1-1-10(第14話) 初の対人戦闘
「………殺してやる。俺………殺してやる」
なんかよく聞こえないが、これから俺を殺そうとしているのは分かった。
「かかって来いよ、ペルセウス!ここがお前の死に場所だ!!」
「お前もか?俺の大切なものを奪うのはなんだろうと殺す!!」
緑魔法しか使えないんじゃ、赤魔法の身体強化で一ひねりだ。
「さぁ!かかってぐお!?」
な、なんだ!?いきなり殴られたぞ!?どういうことだ?あいつは身体強化できないはずなのにどうして?
俺は何度も殴られた。剣を使ってないということはおそらく俺の心を折る気なのだろう。そんなことはさせない!
「うおおおおおお!」
俺は痣だらけの体に気合を入れ、なんとか立ち上がる。くそ!あいつの魔法はいったいなんなんだ!?
「無駄だ!俺の緑魔法は風を使って高速移動するんだぞ!貴様らみたいな人殺しに使えるわけがない!よって貴様は死ね!」
くっ!やはりあいつの攻撃はきつい。そろそろ血が欲しい。血の池ができ始めているし。でも、突破口は見えた!これでやつにも対抗できる!
「人殺しに恨みを抱くなら、自分自身がそれになってどうするペルセウス!覚悟しろよ。どんな理由を並べても、人を殺した事実は決して消えはしない!」
「貴様らは我の大事な妹を殺したんだ!!殺したやつらを殺して何が悪い!?」
「わからないんだったら、あの世で妹に直接会って聞いてこい!俺がその手助けをしてやるよ」
「ほざけ!貴様が死ねぇーーーーー!!」
俺は緑魔法で風を全身に纏う。体の周りに風が吹いている。よし、成功だ。
「き、貴様!?何故その技を!!?それは国秘伝の技なんだぞ!?」
「そんなもんは知らん。ただ使えただけで何が悪い?」
「くそが!死ね!死ね!死ねーーー!!」
あれから十分間、俺たちはひたすらに剣を重ねあった。どっちが有利になるわけでもなく、ただひたすらに剣のぶつかり合う音だけがなっていた。しかし、そんな均衡はいつまでも続くわけがなく、
「な、なにぃ!?」
「それが、おまえの、限界だ!」
そう。ペルセウスの方が先に魔力が尽きたのだ。無理もない。ただでさえ、十分間ずっと風を全身に纏い続けるだけでなく、剣にも風を纏わせ、飛ぶ斬撃を放っていたのだから。そう思うと、俺の魔力はどれほどあるんだよ。
もちろん俺はペルセウスの隙を見逃すほど甘ちゃんじゃない。なので、俺は剣でやつの心臓を貫いた。
「くらえ!」
「ぐはぁ!?」
いくら強くとも、心臓を貫かれたらひとたまりもないだろう。案の定、やつはその場で倒れて行った。
「くそ」
やっぱり人殺しは気持ち悪いもんだな。俺はそう再認識した。
「おい、そこの剣士。俺の話を聞いてほしい」
「つまらないことだったら即座に切り捨てるぞ」
「それでもかまわんさ」
そういって、ペルセウスはニカっと笑った。ぼろぼろだから、笑顔もぎこちないな。俺はペルセウスが話せるくらいに回復させていた。
「それで、話ってのは?」
「あぁ。それはな………」
そうして、ペルセウスの長い語りが始まった。語りが終わるころには、俺は下をうつむき、ペルセウスは目に涙を浮かべていた。
「………ということだ。まぁ、貴様の言う通り、殺人を犯した今となっては意味ないがな」
「ペルセウス………」
「最後に、俺の妹の仇をとって…く…れ」
その言葉を最後に、ペルセウスは息絶えた。
「まったく。まだ返事を返してねぇのに死にやがって。もう俺がやるしかないじゃねぇか」
そう言いながら俺は、目に溜まった透明な液体をぬぐい、ペルセウスの敵討ちを決意した。あんなことを二度と起こさせないために。




