3-1-2(第160話) 仲間達の現状確認
今週も投稿しようと思います。
気温が少し下がり、半袖の上に軽く羽織りたくなるような気温なこの頃。
夏のような暑い日々は過ぎ去り、秋に近づいているのだろうか。
紅葉、とまではいかないものの、ちょっと木の色が変わり始めている。そんな景色が、俺達の周りに見える。
地球なら、もう少しで紅葉シーズン、となるのだろうか。
その時の俺は、ネットで秋に放送されるアニメのチェックでもしていたのか、紅葉狩りや梨がり等、秋のイベントを一切覚えていない。秋に放送されていたアニメなら言えるけどな。そんなことを自慢していたところで何の意味もないし。リア充への道、険しす。ま、目指しているわけでもないけど。
今、俺達は青の国から離れ、緑の国を目指している。
何といっても、リーフの生まれ故郷なのだ。それに、リーフから聞いたところ、美男美女がわんさかいるとのこと。これは是非とも訪れてみたい!そして、異世界の美女を…。ぐへ、ぐへへ…。
「…ご、ご主人様?」
「は!?な、何もしていないよ!?本当だぞ!いやらしい妄想なんかしていないからな!?ほんとだからな!?」
「は、はぁ」
し、しまった!これでは、
“俺、さっきまでいやらしいことを考えていました!”
と、公言しているようなものではないか!??
しくじったぁ…。
ここで、俺の旅仲間を改めて確認しよう。
今、俺の隣で牛車を引っ張っているこの牛人はクロミル。
赤の国で売られていたところを俺が買い取ったのだ。つまり、俺は人身売買に身を染めた、ということになる。…ま、だからなんだ。という感じなのだが。
そして、気温が少し下がっているのも影響しているのか、前の半袖から、白黒の長袖へと、衣服が変更され、その上にパーカーを着ている。う~ん。似合っているよ、と褒めてやりたい。だが、俺にはそんなセリフは言えない。恥ずかしいからな!
さて、次は、
「ね~、お兄ちゃん?お昼まだ~?お腹すいたよー」
「…まぁ待て。開けた場所で飯を食うから、それまで我慢だ」
「分かった」
この自称妹、ルリについてだ。
ルリは元ヒュドラで暴走しかけていたところを俺が倒し、なんと擬人化したのだ!
そして、俺を兄として慕い、こうして俺と一緒に旅を共にしている。
…ほんと、何で俺なんかを兄として慕うのだろうか?俺よりできた人間なんて五億といるだろうに。俺は最底辺…とまではいかなくても、全人類の中でも下層の人間だと思っている。頭悪いし、常識を知らないし、馬鹿だし、見た目は気持ち下の下、の中といったところだろう。そんな俺をどうして?
話が逸れてしまった。
ともかく、こんなどうしようもない俺に妹ができたわけだが、本当にできた子である。決して、身内だから高く評価している、というわけではない。純粋で、俺達のことをよく思ってくれる、信頼における人物といえるだろう。俺みたいに使い古した雑巾のように汚れきった思考なんて持ち合わせていない。綺麗に加工されたダイヤモンドのように透き通った心を持っている、といってもいいだろう。
ま、食い意地はすごくはっているが。それはおそらく、ルリが元魔獣だからなのだろう。だから食に人一倍うるさいのかもしれないし、人一倍食うのかもしれない。
服も、前みたいに青が映える半袖の上にクロミルと色違いである青のパーカーを着ている。この二人、かなり仲いいからな。お揃いにしたのかもしれない。
それに引き換え、
「イ~ブ~?今、聞き捨てならないことをいったわね。私のこと、筋肉女って!」
「…ん。だって、クリムは常に筋肉のことしか考えていないから、筋肉女。ピッタシ♪」
「何ですって!?こ、この、食いしん坊!全身胃袋お化け!!」
「…そのセリフ、絶対に許さない」
「ふん!望むところよ!全身胃袋お化け!」
「…ふにゅ~」
「こにょ~。これにゃらどうにゃ~」
「お兄ちゃん。今日もやっているね」
「…はぁ」
この二人、クリムとイブは相変わらず仲が悪い。
クリム=ヴァーミリオン。
赤の国の王女なのだが、イブの発言にもあったとおり、体を鍛えることが大好きな王女様である。おかげで二日に一度は牛車を止め、数時間特訓の時間を作っている。俺も自身の成長のためにちょうどいいので助かっているが、最初は牛車の中でも体を動かそうとしていた。これが問題である。ちょっとと言いつつ、牛車の中で追いかけっこや魔法の練習をするのだ。まったく、小さな子供かよ、と内心思ってしまった。そのせいで牛車の一部に焦げ跡が出来てしまった。これが原因で破損しなければいいが…。フラグになる発言は控えよう。
対するはイブ=デビル。
これまた魔の国の王女である。
出会った当初は口数の少ない大人しめの女の人かとおもったが、それは大いに間違いだった。クリムと一目合えば火花を散らし、数分経てばクリムとキャットファイトするという。クリムに対しては物凄く好戦的である。そして、ルリと同じく食いしん坊である。ルリと食べ物をめぐってたまに争っていたりする。
そんな二人だが、結構仲が良い面もある。
それは服である。
緑の国に向かうのに、今の気温では半袖は少し肌寒いのか、これまた二人とも色違いのカーディガンを羽織っている。
「…も~。うるさいですよ二人とも。これではおちおち眠れないじゃないですか…」
訂正。
リーフを含めた三人が、かなり仲が良い。
この寝坊助なのがリーフ=パール。
元ギルド職員で、俺の専属受付嬢、とのこと。そして、受付嬢をやっていたにも関わらず、強い。ほんと、ものすごく強いのだ。なんでこの人、ギルドの受付嬢なんて仕事をしていたのだろうか。冒険者になって、依頼をしていた方が儲かる気がするのだが…?ま、そこは個人の自由だし、あまり首を突っ込むのはよそう。そして、先ほども述べたが、寝坊助なのだ。こういう完璧な人の弱点ってなんか萌える…。
ちなみにリーフは緑のカーディガンを羽織っている。ほんと、この三人は仲がよろしいことで。
あれ?それじゃあ俺は?
