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色を司りし者  作者: 彩 豊
第二章 青の国の異常
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2-2-14(第107話) さらば、異常だらけの町!

「「「「「おーいしーい!!!!!」」」」」

 結果として、五人はカレーの虜になった。

 さすが、みんな大好きカレー様だ。

 一口食べただけでみんな目を光らせてパクパクと食べ、

「「「「「おかわり!!!!!」」」」」

 この言葉を聞いた時、俺はニヤリとしながら、みんなの皿におかわり分を入れた。


「…ねぇ。なんで僕だけこんな少ないの?」

「むしろカレーを食わせてやったんだ。感謝しやがれ」

「僕の扱いだけひどくない!?僕、何かした!?」

 もちろん、ラピスだけ一口サイズだ。

 俺は差別する男だからな!

 ま、こうやって俺も差別されて、地球では常にお独り様だったんだけどね。

 …今ぐらい、もっと楽しいことでも考えるか、うん。

 俺は牛人の村でも出されたダリシアンとステルムを食べる。

 おっ♪めちゃくちゃ美味い!

 ダリシアンは肉汁が甘い!

 というより、これは飲めるな。

 肉もすごく柔らかい。

 肉自体はくせがなく、淡泊な感じがするな。

 だから、この濃厚な味付けがマッチしているのか。

 次はこのステルムを頂こう。

 おお!!これも美味しいじゃないか!

 味は…肉じゃがに近いかな。

 よく見たら、ジャガイモみたいな芋もある。

 野菜も味が染み込んでいて、俺の体にも浸透していく…。

 肉は…、うん!ダリシアンとは対照的に噛み応え抜群だ!

 噛めば噛むほど味がでてくる。

 なんか、ビーフジャーキーみたいなだな。

 今度、作ってみようかな。

 …そう言えば、この二つに使われている肉って何の肉だ?

 今回のカレーは、イブ達が買ってきた魚介類を使ったシーフードカレーで、肉は使っていない。

 だが、このダリシアンとステルムに使われている肉は明らかに魚介類じゃないだろう。

 …本当に何の肉だ?

 もしかして、牛人の村で倒したあの爪牙狼の肉か?

 …聞いたら食えなくなりそうだから、いっか。

 見るからに不機嫌なラピスを知らんぷりしながら、豪勢な夕食を食べていった。



「それではアヤト、今日は私達が見張りをします」

「そうです!今日はあんなに美味しい物を食べましたから、元気一杯です!」

「…ん」

「僕もやるよ!ずっとお世話になりっぱなしだし。ご飯も食べさせて、もらって、るし…」

「ああ。それじゃ、今日はもう休ませてもらうわ」

「お休み~♪」

「それではみなさん。お気をつけて」

 食後はいつも通り、即席の風呂を作って入浴し、俺が、ラピスを除くみんなの髪を【ドライヤー(温風)】で乾かした。

俺は竜頭蛇尾な姿勢になっているラピスを無視し、三人の言う通り、休養に努めることにしよう。

今日は何かと疲れたしな。

肉体的にも、精神的にも…。

「おにいちゃ~ん♪今日は一緒に寝ようよ~?」

「…ご主人様、駄目でしょうか?」

 …ルリだけでなく、クロミルまで一緒に寝ることをご所望なのか。

「ま、いいよ」

「やった~!」

「ありがとうございます!」

 もうどうでもいいや。

 頭が働かなくなってきて、これ以上考えることが面倒くさい。

 俺が横になると、

「では、失礼します」

「とぉー!」

 俺の隣に並んで寝ようとするルリとクロミル。

 いつもならやめなさい!と、つっこみたくなるのだが、それそら面倒くさくなってしまい、

「それじゃ、お休み」

「「お休み~(なさい)♪」」

 俺は夢の中へ旅立った。

 ルリとクロミルも、アヤトの寝顔を見てから、まぶたを閉じた。

 時折、話声が聞こえた気がしたが、気にせず三人で寝続けた。




「ふ、ふぁ~~~」

 ふと、目が覚め、ゆっくりと体を起こしながら背伸びをする。

 まだちょっと眠い気もするが、寝起きだからか?

 どうやらもう朝だったらしく、日差しが差してきていた。

「…ん?も、もう朝?」

「…お、おひゃようごしゃいましゅ、ごしゅしんさま」

 二人ともまだ眠いのか、ルリは目をこすり、クロミルは噛みまくっていた。

 テントから顔を出してみると、

「ご、ごめんなさい!!すみませんでした!!!」

 ラピスが土下座して謝っていた。

 え?どういうこと?

