3-1-16(第174話) ロウカンでの自由行動 ~彩人編~
最近、PV数が伸びてきていて驚いています。
このまま伸び続けて欲しいと思っています。
ここは、俺が気になっていた店である。本が大量に本棚に入っており、なんと、飲食出来るスペースまで設けてあった。
「いらっしゃいませ」
店員に促され、案内された場所はとあるテーブル。そこにはメニュー表が置いてあった。
「それじゃあ…これを」
とりあえず、メニューを読んでも、どんな味でどんな食べ物なのかまったく分からないため、上から2番目と4番目の品を頼んだ。理由は特にない。値段もほとんどおなじだったからね。
「かしこまりました。それでは少々…」
「あ、あの!」
「はい?」
「ここにある本、全部読んでもいいのですか?」
「ええ。うちはそれが売りですので」
と言って、奥に行った。
…あの人、きっと結婚しているな。あの落ち着いた雰囲気、仕草、歩き方。間違いない!
…どうでもいいことはさておき、
「どの本を読もうかねぇ~?」
本が大量にあるので、どれを読もうか迷うな。
魔法に関する書物、歴史に関する書物、食べ物に関する書物…。どれも読んでおきたいとは思うが、全部を読み切るには時間が足りなさすぎる。本選びは慎重に行わないとな。
…お♪これなんかよさそうだな。え~っと…?
『魔法の研究』と、『不幸な戦争の歴史』か。
地球にあったら、うさんくせぇ~、の一言でスルーしていただろうな。
俺は本を2冊、本棚から抜き取り、読み始めた。
まずは、『魔法の研究』という題名の本だ。
読んでいくと、書き出しは以下のようなことが書かれていた。
魔法とは、自分が想像しているものを具現化させる現象のことである。だが、その魔法という現象を行使するには、魔力を媒介にする必要があり、魔力の性質について知る必要がある。まずはそのことについて記すとしよう。
その後、魔力について、図を用いられながら説明されている、と思う。なんせ、急に専門用語?みたいな言葉がたくさん出てきて訳が分からなくなった。なので、かなりすっ飛ばして読んだ。魔力運用機関とか、魔導製造機とか、ほんと意味わかんない…。
次に気になったのは、色魔法の種類である。
基本的なのは、赤魔法、青魔法、緑魔法、黄魔法、白魔法、黒魔法の6つである。だが、この本には、色魔法を組み合わせると、違った性質をもつ新たな色魔法が誕生する、と書かれていた。つまり、俺がよく使っている紫魔法みたいな魔法のことだろうと納得した。他の組み合わせはないものかと読み漁ってみたが、参考になりそうなことは何も書いていなかった。
「お待たせいたしました。こちら、『シラリア』となります」
「あ、ああ。どうも」
店員さんが持ってきたものは、白い…何これ?
全体的に白いな。それ以外は謎である。この料理のことをシラリア?とか言っていたな。
…これは食べてみないと分からないな。俺は本を端にどかし、お椀と置いてあるスプーンを自分の方に寄せる。改めてよく見ると、白いなかに赤い何かがあるな。なんなのか、本当に分からないけど。分からないものを食べる時ってこんなにも勇気がいるものなんだなぁ。あの時のモミジの気持ちがよく分かるよ。俺は軽く息を整え、スプーンを白い何かに入れる。
感触は固いわけではないな。この白いのは、もしかして液体?スプーンを引き上げると、その白い液体も一緒に上がり、ゆっくりと垂れていく。水みたいにサラサラしているわけじゃないのか。もう一回スプーンを入れ、液体をすくい、一口すすってみる。
味は…あれ?この味、どこかで食べたことがあるぞ?このクリーミーで濃厚、それに加えてこの色。こんなドロドロはしていなかったけど、あれだ。
牛乳だ。
でも待てよ?牛乳はこんなにドロドロしていなかったはず。となると、牛乳を使った何か、ということか?
・・・。
駄目だ。考えていても分からん。ともかく、次はこの赤いのを食べてみよう。
お。噛み応えがあって、味もある。これは、肉?生、というわけでもなさそうだし、焼いてある、ということか?それにしてもこれ、何の肉だ?豚に近いような…?
