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色を司りし者  作者: 彩 豊
第3色 緑の国 第一章 赤と緑が混在するフォレード
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3-1-8(第166話) フォレード

今週も投稿しようと思います。

 俺はすぐに牛車にいるみんなを集めて会議を開く。緊急会議である。

「本日は本当に、本当に申し訳ありません…」

 クロミルの謝罪を、

「何言っているの、クロミルお姉ちゃん!みんな間違いの一つや二つ、するもんだよ!」

「…ん。クロミルだけが恥じることでは無い」

「そうです。ここは一丸となってこの事態を解決することが大事です!」

「…脳筋娘に何が出来るのやら(ボソッ)」

「イ~ブ~?全部聞こえているんだからね~?」

「…望むところ」

 と、ここで二人が戦線離脱してしまった。ま、いつも通りは大切なので、この二人は素通りしておこう。

 ちなみに、昨晩、俺の検索機能で周辺を調べてみたのだが、『森』としかでてこなかったため、使えない。ま、確かに見渡す限り木がたくさんあるけどさ。説明、雑過ぎないか?ま、こんな検索エンジンに愚痴をこぼしていてもしょうがない。ここは頼みの綱のリーフさんに任せるとしよう。

「…妙ですね。牛人族の空間把握力はとても優秀で、決して方向音痴にならないと聞いていたのですが…」

「それなのに、大変申し訳ありません…」

 へぇ。クロミル、方向感覚に優れているのか。これなら、クロミルに地図を見せて方向を指示してもらうのもいいかもしれないな。いや、これからそうしよう。

 だが、方向感覚が優れているのに、道を間違った挙句に迷子か。道を間違えた時点で気づかないのかな。

「…お兄ちゃん。気をつけて。何か、いる」

 ルリの緊迫した声に、みんなの顔に緊張が走る。さすがの二人もキャットファイトをやめたようだ。

「【気配察知】。…!前と後ろに反応あり!みなさん、気を付けて!」

「「「「「!!!!!?????」」」」」

クリムの一声で、全員、互いを見つめ、

「俺、ルリ、クロミルが前。イブ、クリム、リーフが後ろを警戒!!」

「「「「「はい!!!!!」」」」」

 そして、全員で辺りを警戒する。

 瞬間、

「「「「「「!!!!!!??????」」」」」」

 辺りの風景が変わり始める。

 緑一色だった森が異なる色に変化し始めていく。

 緑だった木が赤や橙、黄、そして白へ…白!?

「…おそらく、これらは『色樹(しきじゅ)』です。様々な色をする木です。緑の国周辺にしか生えないと言われているはずですが…」

「嘘だろ?」

 そんなはずはない。だって、まだ国境も超えていなかったはずだ。確か、俺はそう記憶していたはずだ。

「おそらく、私達は幻影を見せられていたのだと思います」

「その通りだ。よく分かっているじゃないか、娘よ」

「「「「「「!!!!!!??????」」」」」」

 そして、前方から何かの声が聞こえてくる。

 この声、男か?だが、俺の予想とは相反するものとなった。

(って、人面樹かよ!?)

 思わず声に出しそうになってしまった。



「さぁ。こんな無駄なことをしていないで、さっさと森災を引き渡すのだ」

「森、災?」

 確か、緑の国を破滅に導く危険な奴、だよな?

 何で俺達が匿っていることになるんだ?

 話しかけてきた人面樹の後ろにはさらに別の中年男性の顔の人面樹が続々と顔を見せてくる。中年男性の顔がこんなに…。

「そんなやつ、俺達は知らんが?」

「とぼけるなぁ!それじゃあ、貴様らの後ろにいるのは何だ!?」

「後ろ?」

 ここで、俺、ルリ、は後ろを見る。クロミルはその間、前方の人面樹に警戒している。

「リーフ!後ろには何がいたんだ!?」

 俺はリーフに聞いた。

「それが…」

 と、何故か答えることに戸惑っていた。

 どうしたんだ?何を見たのか教えてくれればいいのに、そんなに戸惑う必要があるのか?

「クリム!イブ!一体何を見たんだ!?」

「「…あ、あれ」」

 と、恐る恐る指を差した方向には、

「…も、もう殺して…」

 死にかけのドライヤド?がいた。

 

 こいつはドライヤド、なのか?

