルセウスは誕生した。
その日、その街は大パニックを起こした。一日で死人が四桁を超えたのだ。たった一人の手によって。
それからペルセウスは殺人犯となった。妹殺しの犯人を見つけるためでなく、人間を根絶やしにするために。
その後、ある青年によって止められるのだが、前の話を参照してほしい。
今回、話が長くなってしまいました。すみません。
次回は彩人視点へと戻ります。
間違いがあったら、ご指摘の方、よろしくお願いします。




