2-2-9(第102話) 認めざるを得ない異常
数日経ち、
「お?あれじゃね?」
「あ、はい!そうです!あれがミナハダです!」
大きな湖の近くにある町が見える。
どうやらあの町が俺達の目的地のミナハダらしい。
家に引きこもり気味だった俺には縁がないと思っていたが、今はどんな町なのかを考えるだけでもワクワクするな。
俺はクロミルと牛車を引きながら、そんなことを考えていた。
そして、町に入る前に、俺はみんなを牛車から降ろし、牛車をアイテムボックスにしまう。
その時、何人か、物欲しそうな目で見られていた気がするが、気のせいだろう。
いよいよ門番前だが、俺のワクワクは、ズドーンと落ち込むことになってしまった。
それは、
「お、旅の者か?この町に入る目的を一応聞かせてもらうぞ?あと、この町に入るのなら、一人千円頂戴させてもらうよ」
「「「「「「「・・・・・・・」」」」」」」
「ん?どうしたんだ?」
「…え?いや…、はい。俺達は食料調達しにこの町に来ました、はい。あ、これが七名で七千円です」
「…はいよ。確かに受け取ったぞ。それと、これがその証だ。ちゃんと持っておいてくれよ。なくしたら、不法入国罪で捕まるからな」
なるほど。この紙みたいな物がパスポート代わりみたいなものか。
俺達はそれぞれその紙をポケットにしまう。
と同時に、俺とルリ以外の五人は門番から距離を取っていた。
「「「「「・・・・・・」」」」」
「…あの?俺に何か?」
「い、いえ!別に何も…!」
リーフ。そんなに門番をじーっと見つめちゃ駄目でしょ。
「あのさ、門番さん?」
「えっと…、何かな、小さなお嬢さん?」
「なんで門番さんは服を着ていないの?」
俺達全員が思っている事を、ルリは代弁した。
「え?何でって、これが国の新しい方針だからだよ」
「ふ~ん」
「「「「「「えっ!??」」」」」」
ルリ以外の五人はラピスを見る。
俺はその国の方針というものはよく分からないが、門番に上半身裸でいさせるような方針はしないだろう。
「ち、違うよ!?僕が決めた訳じゃないよ!??」
「そうですよ。これは最近決まった国の方針ですから」
最近決まった?
となると、ラピスは確かにこの件に関わっていなさそうだな。
「それって誰が決めたんだ?」
「誰って、国王様に決まっているじゃないですか」
すぐ俺達は門番から距離を取り、円陣を組む。
「国王って、確かこいつが言っていた父親なのか?」
「だと思います。名前は確か…」
「ダイモス=コンバール、だよ。僕のお父さん」
「…でも、これだけじゃこの町、国がおかしくなっているのか分からない」
「もしこれを正気で決めたのだとしたら、この国の住民も元々おかしくなっていたことになりますよね」
「となると、ギルドにも何かしら影響があると考えていた方が…」
「…とりあえず、あの門番、殺っちゃう?」
「「「「「「それはない!!!!!!」」」」」」
まったく、誰に似て、こんな好戦的になったんだか。
…俺じゃないよな?
「とりあえず。このまま様子見ってことでいいな?」
「「「「「はい!!!!!」」」」」
「ぶー」
「ほらルリ、すねてないで、さっさと行くぞ」
「…うん」
「…えっと、話は済みましたか?」
「あ、はい。話は済みましたよ、あはは…」
「?取り敢えず、ようこそ、ミナハダへ!」
俺達は町、ミナハダへ入っていく。
「?アヤト、何か緊張していない?」
「き、気のせいだ!そう、気のせい!」
「???」
多大な不安を持って。
今週の投稿はこれで終了します。
また、来週に投稿したいと思います。
ちなみに、コンバールは金春色から来ています。
色のイメージは、明るい緑みの鮮やかな青、だそうです。