 俺の頭の中が?で一杯になった瞬間であった。


 俺達はリーフ、クリム、イブの三人が作ってくれた朝食を食べながら、今は頭を上げて正座しているラピスから話を聞いた。


「つまり、俺があの戦争の関係者だと、リーフ達から聞いたと…」

「は、はい!こ、この度は大変!大変なご迷惑をおかけしたしだいでえと、その…」

「とにかく落ち着けよ」


 なんか昨日よりやつれてないか?

 俺は三人の方に目を向けると、

 プイ。

 目を背けた。

 …一体、俺が寝ていた間に何していたんだよ?

「ちょっと聞き捨てならないことを言ってきたので、つい…」

 クリムさん。ついやったことで、人はここまでビクビクしませんよ?

「…やり過ぎた気もしたけど、これは必要な事。だよね?」

「は、はい!そうであります、イブ様ぁ!!!」

 イブさん。そんな主従みたいな関係を一晩で作り上げるのは、やり過ぎではございませんか?

「まったく…。ほんの少しアヤトのことについて話を聞かせただけですのに…ね?」

「!!?す、すいません!!僕はどうしようもないクズでございますぅ!」

「謝る相手が違うでしょ?」

「!??す、すいませんでしたぁ!!!」

 リーフさん。目を合わせただけで土下座させるのは、ほんの少しとは言えないのでは?

 …どうしよう。

 これからどういう仕返ししようかと一時期考えていたんだが、仕返しする相手がこんなんじゃなぁ…。

「…アヤト、これ、食べる?」

「お?それじゃあ頂くよ」

 俺はイブからもらったものをかじりながら考える。

 お♪結構美味いなこれ。

 見た目はめっちゃ黒いけど。

 俺は少し考えて、

「分かったよ。俺はお前を許すよ、ラピス」

「ほ、ほんとでございまするかぁぁぁ!!??」

 おい。驚きすぎて、変な言葉遣いになっとりますが、大丈夫か?

「ああ。何か…、うん。もう、いいかなって…」

「あ、あ、ありがとうございますぅぅぅ!!!」

 そう言って、ラピスは思いっきり頭を下げる。

「え?ルリはまだこのゴミ許さないけど?」

 あ、やべ。

 ルリのこと、考えていなかったわ。

 どうしよ?


「えっと…実は、お詫びの印といっては何ですが、デザートをお作りしたのですが…」

「え!?甘い物!??」

 ルリはものすごい勢いでラピスに近寄る。

「は、はい!これで、ございます」

 まるで、一兵士が国王に粗品を献上するかのように、ラピスはルリに渡す。

「わぁー!キラキラしててきれー!」

 確かに。

 ラピスがデザートと言ってルリに差し出したのは…、四角くて、透明な物体だ。

 それに、ちょっと揺らすだけでプルプル震えている。

 …あれ?もしかして…、

「…これってゼリーか?」

「はい、そうです」

「ゼリー!??」

 そう言って、食べていいよ、と誰も言っていないのに、ルリは我慢できなかったのか、勝手に食べてしまう。

 おい。手でつまんで食べるなよ。せめてフォーク使って食べなさいよ。

「おーいしー!!!なにこれ!!??」

 そしてそのまま皿一杯にあったゼリーは全部ルリの胃袋の中に消えていった。

 あ~あ。俺も食べたかったのに…。

「ね~ね?もっとないの?ね~?」

「あ、はい!こちらにたっぷりと」

「うわ~い!」

 そう言って、ルリはゼリーがたっぷりある皿のところに向かう。

 そこで俺が、

「待て」

 ルリの肩を掴み、動きを止める。

「何、お兄ちゃん?今、ゼリーのことで頭が一杯で…」

「それより、ラピスのこと、どうするつもりだ?」

 いつの間にか、みんなでゼリーを食べようとしているが、まだルリがラピスのことをどう思っているか聞いていない。

 まさか、ゼリーで許すとは思わないけど。

「え~っと…。そうだ!今後、ルリのために、もっとゼリーみたいな甘い物を作ってくれるならいいよ~」

「…まじかよ」

 いいのか!??

 それで許していいのか、ルリ?

 …いや、これは個人の問題。

 本人がいいと言っているのなら、それでいいか。

 俺はそうまとめながら、

「…改めてよろしく、ラピス」

「こちらこそです、アヤトさん!ところで…」

「ん?」

「あれ、どうしましょう?」

「あれ?」

 俺はラピスが指差している方向を見ると、

「ああ!?」

 みんな。ゼリーを猛烈な勢いで食べているのだ。

 おい!俺の分も!と、言おうとしたが、

「ふいー♪美味しいー♪」

「「「美味しい!!!」」」

 四人でほとんど食いつくしてしまった。

 クロミルは…、俺に乾いた笑みをくれた。

 俺は、

「…そろそろ、出発するか」

 その言葉しか出なかった。

 …ありがとう、ミナハダ!

 この町のことは、一生忘れないよ!

 悪い意味でね!!

 そして、俺達はミナハダを後にした。

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