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色を司りし者  作者: 彩 豊
第3色 緑の国 第一章 赤と緑が混在するフォレード
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3-1-10(第168話) 理解してくれる仲間

今週も投稿しようと思います。

 夜。

 俺はあのドライヤドを休ませるため、ルリとクロミルに協力してもらい、三人でお風呂、そして就寝してもらった。ちょくちょく、

「あ、あの…。こんなによくしてもらっても私には何も…」

 なんて言っていた気もするが、二人の強引な手により、三人仲良く寝てもらった。その光景を俺、イブ、クリム、リーフの4人で確認してから、

「さて、それじゃあ今後のことについて話そうか?」

「「「はい」」」

 今後について、話し合うとするか。


「さて、予定は大幅に狂ったわけだが、これからどうする?」

「いきなり丸投げですか!?」

 と、クリムからの鋭いツッコミ。

 ま、確かに丸投げはよくないよな。

「一応、俺はあのドライヤドを助けたい、とは思っている。ただ、」

「「「ただ???」」」

 俺は一呼吸おいてから、

「このことで緑の国を敵に回したのかもしれない。つまり、俺と来るということは緑の国を相手にしなくちゃならなくなるんだ。それでも、一緒に来てくれるか?」

 この時、俺の声は震えていたと思う。でも、それでも確認しなくてはならない。これでもし、

“あ、私は嫌ですので、ここで失礼します”

 なんて言われても、俺はそいつを引き止めることなんて出来ないだろう。

 だって、これは俺がやらなきゃいけない、違うな。

 俺がやりたいこと、つまりは我が儘だ。

 正義とか悪とか禁忌なんてものは関係ない。

 俺はあのドライヤドを、過去の俺の境遇に似ていたあいつをこのまま野放しにはしたくない。すれば、俺に後悔が残る。全部を解決できなくとも、せめて、縁があったあのドライヤドのことは助けたい。

 そんなことを3人に伝えた。

 そして、

「…一つ、条件があります」

 リーフの発言に、俺の呼吸が止まる。一体、どういった条件なんだ?

「確認なんですけど、アヤトには、あのドライヤドの境遇が、過去の自分と重なって見えたから助けたい、ということでいいですか?」

「あ、ああ」

 よくよく思い返してみると、それって遠回しに、

“俺もあんな風にいじめられていたことがあったんだよね~”

 と言っているようなものじゃないか?

 だが、もう言ってしまった手前、今更否定するのもどうかと思うし、このまま話を続行しよう。

「差し支えなければ、後でそのアヤトの過去について教えてもらいたいなと。駄目ですか?」

 と、クリムとイブの2人も首を縦に振る。

 え?つまり、あの惨めだったころについて語れと言うのか?

 あの思い出すのも嫌で嫌で仕方ないあの記憶を、か?

 ・・・。

 俺はちょっと悩んでから、

「…これが終わってからでいいか?」

 そう答えることしか出来なかった。

 今すぐにはあの忌々しい思い出を思い出したくはない。

 俺のそんな空気を感じ取ってくれたのか、

「「「(((こくり)))」」」

 と、うなずいてくれた。

 良かった。これで、今後の話が出来るな。

 …あれ?でも、

「そういえば、あの時、なんで俺の話も聞かずにあのドライヤドを助けてくれたんだ?」

 俺はあの時、あのドライヤドの言葉、様子、表情を見て助けようと決意した。

 だが、その決意はその時、誰にも話していなかった。なのに、みんな俺の意図を汲み取ってくれた。

 どうして?

「私は、アヤトの言うことを信じています。ですから、何か考えがあると思い、賛成しました」

 …それってつまり、自分は何にも考えていない、と言っているのと同じ意味な気がするが、気のせいだよな?それでも、クリムの信頼には本当に感謝だ。

「…私はそこの脳筋娘とは違う。あの狂気の塊とまで評された森災が自分以外に怯えているような雰囲気をだしたり、死人みたいな目をしたりしないと思う。だからアヤトの言うことに従った」

