表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
色を司りし者  作者: 彩 豊
第三章 表面化で蠢く浅葱色の陰謀
128/546

2-3-3(第128話) 忘れてくれなかった”埋め合わせ”

 今日の夜、風呂から出て、ソファーで寝ようとリビングに行ったら、

「あれ?なんでみんながいるの?」

 俺は今日からソファーで寝るつもりだったのに。

 もう、あんな不眠な夜は過ごしたくない。

 色々我慢できなくなるからな。

 ま、女の子とこうして共同生活しているだけで色々と溜まるのだが。

「…今日のこと、ラピスから話聞いた」

「その、私達にも多少の非があった事、ここに詫びます」

「すいません。早とちりした上に勘違いしてしまって」

 三人がぺこりと謝る。

 良かった。

 誤解は解けた、のか?

 そもそもあの状況を、三人はどう誤解したのだろうか。

 まぁいい。

 これで俺の埋め合わせも考える必要もなくなったことだし。

「そうか。それじゃ、お休み」

 そう言って、俺はソファーに寝転ぶ。

 このソファー、相変わらずすさまじいフカフカ感だ。

 俺の意識を奪い取ろうとする。

 はぁ、おやす…、

「待って下さい」

「そうです。今日も一緒に寝ましょうよ」

「…ん」

 出来なかった。

 なん、だと!??

 あの状況をもう一度味わえ、だと!??

 こうなったら、

「スー。ピー」

 俺は狸寝入りを実行する。

 ふっ。こうなれば、諦めて寝てくれるだろう。

 さぁ、俺をここに残し、さっさと寝室に行くがいい!

 …ちょっとテンションが高い気がするが、気のせいだろう。

「あ。お兄ちゃん、なんで狸寝入りなんてしているの?こんなこところで寝ていないで、さっさと寝室にいって、みんなで寝ようよ~♪」

「「「「んなぁ!!!!????」」」」

 あ、やっば!!

 思わず声が出ちまった。

 くそ~。

 ルリのやつ、狙ったんじゃないだろうな。

「…今、声が多くなかった?」

「え?それじゃ、アヤトが起きているってこと?」

 みんなの視線が俺に集まる。

 もちろん俺は、

「スー。ピー」

 引き続き、狸寝入りを実行する。

 どうか、この見事な狸寝入りに騙されて欲しい。

「…ちょっと、試してみましょう」

 ん?

 リーフ、試すって一体何を…?

 瞬間、

 ビュン!

「危ね!」

 ズドン!

 俺がさきほどまでいた場所に、大きなくぼみが出来る。

 おそらく、リーフがやったのだろう。

「「「・・・」」」

「ほらね♪」

 避けることは出来ても、俺の説教は避けられなかったのか。

 だが、ここで諦める俺ではない。

 俺は、

「スー。ピー」

 立ったまま狸寝入りを始める。

 確か、立ったまま眠れる人もいるというのだから、これでも騙せるはず!

「「「そんなので騙せると思う???」」」

「…」

 そうですよねー。

 無理ですよねー。

 俺は諦めて目を開け、

「だって、みんなと寝るの、恥ずかしいんだもん!みんなもそうだろ!?」

 と、駄々っ子の様に言い訳する。

 そして、その言い訳に俯く三人。

 心当たりがあるのだろう。

 ふっ。このまま泣き寝入りして、さっさと寝室に行き、俺を除いたみんなで寝るがいい!

「「「べ、べっつにー???」」」

 と、明らかに動揺しながらも、そんな嘘をつく三人。

 俺はそこを見逃さない。

「嘘だ!俺と一緒に寝るの、恥ずかしいだろ!??」

「「「そんなことありません!!!」」」

 と、大きな声で返す三人。

「し、将来の予行練習だと思えば…」

「な、何事も鍛錬ですし…」

「…ふ、夫婦は寝床を共にするもの。だから恥ずかしくない…」

 と、俺に聞こえるようで聞こえない声量で三人はつぶやく。

 なんて言っているのかよく聞こえない…。

「…分かった。今日は俺が折れるよ」

「「「!!?よし!!!」」」

 …一体、何がよいのか聞きたい。

 だが、俺にはそんなことを聞く余裕もなく。

(ああ。今日も眠れない夜を過ごすのか…)