・・・。
考えないようにしよう。
うん。それがいい。それがベストだ。
いつも通りだ。
「ご主人様。少し先に開けた場所が…」
「何?」
俺は【赤色装】で強化された視力を用いり、先の地形を見る。
・・・確かに。あんなに広ければ、楽しいお昼時となるだろう。
「よし。あそこでお昼にするか」
「かしこまりました」
「え?何々?もしかしてお昼?お昼にするの?」
「そうだ。だから…」
「うわーい!ルリ、ホットケーキがいい!蜂蜜いっぱいかけてね、それでね…」
と、ルリは牛車を降り、俺とクロミルが牛車を引く速度に合わせてついてくる。
まったく。ご飯時になるといつも浮かれるんだよな。誰に似たんだか。
…俺じゃないよな?
多分、
「…ん。今日こそ、ルリに勝つ」
「何々?もしかしてまた私に大食い勝負でもするの?ルリ、負けないよ!」
「…絶対に、勝つ」
イブに似たんだろうな。
そう達観しながら、
「さ、それじゃあお昼の用意でもするか」
「「「「「は~い!!!!!」」」」」
ここにいるみんなでお昼の用意を始めた。
今、俺を除くみんなが作っているのはホットケーキだ。
あれから何度も俺が教えていくうちにみんなホットケーキを作れるようになった。材料も、あの大戦のお礼と言って、出来るだけ斡旋してもらい、大量に購入した。だが、これは冒険者達からのお礼である。王族からは今使っている牛車をプレゼントしてもらった。この牛車は前回使っていた物より揺れが少なく、大きく、耐久性があるらしい。そして、寿命も長いと、かなり高スペックの牛車である。値段を聞こうとしたが、ラピスから、
「聞かない方がいいよ?特注品だったからね」
その一言で何となく察した。
これは、俺が買った牛車よりお高いのだと。考えてみれば、こんなに高スペックな物がそんじょそこらに売っているわけがない。オーダーメイド品は高品質だが、値段も高くなる。つまり、高いから聞かない方がいいよ、というありがたい申し出だろう。
俺は足の爪の先から頭の髪の先まで庶民で染まっているからな。二百万の牛車でも買うのに戸惑ったからな。きっとそれ以上の値段だろうな。
「…アヤト?」
「…ん?どうした?」
「…何か、考え事?」
「いや、何でもない。気にしないでくれ」
「…分かった」
と、そんな何気ない会話をしている間に、
「見てみてお兄ちゃん!これでホットケーキ5枚目だよ!すごいでしょー!」
「ルリちゃんはまだまだですね。私はこれで8枚目です」
「もうー。二人とも、どれほど食べるつもりなのですか、まったく」
「「20枚も焼いているリーフ(お姉ちゃん)に言われたくない!!」」
「あ。これは、今日の夕飯用です!決して、私がお昼に全部食べよう、なんて思っていませんから!」
「「「「・・・」」」」
「本当です!本当、ですよ~…」
クロミルを除く俺達4人の視線がリーフに突き刺さる。
そして、クロミルはというと、
「ご主人様。ホットケーキ30枚焼けました。これで当分はホットケーキに困ることはないでしょう」
「え?あ、ああ。うん、ありがと」
ホットケーキ作りに誰よりも精を出していた。
俺達が何だかんだしている間に、お昼の分だけでなく、夕飯、明日の朝食の分のホットケーキまで作ってくれていたらしい。なんともありがたいことか。これでみんなの料理の腕が上達するのは嬉しいが、三食連続でホットケーキか。嫌だなー。
「さ、これでお昼にしましょう、ご主人様」
「あー!クロミルお姉ちゃんだけそんなホットケーキ作って!ルリももっと作る!」
「おい!これ以上ホットケーキを作るのは…」
「…私ももっと頑張る」
「何ですって!?イブなんかに負けるわけにはいきません!私も作りますよ!」
「だから…」
「それじゃ、私ももっと作りましょうか」
「私もご主人様のためにもっと頑張らせてもらいます!」
「話聞こうよ!??」
これ以上ホットケーキを作るつもりなのか!?
食えなくなる!絶対に食えなくなるからー!!
そんな俺の嘆きをスルーされ、五人はホットケーキ作りにいそしむ。
まさかここで、大量の材料が裏目に出るとは思わなかったよ…。
結局、みんなクタクタになるまで作っていた。