「何ですって!?」

 ほんと。イブはよく見ているな。俺が多少抜けていても助けてくれて、いつもお世話になりっぱなしだ。同じ王女でも、ここまで違いがあるとは。

「私は、あの人面樹の言っていることに不信感?違和感?のようなものを感じました。それに、あのドライヤドがどうしても森災に見えなくて…」

 確かに、あの人面樹の言っている事にはいくつかおかしな点があったと思う。

 あの状況でよく人の話を冷静に分析できるもんだな。

 ところで、あの人面樹は人、なのだろうか?それとも植物?…顔だけ人、というわけだから、植物でいいのか。

 ま、そんなことはどうでもいいとして、

「分かった。それじゃあ今後の予定を確認したいわけだが、いいか?」

「「「はい!!!」」」

 こうして、夜の見張り兼作戦会議が始まった。

 そして一夜が過ぎた。

 話し合った結果、作戦は決まった。

 作戦と言うより今後の進路なのだが。

 まず、色樹、という木を目印にして、緑の国に入らないように注意しながら迂回することになった。

 何でも、色樹は木によって葉の色、幹の色がそれぞれ異なる。

 地球では幹は茶色、葉は緑色で、この世界にもそういった木はある。ただ、緑の国に入ると、それだけでなく、葉の色が黒、白、茶、桃。幹の色も青、紺、緑、黄と本当に色とりどりである。葉が黄や赤だけだったら紅葉かなと思ったが、どうやらこれは1年中のことらしい。…待てよ?そういえば、不可能と言われていた青いバラの開発もバイオテクノロジーで可能になったわけだし、地球でも今後、桃色の葉に青い幹の木が誕生するのかもしれないな。

…そんなカラフルな木をつくったとして、誰が喜ぶのだろうか。

 話が逸れたな。

 とにかく、俺達は今、あのフォレード?だっけ?そいつらのことを警戒しながら、牛車を走らせていた。それで、日数はどれくらいかかるかリーフに聞いてみたところ、

“分かりません”

 と返ってきた。

 ・・・ま、別にいいか。

 今はとにかく、必死にあいつらから距離をとりつつ、対策を練らないと!

 そして、あのドライヤドから色々と話を聞いた。

 まず、このドライヤドには名前が無い、ということである。なんでも、生まれてから間もないらしい。それで生まれた瞬間にいじめられていたのか。それに、どうやって生まれたのかちょっと興味があるな。

 そして、フォレードの生態を少し説明してくれた。

 何でもフォレードは、日が見え始めたら活動を始め、沈み始めたら活動を終えるらしい。

 なんか原始人みたいな生き方というか生態系というか…。

 これで夜に襲われる、なんて心配をしなくて済むな。でも、魔獣に対する警戒は怠らないようにしないととな。

 そして、フォレードの弱点なのだが、

“火に弱いです”

 この一言で、俺は思わずクリムを見てしまった。クリムも俺を見ていたらしく、目だけで、

“いよいよ私の出番ですね!”

 と、言っていた気がする。

 その後、イブがクリムに何か言って、すぐにキャットファイトを始めてしまったが。

 そうか。あいつら、火に弱いのか。ふふふ…。

 牛車でも常に、あのフォレードへの対策で思考をまわす。

 ドライヤドは終始、

“わ、私なんかを助けたせいで…”

 と、落ち込んでいたが、ルリの妹力の発揮により、何とか心を落ち着かせている。

 さすが、妹力は半端ないな。…妹力ってなんだろう。

 とにかく、ドライヤドの事はルリに任せて俺達はあのフォレード対策だ。

 こうして、対策会議を開いて話し合い、翌日に魔法を研究し、改良。結果を話し合いまた作戦会議を繰り返す。

 その間、クロミルには牛車をいつもより長い時間引かせてしまったが、

“私は大丈夫ですので、ご主人様はご主人様のできることをしてください”

 と、言われてしまった。

 ルリといい、クロミルといい、俺にはもったいない身内なこと。

 リーフ、クリム、イブからもちょくちょく、

“信頼されて羨ましいですね”

“私も欲しいです”

“…アヤト、子供欲しい”

 俺は全部生返事で返しておいた。どう返答したらいいやら…。

 そして、三人で作り上げた必殺技?のような魔法があるらしい。今度見てみたい。

 そんなふざけた話を挟みながら、俺達は作戦会議を進める。


 そして、数日が経過し、出発しようと身支度を整えていた朝、

「…お兄ちゃん。なんか、いるよ」

 急にルリから真剣なトーンで話しかけられる。

 ドライヤド以外は全員身構え、周囲を警戒し始める。

 当のドライヤドはというと、

「え?え?ええ!?」

 と、近辺をオロオロしているだけだった。

 ま、その気持ちも分かるけどな。それより、こんな朝っぱらからご苦労なこって。

「ルリ。どこにいるんだ?」

「囲まれている」

「…何?」

「アヤト!」

 ここで、クリムが急に声をあげる。

 な、なんだ?

「ふ。ようやく見つけたぞ、森災と、森に仇成す者達よ」

「「「「「「「!!!!!!!???????」」」」」」」

 俺達周囲の景色が急に歪みだす。そして、

「さぁ。その森災を我々に引き渡し、貴様らも森の裁きを受けるがよい」

 前方に人面樹、周囲にはドライヤドやウッドピクシーが大勢いた。

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