2-2-30(第123話) 異常の反動
『小さな会社員の学校生活』の方も読んでもらえるとうれしいです。
後、いつの間にか5万PV超えていました。
より多くの人に読んでもらえるよう、引き続き改良し、投稿していきたいと思います。
「アヤト?」
「んー?」
「そろそろ王城に行きませんか?」
「…いや、まだ準備が出来ていないだろう。もうしばらくここで待っていよう」
「そう言ってもう七日経ったのですが?」
あれから七日が過ぎた。
あれ以来俺は、
「んー?もう夕方じゃないか。そろそろ寝る準備しないと」
「さっきまでスヤスヤ寝ていたじゃないですか!??」
「んー…。ま、明日行くよ、明日」
「…その言葉、昨日も言っていなかった?」
「気のせい、気のせい」
怠惰の限りを尽くしていた。
あのカオーガとの激闘から、俺はずっとテントの中にこもり、腕の検索機能でネットサーフィンしながら、横になって休んでいる。
ネットで色んな料理を検索、作り方を調べたりしている。
他にも調べようかと思っていたこともあった気がするが、別にいいや。
一応、毎日風呂には入るし、ご飯も二日に一回、大量に作り置きしておく。
だが、それ以外はテントの中で横になって寝ているため、最近は夢の世界の住人となっている。
最初の二日間は俺のことを温かく見守っていたみんなだっただが、四日、五日と経過していくたびに、みんなの心に疑惑が生まれる。
“あれ?なんか様子がおかしくない?”
と。
そして、六日を過ぎたあたりで、みんなの視線が冷たくなる。
だが俺は気にしない。
休めるときに休むのはおかしくないよね。
八日目。
そこにようやく変化が訪れる。
「お兄ちゃ~ん。そろそろテントから出てきなよ?」
「失礼な。ちゃんとテントから出てきているじゃないか」
「それはご飯とお風呂の時だけでしょ?いい加減出てきなよ?」
「…ちょっと古傷が痛んできてな。この傷を癒すのに後数日かかりそうだ」
「…それ、二日前も同じこと言っていたよね?」
「…気のせいだ」
「はぁ」
ルリがテントの前から去っていく。
よし!
これで引き続き、テントの中でゴロゴロ出来る!
俺は最近癖になっている二度寝をしようとすると、
「アヤト?入りますね」
と、勝手に入ってくるリーフ。
ちょっと追い出したい気持ちもあるが、ここは冷静に話し合いをして、立ち去ってもらおう。
俺は横になっていた体を起こす。
「…どうした?何かあったか?」
「…そろそろ王城に行きませんか?」
もう何日も前から聞いているセリフ。
いい加減聞き飽きたな。
「何度も言った気がするが、色々後処理に時間がかかるだろうから、その時間を待ってだな…」
「それならさきほど、アヤトを迎え入れる準備が出来たとのことで報告がありましたよ?」
なんてこった。
だが、断らせてもらう。
「…それはきっと、俺達を騙すために仕向けた偽物だ。言うことを聞く必要なんか…」
「僕がその報告に来たんだけど?」
「…なんでここにラピスがいるんだ?」
「なんでって、アヤトさん達を迎え入れる準備が出来たから呼びに来たんだよ?みんなも待たせちゃってごめんね?」
「…その分、報酬が多く出るなら、問題ない」
「うん、うん!報酬、楽しみ!」
いつの間にか俺のテントの中に入ってくるみんな。
後、俺の味方になりそうなのは、お前しかない!
「なぁクロミル!お前なら、こいつが偽物だって分かるんじゃ…!」
「ご主人様。悪いですが、この人は本物かと」
「…」
今の俺には味方はいなかった。
「…決めた。今日から俺は、この寝袋と一生をともにする!」
といい、寝袋の中に入る。
はぁ~。このフカフカ感、いい気持ちだ。
このまま夢の世界へ旅に出よう!
「それじゃあおやす…」
「「「「「「させません!!!!!!」」」」」」
「ああ!??」
おい!?
俺の寝袋を取るんじゃない!
つか、どうやって俺の寝袋をとったんだ!??
「返せ!返して、俺の寝袋!」
もうあれがないと俺は生きていけないんだ!
「だったら、ね?」
「言いたいこと、分かりますよね?」
「・・・王城に、行きます」
渋々行くのに対し、俺以外はニコニコしていた。
あ~あ。俺の素晴らしい生活が…!
心に雨を降らせながら、王城に向かった。
王城の中に入り、謁見の準備を始める俺達。
その準備に動揺しているのが、
「…なぁ?ほんとにやるのか?俺はこんなことしたくないのだが?」
俺である。
一応、魔の国、赤の国両方の国王とも話したことはあるが、こういう場ってどうも慣れない。
ま、地球では表彰されることも、表立ったこともろくにしていなかったからな。その弊害が出たのか?
それに、
「その恰好、似合っていると思いますよ?」
服装もいつもの冒険者風の服ではなく、黒の礼服?っぽいものを着せられた。
みんなも
「…私達も着て良かったのでしょうか?」
「…当然だと思う。何せ…」
「あの黒い悪魔からこの町を救ったのですから!」
「お兄ちゃんはすごいことしたんだね!」
そうだ!
黒い悪魔現象について調べようと思っていたんだっけ?
すっかり頭から抜け落ちていたな。
ま、それよりも、だ。
みんな、ドレスだのワンピースだの、カラフルな服に包まれている。
公式の場では、女性の皆様も正装する必要があるのかな。
「「「はぁ…」」」
…俺は見ていない。
イブ、クリム、リーフの三人が左手薬指を見ながらため息をついていたところなんて断じて見ていない。
ちなみにアクセサリーは一点だけ付けることを許可されているとのこと。
そのことを聞いた三人は、俺と左手薬指を交互に見ていたのは無視した。
だが、リーフから、
「アヤト、何か言うことがあるのでは?」
この一言にみんなの視線が俺に集中する。
???
何か言うこと、か…。
「ご機嫌麗しゅう?」
「馬鹿にしているのですか?」
みなから怒られてしまった。
…何故?
そんな理不尽なお叱りを受けた後、
「それでは、どうぞ」
その言葉を聞き、俺達は玉座に入る。
そして、目にしたのは、
「本日は、誠に、誠に感謝いたします!」
五人が土下座している姿だった。
今週の投稿はこれで終了です。
続きは来週、ということでお願いいたします。
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