 見た目はゲームやアニメで見た通りだ。人間に近い体で、所々植物が生えている。

 だが、色が少しおかしく見える。

 色は緑と赤?が少し混ざっている感じに見える。一言でいうなら、茶色?て感じだ。所々緑が見えるのは分かるが、くすんだ赤も見える。そして何より、ボロボロなのだ。俺の知っているドライヤドとは随分かけ離れているな。

「こいつが、森災なのか?」

「そうだ。こいつは禁忌を犯した森災だ」

「禁忌…」

 何をしでかしたのかは知らないが、それならしょうがないか。

 俺はその森災と呼ばれたドライヤドに近づく。今更だけど、こいつはドライヤドでいいんだよな?これで人面樹だったら泣くぞ。

「リーフ。こいつはドライヤド、でいいんだよな?」

「え?あ、はい。そうです…」

 何か言いたげだな。でも、今は後回しだ。

 さて、こいつをあの人面樹に引き渡せばいいのか。

 俺がこのドライヤドに触れようとすると、

「…あなたも、私を否定するの?」

「え?」

 何だ?何を急に言っている?

「私が、他のフォレードと異なるから、私を森災だと認定したの?」

「は?」

 何だ?本当に事態が飲め込めないのだが。

 こいつが他のフォレードと異なる?ま、確かに体にちょくちょく赤があったり、茶色があったりとしているが、それだけだろ。

 ルリ達もこの発言を聞いていたのか、表情を曇らせる。

「おい!早くそいつをこっちに渡せ!」

 なんか、人面樹がうるさいな。

 でも、こいつのさっきの言葉。確か、

“他のフォレードと異なるから”

 か。

 その言葉、どうにも引っかかる。

 それに、ちょっと懐かしいような…。

「アヤト。この子、どうします?」

「…俺は、」

 リーフから聞いた話だと、フォレードは世界樹が生み出した眷属。そして、世界樹とその眷属、フォレードは森災から緑の国を守るために、今も活動していたんだっけか。

 つまり、こいつが森災なら倒すべき相手なのだろう。

 だが、どうにもこいつが森災だとは思えない。さっきの発言と言い、様子といい、色々とおかしい。

 森災は悪意の塊だと聞いたが、こんな死相が全身からあふれていそうなこいつが悪意の塊か?

 森災は人間の衣食住全てを奪うんだろ?なら、何故こいつは今、俺達の衣食住を奪おうとしない?むしろ、こいつが衣食住全てを奪われたんじゃないか?

 ん?奪われ、る?

 ・・・。

 ああ、なんだ。

 今、分かった。

 こいつ、俺が昔見た、いじめられていた時の自分の目そっくりだ。

 それに、言葉もよく似ていたな。

 あの時は確か、

“どうして他の人と違うからっていじめるの?” 

 だったか。

 俺も親に相談したんだっけか。

 …そう考え始めると、他人事には思えなくなるよなぁ。

「おい貴様!何をしている!?」

「「そうだそうだ!!」」

 …そうか。

 昔のことを思い出し来たら、こいつらのことも、いじめられた奴にくっつく金魚の糞にしか見えなくなってきた。

 それで、この森災?と呼ばれているドライヤドは昔の俺とよく似た状況に陥っていると。周りは敵だらけ。助けてくれるのは自分だけ。何をしても周りから非難しか受けない日々。

 思い出しただけで嫌な気分になる。

 だから、

「…リーフは、俺の…」

「おい!そこのエルフ!貴様なら分かるだろ!さっさとあの森災をこちらに引き渡せ!」

 ち!!

 こいつ、俺がリーフと話をしたかったのに。

「私は…」

 リーフは考えこむような姿勢で俺と人面樹の中間までいく。

「「リーフ…」」

 クリム、イブも心配していた。

 そりゃ、クリムとイブにとっては姉みたいな存在だったからな。大切な家族と敵対したくない、と思っているのだろうか。

 俺だった出来ればリーフと敵対したくない。

 だが、リーフは元とはいえ、緑の国の住人。

 人面樹の言う事を聞くのかもしれない。

 よく考えると、リーフ以外はこの森災と呼ばれたドライヤドを助けたいのだろうか。そんなことも気になる始末。

 最悪の場合は…。

「ふ。さぁ、私達と一緒に、」

「お断りです!」

 瞬間、

「はぁっ!」

 リーフは人面樹に向かって風を起こす。その風は周囲にある葉っぱを巻き込み、人面樹達の視界を防いでいた。

「き、貴様!何を!?まさかそいつらに…!」

「ええ。私は緑の国よりアヤト達が大切ですから」

「「「「「リーフ(お姉ちゃん)(様)…」」」」」

 なんて心強い言葉なんだ…。

 感動のあまり足が機能しなくなってしまうじゃないか。

「さ。今の内に逃げますよ!」

「「「「「はい!!!!!」」」」」

 俺達は牛車に森災と呼ばれたドライヤドを投げ入れ、牛車を思いっきり引いてこの場から去った。

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