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色を司りし者  作者: 彩 豊
第二章 青の国の異常
100/529

2-2-7(第100話) コンバール一家

ついに100話突破しました!

多くの方に読まれて、作者冥利につきます。

これからも読んでもらえるとありがたいです。

今週はこの1話だけにしたいと思います。

今回はより一層長くなってしまったので、

来週、次話投稿する時、まとめておこうと思います。

100記念で、下におまけで短編物語を書きましたので、

是非、読んでください!

 

 青の国の国王、ダイモス=コンバールは今の女王、マリアナ=コンバールと結婚してから、小さな夢があった。

 それは、

“女の子を育てる。”

 というものである。

 そして、マリアナ=コンバールと結婚してから、王家としての責務である国務を果たしつつ、夜の営みを頑張っていた。

 結果、3つの命を授かったが、全員男であった。

 この事実にダイモス=コンバールは、マリアナ=コンバールに、

「もう一人だけ、頑張ってくれないか?」

 と、頼まれた。

 マリアナも、ダイモスの小さな夢を叶えたいと思っていたし、マリアナ自身、女の子を育てたいと思っていたので、ダイモスの言う事に従い、子作りに励んだ。

 四年後、ついに4つ目の命を授かる。

 そして、4人目が生まれたのだが、性別は男だった。

 この子と前に生まれた3人と違いがあるとするならば、生まれた時、3人より小さかったことぐらいであった。

 だが、いくら小さかったとはいえ、男であるという事実は変わらない。

 そのことに2人はがっかりしていた。

 ダイモスもマリアナも、一時期この“小さな夢”のことを忘れ、国務に没頭した。

 

 そして数年が経過し、成長の差が身長として表れていた。

 先に生まれた三人、ダイン=コンバール、イバン=コンバール、バシン=コンバールより4男であるシオン=コンバールは明らかに一回り小さかった。

 そのことを知ったダイモスとマリアナは忘れかけていた“小さな夢”を思い出す。

 それはやがて、国務にも支障がきたすほどであり、一時期、国務を他の大臣に任せ、二人だけで4男、シオンをどうするかについて、話し合った。

 結果、

「…お父様、お母様、どうでしょうか?」

「うむ!似合っているぞ」

「ええ!最高だわ!!」

 シオンに女装させることになった。

 その後から、まるでシオン=コンバールが女性であるかのような教育を始めた。

 本人には、

「王家として、学ぶべきマナーよ!」

 と言い、淑女が学ぶような礼儀作法、最低限の戦闘技術を叩きこまれた。

 他の3人が本格的に戦いの訓練をしている様子を見て、シオンは、

「兄様達はあんなに汗水流して訓練しているのに、私はいいのですか?」

 と聞いたのだが、それをマリアナは、

「大丈夫よ」

 この一言でシオンは納得し、引き続き勉学に励んだ。

 因みにシオンは自分のことを「私」と言っているのも、ダイモス、マリアナ両名の教育である。

 また、シオンは常に女装しているおかげで、周りから、

“シオンお嬢様”

 と、呼ばれるようになっていた。

 ダイン、イバン、バシンの3人はいつの間にか、シオンの事を弟ではなく、“妹”として、接するようになっていた。

 シオンはこの状況に少しずつ、不満が溜まっていった。


 さらに数年経った。

 ダイン、イバン、バシンは筋骨隆々の男らしい体となった。

 対してシオンは、同じ男とはとても呼べないほど体は細く、女々しい体形となっていた。

 そのことに対し、ダイモス、マリアナは苦い顔を浮かべていた。

 そして時おり、

「本当に女の子だったらよかったのに…」

 を、シオンだけに聞こえるようにつぶやくようになっていた。


 そして、どこで聞きつけたか、赤の国と戦争をする準備で忙しい時は、

「シオン。あなたには演説をやってもらうわ」

「演説って何のですか?」

「もちろん、戦争の士気を上げるためだ」

 ダイモスとマリアナはシオンを()()()()()として演説をしろと言ってきたのだ。

 シオン自身、戦争自体、あまり好きではなかったので、乗り気ではなかったが、そうはいかない。 赤の国と青の国は仲が悪く、いつ戦争してもおかしくない状況なので、いよいよこの時が来てしまったのか、と嘆くことしか出来ない。