さて、いよいよこいつの正体を暴いてやるか。
俺はスプーンを思いっきり液体の中に入れ、すくい上げる。
そしたら、
「…あれ?」
一瞬、とても見慣れていたものが見えた、気がした。すぐに液体の中に落ちちゃったからな。それにしても、
「やっぱりあれ、だよな?」
もう一回すくいあげ、さっき落ちたものの正体を目撃する。それは、
「…う、うどんだ」
うどんだった。
香川県民が良く食べる麺、で認識は合っているよな。そんな讃岐だがたぬきがつく食べ物がこんなところでお目にかかれるなんて…。
それにしても、こんなカフェみたいなところでうどんを食べるとは思わなかったな。
…うどんを見てさらに思い出したことがある。俺はこの白い液体の正体が、ある料理に似ていることを思い出した。俺は確認のために一口すする。
「…やっぱり。これは、カルボナーラだ」
カルボナーラ。
確か、パスタ料理の一種、だったか。それにしても、まさかここで、しかもうどんと混ぜて出してくるとは。さしずめ、カルボナーラうどん、というところか。
美味いな。本はもっと遠ざけて、カルボナーラがかからないようにしておこう。それにしても、
「麺料理にスプーンか」
た、食べづらい。五回すくってようやく麺一本食べられる、というくらい食べづらい。俺はスプーンをもう一本持ち、箸を扱うかのようにし、うどんを食べ始める。
「違和感はぬぐえないが、これぐらいでいいか」
スプーンを間違った使い方で使っているが、これは仕方のないことだろう。最初はやはり食べづらかったが、何度か使っていくうちに慣れ、箸と同じように使えるくらいには食べられるようになった。
シチリア、もといカルボナーラうどんを食べ終えた頃に、
「こちらは『ミリンガ』でございます。注文は以上で間違いないですか?」
「ミ…?あ、はい、大丈夫です」
「では、この丼ぶりを下げさせてもらいます。引き続きごゆっくりどうぞ。」
と、店員の男性は一礼した後、また奥に行った。
さて。次はこの…みりん、が?だっけ?それをいただこうか。見た目で言うなら、
「完全にクッキー、だよな?」
クッキーにそっくりだった。茶色くて、長方形で、持った感じの質感も、地球で食べた時のクッキーと瓜二つ、である。クッキーは全部長方形、と決まっているわけではないけど、俺はやっぱり長方形かな。クッキーに対する細かいこだわりはともかく、味を確かめてみよう。
「…うん。味もクッキーだな」
この味にこの触感、そしてこのサクサク感。やっぱりクッキーだ。
俺は地球にいた時のいい思い出を思い出しながら、ゆっくりとクッキーを食べ始めた。
クッキーを数枚残し、俺は2冊目の本を読むことにした。
ちなみに、手は俺の青魔法できちんと水洗いし、赤魔法で水滴を飛ばしたから大丈夫である。
2冊目は戦争に関する書物である。地球にいた時は、日本の戦争なんてどうでもよかったのだが、それは少しでも学んでいたからそう言えるのだと、俺は思っている。何も知らなければ、良いも悪いも言えないからね。その点、俺はこの世界の戦争については無知である。だから少しでも学ぼうと思い、この本をチョイスした。
こうして、俺はこの世界の戦争、そして歴史について、手を伸ばし始める。
昔。
それはもう何十、何百、何千、何万、それ以上前の昔の時。
この世界に七人の人が、王の器を持っていた七人がそれぞれ国をつくった。
ある人は、血気盛んなコロシアムを創り、戦いに熱い国をつくる。
ある人は、水資源を大量に確保し、その近くに国をつくる。
ある人は、自然と共に生活しようと、森の一部を切り拓いて国をつくる。
ある人は、物を作って商売するために、大きな土地を見つけ、そこに国をつくる。
ある人は、神を信じる者は救われる、という教えを広め、国をつくる。
ある人は、鉱山資源を求め、鉱山の近くに国をつくる。
ある人は、最初、国をつくらず、六人のつくった国を放浪していた。その数年後、七人目は国という名だけの小さな家のような国をつくった。
そして、七人には、それぞれ色魔法に適性があった。
コロシアムを創った人は赤魔法。
水資源を確保した人は青魔法。
自然と共に生活しようとした人は緑魔法。
商売をしようとした人は黄魔法。
教えを広めた人は白魔法。
鉱山近くに国をつくった人は黒魔法。
そして、とても小さな国をつくった人は…魔法。
それぞれが異なる色魔法に適性をもっていた。
その七人はそれぞれのやりかたで、国を大きくし、豊かにし始めた。
時は経過し、六人のつくった国は順調に大きくなり、豊かになり始めた。
だが、ある国、七人目の人がつくった小さな国だけが大きくならず、豊かとは程遠い生活を送っていた。
そんな時、他の国を治めていた国王達は、
(あそこの国をおとせば、我が国はもっと豊かになれる!)
