2-2-27(第120話) 異常に抗う者
アイテムボックスから神色剣を取り出す時、横目でクロミル達が逃げたかどうか確認したが、
「よかった。逃げたみたいだな…」
確認出来なかった。
おそらく、もうこの場から去った、ということだろう。
俺はついでに取り出しておいた魔力池で魔力を回復させる。
…うん、大丈夫だ。酔いの症状はないな。
俺は少し安堵しながら、カオーガと立ち向かう。
…改めてみると、ほんとに黒いな。
そんなどうでもいいことを考えながら俺はカオーガの攻撃に備え、構える。
「さぁ、かかってこい!」
瞬間、カオーガの周りに精製していたすさまじい量の槍が、俺めがけて発射された。
ガンガンガンガンガンガンガンガンガンガンガン!!!
槍による怒涛の攻撃で、少しずつ押され始める。
槍が魔力障壁に当たるかん高い音を聞きながら、
(どうやったらあいつを倒せるんだ?)
そんなことを考える。
とりあえず、槍による攻撃が治まったら反撃にでよう。
…よし!治まった今がチャンス…!
ピキピキピキィ!!
「!??」
な、なんだ!?
足が急に!
足を見てみると、
「…あいつの仕業か…」
凍っていた。
何ともいやらしいことで…。
俺が力ずくで凍った足を凍った地面から引き離そうと四苦八苦している隙に、
「rhげうfpでょうしゅどf!!」
カオーガは大きな水の球を作っていた。
え?
なにあれ?
俺が疑問に思っていると、
「…」
カオーガが笑った、気がした。
「!!?」
俺は嫌な予感しかせず、さらに距離を離れようとした瞬間、俺の頬を何かが掠った。
チュドン!
「な、なんだよこれ…」
音のした方を見ると、数センチほどのくぼみが出来ていた。
すぐに魔力障壁を張ったが、
「ぐぅ…」
間に合わず。数発くらってしまう。
だが、これでやつの攻撃が分かった。
あいつ、あの大きな水の球から、少量の水を弾丸並みの速さで俺に向かって発射させたのか!??
そして、水の弾丸が雨のように、俺に降り注ぐ。
「ちぃ!」
魔力障壁を張っているが、こんなものであいつの攻撃が止められるとは思えない。
そう考えた俺は、
(もうこうなったら…!)
はんばやけになりながらも、カオーガに突撃する。
あの弾丸のような攻撃、俺の魔力障壁を平気で貫き、俺の皮膚を掠める。
俺も必死で避けようとするが、雨の様に降り注いでいるので、全部を避けるのは不可能。
よって、俺の体力がガンガン減らされ、出血量が増えていく。
(こんな雨で死んでたまるか!)
その一心で攻撃に耐え、弾丸の雨が止んだ隙にカオーガの近くに行き、
「くらえぇ!」
ズバン!!
横なぎに一閃。
最初は、
(やったか!?)
なんて思ったが、
(あれ?もしかしてこれって…?)
すぐにカオーガは再生を始める。
「くそっ!」
俺は再生している隙に、再生しきれていない箇所を狙って、
「【毒霧】!」
カオーガの体内に【毒霧】が入るよう、気流を操作し、カオーガの体内に毒がまわるようにした。
「@ぎrjひ@そえt!!」
カオーガはさらに雄叫びをあげ、俺に向かって突きを繰り出す。
「ほっ!」
俺は後ろに跳躍し、躱したと思ったが、
ドス。
そんな鈍い音がし、その音がした箇所を見てみると、
(う、嘘だろ…)
カオーガの爪が伸び、俺の腹を貫いていた。
「んんああぁぁ!!」
吐血し、声にならない悲鳴をあげながらも、伸びた爪を剣で思いっきり切り裂き、カオーガから距離をとる。
肩で息をしている状態から脱すべく、俺の腹に刺さっている爪を取り出してから、
「ぐ!」
白魔法で俺の腹を回復させる。
俺は今、何が起きたのか、何をされたのかが理解できなかった。
そして、気持ちを少し落ち着けたところで、
「あいつの爪、伸びるの!??」
今更のように驚いた。
やつが爪を縮ませ、もとの長さに戻しているところを目視しながらそんなことを思ってしまう。
そしてすぐに思考を切り替える。
(あいつ。斬撃もほとんど効かなかったな。どうしよ?)
そういえばあいつ、俺が毒を食らわせた時、雄叫びあげていたな。
まさか、あいつの弱点って…?
だが、どうやったら…?
「sぎおrひpsf!!」
「!??」
どうやら、俺に考える余裕はないみたいだ。
俺はボロボロな体に鞭打って、勝つ方法を必死に探す。
(ちょっと、やばいかもな…)
死を恐れながら。
俺はまず、相手に勝つための方法を考案すべく、
(距離をとって、考える時間を稼ごう)
ということで、相手から距離をとる。
だが、そんな見えっ見えな作戦を読んだのか、
(ま、もちろんそうするわな)
カオーガは攻撃の準備をしていた。
あれは…氷の槍か。
俺は、
「【四色装・赤青黄緑】!」
カオーガの攻撃を避ける準備を始める。
俺はカオーガの攻撃を、
ヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュン!
躱していた。
だが、槍の雨が降っているので、
「!?ちっ!」
無傷で躱しきれるわけがなく、ところどころに切り傷が出来てしまう。
俺も反撃に出たいのだが、無暗に反撃していても意味はない。
なので、
(はやく…、はやく!)
自分をせかし、この状況を打破する方法を考えていた。
躱し続けてどれ程経っただろうか。
(…よし!これならいけ…!)
と、心の中でガッツポーズを決める俺。
そして、その一瞬の油断を見られたのか、
「!??しまっ…!??」
足元を凍らされ、動けなくなってしまう。
俺は突然の出来事に驚く。
そんな俺の隙を、カオーガは見逃さない。止めをさそうと、爪を伸ばしていく。
(もう駄目だ!)
俺は目をつむり、これまでのことを振り返る。
(あ~あ。こうなるんだったら、色々しておけばよかったな~)
そんなことを考えながら、自分の死を待とうとした。
だが、
ガキィン!
とある者が殴って、爪が伸びていく方向を変える。
「お兄ちゃん!助けに来たよ!」
どうやら俺の死は免れたらしい。
「な、なんでお前が…?」
「ルリちゃんだけじゃありません!」
バキバキ!
氷の割れる音が響く。
周りを見ると、
「ご主人様!?大丈夫ですか!?」
「後は私達に任せて、」
「…ゆっくり休むといい」
「ここはしっかり私達が、」
「守りますから!」
本来いないはずのルリ達がいた。
今週は後1話、投稿しようかと思います。
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