 また、ダイモスは今回、赤の国にスパイを潜り込ませ、国力を低下させていたので、今がまさに攻め時だと、力説していた。

 

「つまり私はこの兵達の神輿になれ、という事なのですか、お父様、お母様?」

「うむ」

「そうです。シオン、頑張って演説して、この国をより豊かにしていきましょう」

「…分かりました、お母様、お父様。それではこれで失礼します」


 シオンは玉座を後にした。

 自室に戻る道中、シオンは頭の中に疑問が残っていた。

 それは、戦争に勝つことで、どうして国が豊かになるのか、ということである。

 確かに、赤の国の領土、人材、食料、道具を全部獲得できれば、その分だけ青の国の住人は豊かになれるだろう。

 だが、赤の国の住民はどうなるか?

 おそらく、青の国の住民に奴隷のようにこき使われ、一生を終えるだろう。

 果たしてそれで、国は豊かになれるのだろうか?

 青の国が豊かになるには、青の国に住んでいる人達が頑張るのが一番じゃないのか?

 だがそれは綺麗ごとだという事にも気づき、自分が嫌になっていった。

 そして、赤の国に向けて、多過ぎる兵が出発した。

 私はその光景をただ見守ることしか出来なかった。

 ()()の無事を願って。


 兵が出発してから数日経ち、王城に来訪者が来た。

 だが、その来訪者がとても不気味だった。

 その来訪者の服装は全身黒で、顔は青竜の仮面を被っていた。

 だが、事前にダイモスに話が通っていたのか、門番の兵からあっさりと許可がおり、王城の中に入っていった。

 

「まっていたぞ、仮面の者よ」

「はっ。陛下もご機嫌麗しゅう…」

「そんな口上はよい。それよりも、例の物は出来たのか?」

「はい。これがその魔法を記した【魔法石】でございます」

「おお!それがか!」

「…あなた?この魔法石は一体…?」

 ダイモスと仮面の者の会話が弾んでいるなか、出来るだけ空気を読もうと努めていたマリアナだったが、さすがに魔法石が気になってしまったのか、つい魔が差してしまう。

「あ!すいません!私ったら…!」

「いや、こちらこそ申し訳ない。お前に事情を話さず、話を進めてしまったな。仮面の者よ、説明してくれないか?」

「はっ。女王陛下、これはあるものを変える魔法がついに完成しましたので、その完成品を献上しようと思い、この場にはせ参じた訳でございます」

「…そのあるものとは、一体…?」

「それは…性別でございます」

「…どういうこと?」

 マリアナの頭に疑問が残る。

 ここで、ダイモスが話を続ける。

「シオンを本当の女にできる、という事だ」

このダイモスの一言で、マリアナの目の色が変わる。

「それは本当ですの!?」

「はい。この魔法をかけられた者は、男性は女性に、女性は男性に変化することは確認済みですので、大丈夫かと…」

「つまり、シオンを女にできる、という事だな?」

「もちろんでございます」

「…その魔法は今すぐ発動できるか?」

「発動に数分かかる程度でございます」

「分かった。すぐにシオンをあの部屋に呼ぼう」

 こうして、3人は動き出す。

 ダイモスとマリアナは平静を保っているようで、口元が緩んでいる。

 

 それからシオンと3人はとある部屋に集まった。

 この部屋ではかつて、様々な実験が行われていたが、今では人が立ち入ることのない、空き部屋となっている。そしてこの空き部屋は、防音完備で、この部屋で大騒ぎしても、廊下にいる者には、一切音が聞こえないという。