 と、俺は力なく肩を落とす。

「ねーねー?お兄ちゃん達は何をしているの?早く一緒に寝ようよ~?」

「「「はい!!!」」」

 ルリを含めた四人は嬉しそうに寝室に向かう。

「…ご主人様?だ丈夫ですか?お顔が優れないようにお見受けすますが…?」

「いや、なんでもないからな。クロミルはどうする気だ?」

「?もちろん、ご主人様と寝床を共に致します」

(ですよねー)

 俺は諦めて一緒のベッドで寝る。

 …もちろん、やましいことは一切行っていない。

 行っていないのだが、

(この空気といい、この状況といい、今の俺に耐えられるのか?)

 ベッドの上が、幸せな地獄と化していた。

 ああ。早く朝が訪れないかな。

 

「…ん?ふ。ふわぁ~。よく寝た~」

 伸びをしながらゆっくり起きる。

 なんか、今日はとても調子がいい。

 体が軽い。

 ウキウキ気分でスキップしたいくらいだ。

 ま、恥ずかしいからしないけど。

 ところで、

「みんなはどこだ?」

 俺は巨大ベッドの周りを見る。

 だが、誰もいない。

 …あれ?何でだ?

「あ!お兄ちゃん!やっと起きたの!?遅いよ~♪」

 と、ルリは俺によって来る。

 遅い?

 どういうことだ?今は朝じゃないのか?

「…もう夕方」

「え?」

 イブの発言に、俺は慌てて寝室を出て、外を確認する。

「ま、まじか~」

 やはりイブの言っていた通り、夕方だった。

 最初は、俺が早く起きすぎて早朝なのでは?なんて思ったが、早朝の空はこんなオレンジ色ではないだろう。

「あ。やっと起きましたか。今日も日光浴、楽しかったですよ?」

「遅いよアヤト!今日は久々の鍛錬でしたのに!」

 リーフ、クリムも俺より早く起き、それぞれ有意義な休日を過ごしていたようだ。

 …何で俺、夕方までぐっすり寝ていたのだろうか?

 あ。もしかして、一晩中、魔法を使い続けたからか。

 だったらしょうがないな、うん。

 それに、みんなもこの休日を楽しんでいるみたいで良かった、良かった。

「…ご主人様。それでですね。“埋め合わせ”についてのご相談なのですが、よろしいでしょうか?」

「埋め合わせ?」

 何の話だ?

 …あ。もしかして、先日言っていた、あれか?

「でもあれって、無かったことになっていたのでは…?」

「「「あ???」」」

「…いえ、是非聞きましょう」

 もうね、あの三人の顔!

 あんな顔で終始、睨まれたくないからね。

「…その“埋め合わせ”に、私達も参戦してもいいのでしょうか?」

「…達って誰と誰のことだ?」

「ルリのことだよー。ちょっとお兄ちゃんと話がしたくてね」

 もしかして、埋め合わせって、お話しのことなのか。

 だったら、後一人か二人増えたところでたいして変わらないかな。

「…ま、別にいいよ」

「ありがとうございます」

「うし!」

 そんなにガッツポーズするほどなのか?

「それじゃ、明日からお願いいたします」

 ん?明日、から…?

 え?

「ちょっと待て。埋め合わせって、すぐ終わるものじゃないのか?」

「?いえ?一日かけて一人の埋め合わせをするので、計五日、ですね」

 ん?んん!??

 なんか、色々と話がおかしい。

 埋め合わせって、一日かけるものなのか?

 話だけなら十分ちょいで終わるものじゃないのか?

「それでは、私達はお風呂に入ってきますので、お先に失礼します」

「「「「それじゃ」」」」

「…ああ」

 力ない返事を返す俺。

 さて、明日からどうしよう?

 そんな不安を残しながら、夜を過ごした。

今週の投稿はこれで終了したいと思います。

明日から12月、ということで、『小さな会社員の学校生活』を更新したいと思います。

感想、ブックマーク等、お待ちしております。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