2-2-28(第121話) 後悔を残さない異常な選択
時は遡り、カイーガとクロミル達はイブ達の元へ向かっていた。
そして、
「「「あ、あなたは…!?」」」
三人は驚く。
何せ、いきなり傷だらけの男が現れたのだから。
「こ、ここから逃げて下さい!逃げないとやつが…!」
「やつって誰ですか?それにクロミル…!?」
リーフは言いながらとある影が見えた。
カイーガの後から誰かが来ると。
そして、その影は、とある人物に酷似していた。
「あれは…クロミルちゃん!??」
「…ん。それにその隣にいるのは…?」
「ラピス、ですよね?」
「?そーだよー?」
ルリはまるで全てが見えているかのような返事をする。
そして、クロミル達が近づくにつれ、クロミル達がどんな容体なのか理解する。
何せ、
「「「だ、大丈夫ですか!??」」」
カイーガと同じくらい、酷い怪我をしているのだから。
「…うん。僕達は平気だよ。平気だけど…」
「ご主人様…」
クロミルが平気ではなかった。
魂だけが別次元にでもあるかのような、虚ろな表情。
そして、ボロボロになってきたところを見ると、何かが起きた。
そう察した三人は、応急処置の準備を始める。
一番聞きやすいラピスに、
「…それで、色々どうなったか、聞かせてもらえますよね?」
「…はい」
リーフが代表で聞く。
そして、ラピスは所々端折りながら説明する。
今、アヤトは王城にいること。
そして、カオーガと戦っていること。
最後に、
「「「黒い悪魔現象!!!???」」」
ラピスは自分の目で見たものを伝える。
「嘘!だってあの話は…!?」
「お伽噺ではなかったのですか!??」
「…ほんと?」
「んー?」
三人は最初、信じなかった。
子供が聞けば、みんな笑って馬鹿にして、冗談だと思うのが普通だから。
…一人、分からないようだが。
だが、それが本当だとしたら、三人の血の気が引く。
お伽話では、その黒い悪魔は、都市を丸々一つ更地にした、という話になっている。
つまり、
「アヤトはそんな化け物と戦っている、ということなんですか!??」
「は、はい…」
「…クロミル、落ち込まないで。リーフは別にあなたを攻めているわけじゃない」
「あ!?す、すいません!強く言い過ぎました…」
「い、いえ!私こそ、ご主人様の従者なのに、私だけノコノコと逃げ帰ってしまって…」
「そんなこと言うなら僕も同罪だよ…」
周囲が暗い雰囲気に包まれ始める。
その空気を吹っ飛ばしたのが、
「クロミルお姉ちゃん!とにかく元気になって!」
ルリである。
ルリはアヤトから預かっていたあれを使い、
「…これは?」
「これはね、確か…、魔力池、だったと思う。魔力が回復出来るって言ったたよー」
魔力池を取り出し、クロミルに渡す。
「それって…確か、あの決闘の時にも使っていた…?」
「うん!これで魔力もバッチリだよ!」
と、ルリは親指をたてながら力説する。
「でもこれじゃ、お姉ちゃん達の傷は治せないんだよ…」
と、すぐに落ち込むルリ。
「…私、少しですが、白魔法使えるので、少しくらいなら大丈夫です。ありがとうございます」
と、クロミルは魔力池で魔力を回復させてから、自分、ラピス、そしてカイーガの傷を癒やす。
「…今の私ではこれ位しか出来ず、申し訳ありません」
「いえいえ!すごいことですよ!あの白魔法が使えるなんて!」
「…そんな慰めの言葉をかけていたただいただけでも、私は…」
と、涙ぐみ始めるクロミル。
そこで再び、
「そんなことをしている余裕があるなら、お兄ちゃんを助けに行こうよ!」
ルリが戦闘準備をしながら声をかけてきた。
「そ、そんなの無茶です!!」
初めに反論したのはカイーガである。
カイーガは、あの黒く変貌したカオーガと対面したからこそ、この者達では敵わないと考えていた。
だが、ルリの一言で、
「…ん。分かった」
「そうですね。アヤト一人で戦わせているわけですし」
「ここにいるみんななら…」
「うん!」
「私も行かせてもらいます」
と、王城に向かおうとする五人。
だが、
「止めなよ!あなた達、死に急ぐつもり!??」
ラピスが五人を止めようとした。
「…何故邪魔をする?」
「当たり前です!僕はあなた達を死なせるわけには…」
「私達だって、死ぬつもりはありません」
「ありえません!あなた達があの黒い悪魔に敵うはずがありません!!」
「ええ。私達だけでは敵いませんよ?」
「だったら…!?」
ラピスは憤慨する。
「守りたいから」
ルリはイブ達の前にでて、ラピスに話す。
「私はその現象?はよく分からないけど、今行かないでお兄ちゃんが死んだりしたら、私は一生後悔する。だから行くの。文句ある?」
守りたい。
ラピスだって、アヤトを守りたい。
だが、あんな化け物と戦うなんて…!
そう考えるだけで、ラピスは震えていた。
「別にラピスお姉ちゃんは無理して付いてこなくていいよ?最悪私だけでも…」
「「「ル~リ~ちゃ~ん~???」」」
「ひぃ!?」
ルリの後ろに這いよる三人。
「そんなことはさせません!」
「そうです!私達も行きます!」
「…ルリ、みずくさい」
「私もお供します」
そして、
「それでは、カイーガさん?は、それの監視をお願いします」
「…はい。分かりました」
事務的に話すリーフに、同様に返すカイーガ。
カイーガも何か言いたげだったが、何も言えなかった。
(ま、こいつらの監視も確かに必要だよな…)
と、カイーガは勝手に納得していた。
実際は、あんな化け物と戦いたくなかっただけだが。
そして、
「待って!」
行こうとする五人に声をかけるラピス。
「まだ何か?」
と、クリムは聞く。
ラピスは大きく深呼吸をした後、
「僕も行く!僕が王城まで案内する!そして、みんなを守る!!」
と、叫ぶように宣言するラピス。
その様子を見て、
「うん。それじゃあよろしくね、ラピスお姉ちゃん?」
「…分かった。それではカイーガさん。後はお願いします」
「分かりました」
もう絶対に死なせない!
そんな覚悟を決め、王城に向かう六人だった。
そして時は戻り、
「さ、アヤト!早くその場から離れて!」
「お、おお!!?」
黒い悪魔となったカオーガとの戦いの最中、俺は突然のみんなの助けにより、何とかあのカオーガから距離をとる。
「な、なんでお前らがここに…!?」
「そんな細かい話は後です!それより今はあの化け物です!」
だよな。
「それで、倒す方法はあるの?それはどんな方法なの?」
クリム、イブ、ラピス、クロミル、リーフの五人が、カオーガの攻撃を受け止めている間に、俺、ルリの二人で話し合いをしていた。
「それは…ルリ、お前がカギだ」
「え?ルリが?」
「そう」
「それってどういう…?」
「ああ。それは…」
そして、作戦を軽く話し、近くで聞いていたリーフが四人に指示を出す。
こういう時のリーフって、ほんと、頼りになる。
作戦が決まり、あいつを倒す算段もついた。
後は、
「行くぞ!!」
「「「「「「はい!!!!!!」」」」」」
あいつを倒すだけだ!
けり、つけてやる!
まだ引っ張ります。
そして、来週決着をつけるつもりです。
今週の投稿はこれで終了です。
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