3-1-12(第170話) 再びのフォレード~その2~
今週も投稿しようと思います。
そして、話をしてみた。
何故、こいつが森災と認定されたのか。
何故、俺も森災と認定されたのか。
他にも聞いたような気がするが、忘れた。
ま、この2つが重要だと思うから、これらだけ聞ければ充分だろう。
そして、その2つを、俺は笑顔で聞いた。それはもう、爽やかな笑顔だったと自負している。それなのに、
「お兄ちゃん?ほんとはものすごく怒っているんじゃないの?」
とか、
「ご主人様。お気を確かに」
とか、
「あんな顔のアヤト、珍しいですね」
「ちょっと恐怖を覚えるのですが…」
「…あの顔は悪巧みしている時の顔、みたい」
とか、ボロクソに言われた。
あのドライヤドはというと、
「あの、えと、あの…あぅ」
オロオロしていた。
六者六様の態度であった。まったく、俺の顔はそこまでひどかったのかね。後で聞いてみるとしよう。今はフォレード達の話だ。
俺は終始、笑顔で聞き続けた。じゃないと、俺の過去の記憶と重なって、思わずぶん殴りそうになりそうだし。
フォレード達も、終始体を震わせながら答えてくれた。
「そ、その顔はもうやめて下さい!ちゃんと!ちゃんと話しますから!」
なんて言われてしまったが。そんなに顔、ひどかったのか?
だが、フォレードが怯えていようと構わずに、俺は話を聞いた。
結果、以下の事が判明した。
・フォレードはみな、緑魔法しか適性が無い
・だが、突如それ以外の色魔法に適性を持つフォレードが誕生した
・それは、フォレード達の弱点でもある火を扱う色魔法、赤魔法だった
・そのフォレードをどうすべきか主に聞いたところ、何も反応が無かった
・扱いに困り、同胞にも思えないそのフォレードを、私達は独断で森災と認定した
・だが、世界樹から何も言われないので、同胞を殺すのはさすがに気が引けた
・なので、苛立ちを発散させる物として扱うようにしていた
以上、こんなことを聞いた気がする。
気がする、というのは、途中から聞いていて、耳がおかしくなったと思ったからだ。俺は表情に出ないよう、常に体のとある箇所を強くつねっていた。
そして、今聞いていたことが全部本当であることが分かった。
・・・。
他人事だとしても、決して気持ちいいものではないな。しかも、地球とは違って魔法がある分、たちが悪い。
確かに、フォレード達の視点から考えてみれば、辛いことだったのかもしれない。森を護る者が、森を焼くような行為をされたくないのは分かる。自分達が今まで護ってきたのがいつ壊されるのかヒヤヒヤしていたかもしれない。怯えていたかもしれない。
だからといって、一番の被害者をさらに追い込むようなまねをしてもいいと思っているのか?お前らにとっては異物と認識しているかもしれないが、ボッチの俺からすれば、一番の被害者は、お前らが異物だと認識しているドライヤド本人なんだぞ?
…そうか。
このドライヤドに覚えのない親近感を抱いたのはこのことがあったからかもしれないな。
「ひどい…」
クリムは涙を浮かべて、手で顔を隠している。
「…普通、2種類の色魔法に適性を持つことは誇らしいことなのに…」
イブは顔を俯かせ、フォレード達を見ないようにしていた。
「そういえば、本で似たようなことを読んだ記憶がありましたが、嘘だと思っていました」
リーフは驚いていた。
俺は、過去の光景が何度もフラッシュバックし、その度にネットリと嫌な感触、気持ち悪さがこみあげてくる。
そして、過去の記憶を改めて封印するため、
「もういいや。消えろ」
記憶を呼び覚ましている元凶であるこいつらを消す。その覚悟で、脅しで出していた【火球】の温度を上げ、火の色を青く染め始めた。
「「「ひぃ!!!???」」」
フォレード達は、俺の行動に恐怖しているようだ。
大丈夫だ。そんな恐怖も、じきに終わる。
この青い火、【蒼炎】によって。
「「「アヤト…」」」
クリム、イブ、リーフは何か言いたそうだ。
だが、今回ばかりは駄目だ。
これは、俺がケリをつけなくちゃ。
あの、思い出したくない記憶に、決着を。
「悪い。これは、俺がやらなくちゃいけないことなんだ。だから、な?」
俺は出来るだけ優しく言った。あのフォレード達を消したい気持ちはある。だが、それだけでは駄目だ。それなりの絶望を味合わせないとな。それに、これに関しては一人でやらないと。
「アヤト。本当に大丈夫ですか?」
「心配するな。お前たちに危害は与えない」
その言葉に、クリム、イブ、リーフの3人は顔を少し歪める。
まるで、違和感を覚えたかのように。
俺は3人の視線を外し、フォレード達に向かう。
「「あっ」」
イブ、リーフが何か言いたそうだったが、無視した。
ゆっくりと近づきながら、【蒼炎】を大きくしていく。手のひらサイズのものを顔、上半身、全身と、炎の大きさを変えていく。
「た、ただで死んでたまるかぁ!やれ!」
「「「は、はい!!!」」」
と、フォレード達は一斉に、俺に向かって攻撃を始める。
襲い掛かって来る多量の枝や蔦、土石流が向かってくる。
「【結界】。【蒼炎】」
俺は【結界】に【蒼炎】を纏わせ、枝や蔦を燃やし尽くし、土石流を防いでいく。土石流まで燃やすのは難しいか。防ぎ切っただけでもよしとしよう。それにしても結界って、こんなにも有効活用出来るんだな。今後も研究していく必要があるな。
「な!?」
「私達の魔法が!攻撃が!」
「一切、通用しないなんて…!」
へぇー。これで終わりか。意外とあっけないものなんだな。
だが、
「また、敵意を向けたな?」
確かに、自分の命が危うかったら、抵抗するかもしれない。
だが、今まであいつを物のように扱ってきたんだろ?
散々、ボロボロにしてきたんだろ?
その報いがいっぺんにくるだけだ。
それで死んだら、それだけのことを、お前らがしたということだ。
「ひぃ!??」
「もう、もうやめて、くださいぃ…」
「我々には、森の守護という大事な役割が…」
「うるせぇよ。第一、その役割をやらずにあのドライヤドを苛め抜いていたんだろ?」
そうだ。こいつらは生きていちゃいけない存在。
誰も裁けないというのなら、俺がやってやる。
「でも、だって…」
ウジウジとうるさいな。
「もう何も言うな。これで終わりにしてやるよ」
俺は、手をフォレード達に向け、魔法を使おうとする。
「【蒼炎だn…!】」
「待って!」
俺とフォレード達との間に何者かが割り込んできた。そいつは、
「何のつもりだ、ドライヤド?」
俺が助けたドライヤドだった。