「お父様、お母様。私に一体何の御用なのでしょうか?それにその方は…?」

「うむ。それはな、お前を変えてくれる崇高なお方だ」

「はぁ…」

「こらシオン!ちゃんとこのお方にもきちんと挨拶なさい!」

「まぁまぁ。私は大丈夫ですから」

 シオンには何が何だか分からなかった。

 いきなりこんなところに呼び出され、名前も顔も分からない人にきちんと挨拶しろと言われ、すんなりと首を頷くことが出来なかった。

「それでは、始めますか」

「「はい!!」」

「えっと…、これから一体何を…?」

「仮面の者よ。シオンはどうすれば…?」

「あ、はい。その場を動かずにしていただければ、後は私が準備いたしますので、国王陛下、女王陛下もそのままご子息を見ているだけで大丈夫です」

「そうなのですか。シオン、動かずにじっとしていなさい!」

「は、はい…」

 シオンはこの状況に、疑問しかなかった。

 だが、自分のお父様とお母様は言いだしたらよほどのことでない限り止まらないので、仕方なく言うことを聞いた。

 そして数分経過し、

「それではいきます」

 仮面の者の発言により、場には緊張がはしる。

 そして、「………いきます!【性化(せいか)】!!」

 仮面の者が魔法を唱えた瞬間、光がシオンを包み始める。

 そして、

「…あれ?私に何が…?」

 シオンは、自分には何が起きたのか理解できなかった。

 だが、シオンを見ていた3人はシオンの変化に驚愕した。

 身長は10センチメートル程縮み、胸は膨らみ、髪も肩までだったのが、腰まで伸び、その腰も女らしくなっていたことに。

 これを見た仮面の者はニヤリと笑い、

「成功です」

 と言った。

 ダイモスとマリアナは喜び、

「お前は今日からラピス=コンバールだ!!」

 とダイモスに言われた。

 だが、シオンはまだ気づいておらず、ずっと頭をかしげていた。

 自分は、シオン=コンバールはもういないということに。

 

 シオンは、自分が男ではなく女になったと気付いたのは、自室に戻り、鏡を見た時だった。

 その時は一晩じゅう、枕を濡らし続けた。

 翌日、目の周りが赤く腫れながらも食堂に行くと、そこには、シオン、否、ラピスの顔を見ると、ニコニコしているダイモスとマリアナがいた。

「「おはよう、ラピス♪♪」」

「…お、おはようございます、お父様、お母様…」

 ラピスは自分の父親と母親の顔が見れなかった。

 つい昨日まで男だったのに、急に女になったことで、どんな顔すればいいのか分からなかったからだ。

 ラピスが何故モジモジしているのか悟ったマリアナは、

「大丈夫よ。あなたはあなただから。そのままでいいの」

 と、優しく言葉をかけていた。

 ラピスは照れながらも、

「あ、ありがとうございます、お母様」

 マリアナに礼を言い、朝食を食べ始める。

 その後、何故執事やメイド達が驚かないのかを尋ねたら、

「?シオン様は元々お嬢様だと思ったのですが?え?名前がラピス=コンバール様へと変更ですか?分かりました。すぐ、他の者にも至急伝えます」

 執事長が気を効かせて事前に連絡していたらしい。

 ラピスは名前の変更より、男から女へと変わった事に、何故驚かなかったのかが聞きたかったのだが、自分の服装を見て気付いてしまった。

 普段から女性物の服を着ていたことに。

 だから周りの者も、違和感なく接していたのだと。

 ラピスはこれで確信した。

 もう、周りからは私の事を“一人の女性”として認識されているのだと。

 始めからシオン=コンバールという男性は存在しなかったかのようだった。

 そのことにまたラピスは落ち込んでいた。

 