そう考え始めるようになった。
だが、決して行動を起こさなかった。
暗黙の規則で縛られているかのように、互いが互いの様子を窺っている状況だった。
そんな様子を知ってか知らずか、七人目の人がつくった国は安泰だった。
かと、思われていた。
その小さな国は、どこかの国の者達に強襲されたのだ。
おかげで、家族同然に育っていた極少数の国民がさらに少なくなり、残りは、両手を使えば数えられるほどの数にまで減っていた。誰が強襲したのか。そして、誰が強襲を指示したのか。そんなことはどうでもよかった。
ただ、大切な国民を、家族を殺されて平然としている訳が無かった。
その小さな国に住んでいた人達は一丸となって、周りの国、かつての六人がつくった国に赴き、破壊と殲滅の限りを尽くした。
“私達の家族をよくも!!絶対に許さねぇ!!!”
そんな覚悟を持って。
当然、他の国の人達もその怒り狂った人達をなだめようと必死に語りかけた。
だが、
「家族を殺されて黙っていろよ?」
目をぎらつかせながら、吐き捨てるように言った。
そう。
この破壊の限りを尽くそうとしている人には、誰が殺したかなんてもうどうでもよかった。ただ、間欠泉のように溢れ出てくる怒りを周りにぶつけているに過ぎないのだ。
そう感じた周りの国民達は、力を合わせて、力ずくで抑え込もうとした。
「私達で貴様らを消してくれる!!!」
だが、家族を奪われた者の力は凄まじく、各国に甚大な被害をもたらすこととなった。
死人は千をたやすく超え、壊された建物の数、そして被害総額は計算し始めたところで頭を悩まされ、人材の不足がさらなる悪循環を発生させ、元通りの状態に戻すのに数百年かかったと言われている。
結局、誰があの国を、あの小さな国を強襲したのかは分からずじまいであった。そして、そのまま国同士の関係は悪化し、国同士での交流はほとんどなくなり、国をまたいで旅をする人達もいなくなった。
こうして、六国間との関係は悪化したまま、第七の国、…の国を誰が強襲したのか分からずに、この戦いは終わりを迎えた。
その戦いの終わりに、周りの国の人々は三者三様の反応を示した。
ある人は喜び、ある人はこの戦いで亡くなった大事な人のことを想って泣き、ある人は元凶にひどい憎しみを抱いていた。
結局、この戦いで幸せになった者はいなかった。喜んでいた人もいたが、破壊されつくされていた町の様子を見れば、喜びが一瞬で絶望へと変わってしまったのだ。
そんな不幸な戦争がもう起きぬよう、心から願っている。
・・・。
ふむ。
読んでいて思ったことがある。
なんかこの本、汚くね?
古本だからしょうがないと思っていたのだが、このシミは何!?コーヒーみたいなシミ付けやがって!おかげで読み取れないじゃないか!迂闊に魔法で洗浄すると、そのページを破きそうで出来ないし、かといってそのままじゃ読めないし…。
俺のとった選択は、
「すいませーん」
「…はい、何でしょう?」
店員さんに直接聞くことにした。
「あの。ここに書いてあった文字はなんですか?」
と、シミで読めない箇所を指差しながら聞く。
「ここですか?う~ん…。すみません。読めません」
「そ、そうですか」
一瞬、
(なんて使えない店員なんだ!)
と、クレームを入れそうになったが、こんなクレームを入れても無駄、ということは分かっていたので、心の内にとどめておいた。
それにしても、まさか国は6つじゃなくて、7つあったとは。その7つ目の国はおそらく…。
「あ」
いかん。もうクッキーを全部食べてしまった。
それに、長いこと居座っていたわけだし、もう会計を済ませて店を出るか。
俺は本を戻した後、会計を済ませ、店を後にした。
その後はちょっとフラフラしたり、ブラブラしたり、プラプラしたりして、宿に向かった。
次回予告
『3-1-17(第175話) ロウカンでの自由行動 ~ルリ、クロミル、モミジ編~』
彩人達と別れたルリ、クロミル、モミジの3人は一緒に行動する。クロミルは必要な道具を買いに行くが、ルリは違った。仲間になった記念に、モミジに何かをプレゼントする気でいた。そして、プレゼントする物は…。
こんな感じでどうでしょうか?
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来週もお楽しみください。




