3-1-7(第165話) フォレード等に関する勉強会
「ふぉ、フォレード?森災?」
「そうです。緑の国は世界樹、そしてフォレードという種族によって守られているのです」
と、話すリーフに、
「「「へぇ~」」」
感心する俺、ルリ、クリム。
「…ちなみに言っておくけど、これは誰もが知っていること。クロミルやルリはともかく、なんでアヤトやクリムが知らないの?」
「「…」」
俺はもちろん異世界の人だから、この世界の常識なんて知っているわけがない。
この世界に来てからもう半年?一年?くらい経過している気がするが、一向に本なんか読みたくない。というより勉強したくない。日本での勉強が結構なトラウマなんだよなぁ。
「わ、私は、勉強が嫌いだったので、その分特訓に時間を費やしていました。それで…」
「く、クリム!」
「アヤト!」
グッ。
俺は無言で見つめ合い、かたく手を結ぶ。
分かる。その気持ちよ~く分かる!勉強なんてクソくらえだ!!
「…何二人で分かりあっているの?」
「だって、ねぇ?」
「だよなぁ?」
まったく。進んで勉強しようなんて意識を持っている人の気がしれん!
勉強よりだらけきった生活!これこそ正義だろう!
欲を言えば、だらけていても、安心かつ安定した生活を送りたい。
「とにかく。今回は私の話を聞いてしっかり憶えて下さいね?」
「「えぇー」」
「い・い・で・す・ね?」
「「はい…」」
こうして俺とクリムは、嫌々ながらも、リーフの話を聞くことにした。
話を聞いた結果、緑の国には森災、世界樹、そしてフォレードという生物がいるらしい。
森災は、森に災いをもたらし、人から衣食住を奪う生き物、とのこと。しかも、人の命はわざと奪わず、噂では、餓死する様子を今もどこかで楽しんでいるのではないか、と言われている極悪生物らしい。
世界樹は、そんな森災から緑の国を守るために緑の国近辺にいる守り神、みたいな存在らしい。なんでも、緑の国の至る所に世界樹を称えたオブジェがあるんだとか。そして毎年、世界樹に供物を捧げるらしいが、その供物の詳しい内容はリーフにも分からないらしい。それどころか、国の民のほとんどが知らず、知っているのは極わずか、とのこと。ここが一番謎だよな。
そして、一年中世界樹が森災を見張っている訳にもいかないので、眷属を生み出し、そいつらに一部任せている。それがフォレードという種族である。
簡単にまとめれば、こんな感じかな。
だけど、一番気になっていることが分からなかった。
「それで、その森災?世界樹?フォレード?の姿ってそれぞれどうなっているの?」
「それが、よく分かっていないんですよねぇ…」
「…。リーフの言う通り。情報が錯そうしていて、フォレードの事しか確かなことが分からない」
ということだった。
フォレードの見た目について聞いてみたところ、大きく分けて3種類いるのだとか。
1種類目はウッドピクシー、という妖精である。小さく、いたずら好きで、楽しいこと好きで、みんなと一緒に話をすることが大好きだという。
2種類目はドライヤド、という精霊である。大人しく、知慮深く、優しい性格なのだという。しかも、ドライヤドの見た目はみんな美人、とのこと。
3種類目は
「じ、人面樹?」
である。
人面樹はドライヤドとは対照的な精霊で、気性が荒く、喧嘩っぽく、自尊心が少し高いらしい。そして何故か、人面樹の顔はみな、中年男性のようだと言う。
これを聞いてみて、
(ドライヤド、か。絶対にあいてえ!)
そんな決意を固めていた。何せ、ドライヤドはみんな美人というではないか。異世界に来たら一度はあってみたいと思っていたんだよな。ま、会えなかったら会えなかったでしょうがないが。
それにしても、
「そのフォレード、つうのは一体なんだ?」
「なんだ、と聞かれても…」
「?…どういう事?」
「いや、フォレードはウッドピクシー、ドライヤド、人面樹の3つの種族で成り立っているだろ?だから、その…」
なんだろう。上手く言葉に出来ない。
「これは私の推測ですが、フォレード、という仕事をしている3つの種族、と考えればいいのではないでしょうか?」
ここで、リーフが助け船を出してくれた。
フォレード、という仕事か。
「なるほど。納得した。ありがとう、リーフ」
「…クリムは?」
「zzz…。は!?ね、寝ていませんよ!?ちゃんと、ちゃんと起きていましたよ!?」
「「「・・・」」」
俺、イブ、リーフの視線がクリムの全身に突き刺さる。
ちなみに、イブ、クロミルには夜中の見張りをやってもらうため、二人そろって熟睡中である。よって、クリムをかばう人なんて一人もいない。
「…あ!もうそろそろ見張りの交代の時間じゃないですか!?今、クロミルとルリちゃんを」
「…まだ時間じゃない」
「・・・」
イブ。クリムに対しては人一倍残酷だな。
「…そうよ。私、さっきの話を一切聞かずに寝ていましたがそれが何か!?」
開き直って逆切れするとは。
さすがの二人も固まって動けないようだ。
「…すいませんでした。私が完全に悪うございました」
そして、逆切れからの頭を下げての謝罪。
情緒不安定じゃないかと思うくらいの切り返しの速さだ。
そんな謝罪を皮切りに、
「ま、わざとじゃないなら、仕方ありませんよね?」
「…謝罪は受け取る」
「ありがとうございます」
そうして、乙女達は俺の存在を空気の様に思っているのか、交代の時間になるまで3人で楽しく話をしていた。ま、俺は慣れているからいいけどね。
そしてさらに数日経過し、事件は起きた。
「…ご主人様。大変失礼なのですが、」
「ん?なんだ?」
「その、道に迷ってしまいました」
「え?」
異世界に来て、迷子になってしまった。
これで今週の投稿はこれで終了します。
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また、前回出てきた『ロウカン』は『琅玕』と書き、暗緑色または青碧色の半透明の硬玉、だそうです。