 だが、そう落ち込んではいられない。

 何せ、刻一刻と、青の国はとある魔法に侵され始めていたのだから。


 ラピスが異変に気付いたのは、自分が女になってから数日経過した後だ。

 ラピスはたまに、市場調査という名目で、変装して、城下町に行き、様子を見る。

 だが、自分が女になったからなのか、少し城下町の様子がおかしいことに気付く。

 明らかに、肌の露出が増えていたのだ。

 もちろん、自分が女になったから、よく女性の服に目がいくようになっただけかもしれない。

 だが、変化は女性だけでなく、男性にもあった。

 それは、上半身は何も着ていない、半裸状態で町を歩いているのだ。

 最初は、そういう男性ならではの服装もあるのかとも考えていたので、違和感がある、というだけで軽く流していた。

 だが、本当の問題は午後の時間帯にあった。

 それは、


「…あん♪あん♪あん♪」

「ほぉら。ここが、ここがいいんかぁ~?」

「いいの!しゅごくいいのー!!」


 男女の喘ぎ声だった。

 私はその声を聞いた時、自分の耳を疑った。

 何せ、今は昼時。

 みんな頑張って働いているというのに、なんて人達だ!と、顔も知らない人に怒りを感じていた。

 だが、私が何も知らないだけで、人には人それぞれ頑張って生きているんだ。

 だから、むやみに人の事情に口を挟むべきではないと思い、私はその場を後にした。

 その時、私にはやるせない気持ちでいっぱいだった。


 その後、私は一日も欠かさず、城下町の視察をしていた。

 結果、耳をすれば、あちらこちらから男女の喘ぎ声が聞こえる奇妙な城下町となっていた。

 家の中からはもちろんのこと、路地裏、店内の奥、そして、公共の場でも堂々と男女の営みをしているカップルまでいるのだ。

 それを他の者達は、そのカップルを非難するのではなく、拍手喝采をあげ、なかには、男女の営みを外で始める輩もでる始末だ。

 私はこの町に大きな不信感を覚え、王城に戻る。

 だが、私がおかしく思い始めたのはこの城下町だけではない。

 私が今住んでいる王城もおかしくなり始めていた。

 もちろん、そう思うのには訳がある。

 男女の仲になっている執事とメイドが多くなっているんだ。

 もちろん、そういうことをするほど仲がよくなるのはいいことだと思った。

 だが、そういった行為をする場所が、廊下や台所等、私達にも目がつく場所でしているのだ。

 私がたまたま行為をしている最中に、バッタリと出くわしたときは、きまずい以外の気持ちしかなく、モンモンとしながら自室に戻った。

 そして、私にとって、一番信じがたいことを目撃してしまった。

 それは、私の兄3人が長男、ダインお兄様の部屋で裸になって抱き合っていたのだ。

 すぐに私はその場を後にし、今日食べた物全てをもどしてしまう程、私には刺激が強く、その後は、ろくに目を合わせられなかった。

 そして、

「今度、ラピスも入れてみんなでしようぜ!」

「「賛成!!」」

 この言葉を聞き、意味を理会した途端、私は決意した。

 この国を出ようと。

 そう決意してから、私はすぐ行動した。

 荷物は必要最低限に、そして、私以外の人間にはばれないよう慎重に行動し、数日後、私は誰にも祝福されず、国を出た。

 その時、私は王女としてのラピス=コンバールを捨てようと誓う。

 まずは一人称を変えようと思い、歩きながら考えた結果、

「まずは私の事、“僕”って呼んでみようかな?」

 自分の呼び方を変えることから始めることにした。

 まだ見ぬ味方を求めて、放浪の旅を始める。

 自分一人だけで遠出をするのはこれが初めてなので、少しワクワクしていた。


 そして、ラピスが国を出てから一日経過し、ラピスがいないことに気付いたダイモスとマリアナはまず、執事やメイド達に王城の中をくまなく探させた。

 丸一日かけて探してもいなかったので、次は数日かけて、城下町の中を探させた。

 ラピスを除いたコンバール一家も、王城を探したのだが、それでもいなかった。

 後日、コンバール一家は食堂でラピスの今後について話し合う。

 結果、ダイモスとマリアナがどうしてもラピスの顔が見たいと言うので、長男のダインが、

「だったら、ギルドに依頼するのはどうだろう?」

 この一言で、ギルドにラピス捜索の依頼を出した。

 見つけた者には、半生、遊んで暮らせるほどの大金が報奨金として出されるので、冒険者の半分がラピス捜索に力を注ぐ。

 こうして、ラピスは知らないうちに賞金首になり、冒険者に追われる前途多難な旅が始まったのだった。

これから不定期で短編小説(異世界版ことわざ(慣用句))を載せようと思います。

今回の登場人物

ア=彩人

ル=ルリ

異世界版ことわざ(慣用句)

~触らぬ神に祟りなしについて~

ア「なぁ?」

ル「なに、お兄ちゃん?」

ア「面倒なことや厄介な人には関わり合いにならない方がいいことを何て言うんだ?」

ル「それはねー、確か、”触らぬヒュドラに祟りなし”ってクロミルお姉ちゃんから教わったよ~」

ア「…俺、触るどころか妹にしちゃったんだけど…」

ル「祟り、ないといいね~」

ア「物騒なこと言うなよ!?」


 こんな感じの短編小説です。

楽しんでもらえたら嬉しいです。

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