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無敵の正体、逆転劇

魔法の表記を変更しました。

例、雷撃アンバー→【雷撃アンバー

前話までの魔法表記は、今のところ変える予定はありません。

今回の話から適用していきます。



「ぎ、ぎゃぁぁあああぁぁぁぁ!?」


 完全に不意を突いた一撃。参戦時の不意打ちと違うのは、魔法という手段であること、そして通用したことだ。

 エアシャカールは左肩を抑え、痛みに仰け反る。


「効いた!?」


 エプロムートが驚愕に目を見開く。

 俺も少し驚いている。こんな簡単な仕掛けだったなんて……


「どういうことなんだ?ロジャー。」


「……あいつが曲げることが出来るのは、鉄だけなんだ。自分を中心に、鉄だけを弾く力場を発生させている。」


 そう、銃撃を曲げて見せたことから、すっかり騙されていた。遠距離攻撃もまた、通用しないと。

 だがそれこそが奴のペテン……というよりこちらが勝手に引っかかっただけのことだった。


 魔法剣はあくまで剣に魔法を纏わせているだけで、剣自体を変容させている訳ではない。鉄のままだ。

 銃弾も鉄製だ。火薬で弾を弾きだすという構造上、鉄以外では威力は出ない。

 鉄しか曲げられない魔法を、余裕の態度でさも万能のように見せていただけ。


 エアシャカールがそれだけの余裕を見せていたのは、こちらの戦力を把握していたというのもあるだろう。こちらが剣士と、魔法剣の使い手と、銃士しかいないと分かっていた。

 物理耐性の高い黒ゴーレムを傍に置いてのもその証拠だ。

 何故それを知っていたかは、考えるまでも無い。ブリッジに来るまでの道中、何度も襲われた。部下である魔族に命じたのは鎮圧では無く、偵察だったという事だ。

 周囲に張り巡らされた黄色い鉄パイプは、恐らく伝声管だ。このブリッジでなら、鯨の内部から幾らでも情報を受け取れる。


 俺たちが体制を整えて魔族やゴーレムを撃退したように、エアシャカールもまたこちらを待ち伏せたのだ。


「お前が見せていた、余裕の演技。それがお前の一番厄介な戦術だった。」


 魔法を受けた痛みから、ようやく我に返ったエアシャカールが再び不敵に笑う。


「ふ、ふ、ふ……演技では無かったですよ……元々こういう性格だったということです……」


「それは……イイ性格してんな!【聖光クリスタ】!」


 再び掌に光を生み出し、撃ちだす。魔法を撃つのに魔法はいらない。魔力を扱える人間……もとい、魔物であれば、誰であろうと飛ばす事が出来る。

 というより、魔力を扱うその技術こそが、一般的に魔道士の才能と呼ばれるものだった。


 聖なる光は白魔道士がよく使用する攻撃魔法だ。回復魔法に近い感覚で習得出来るからだ。

 回復魔法しか扱えないという事になっている俺だが、これならば左程疑問は持たれない筈だ。さっき付与剣を使った気がするが……それは後で誤魔化そう。

 

 聖なる光は真っ直ぐ飛んで行き……


「【魔法盾シルディア】!」


 エアシャカールが展開した魔法盾まほうじゅんによって弾かれた。


「ふ、ふふふ……ですが気付くのが遅れましたね……正面さえ守っていれば怖くはありません。」


「ちっ……」


 俺の左足は今、氷針によって床に縫いつけられている。移動することは出来ない。


「【聖光クリスタ】!【聖光クリスタ】!」


 連打するが、相手は即座に魔法盾を展開して、防いでしまう。俺は発生させた魔法を周囲の空間に浮かせて維持するような器用なことは出来ない。

 このままでは、こちらがジリ貧だ。


 エアシャカールの反撃を盾で防ぎながら、エプロムートが振り向く。


「……ロジャー。俺は魔法を飛ばす事が不得意だ。」


「分かっている。だから俺が……」


「ならば、少し我慢していてくれ!【火炎ガネット】!」


 エプロムートは剣を捨て、右掌に炎を発生させる。そしてその炎を……


 俺の左足に押し付けた。


「ぐ、ぐああぁぁぁぁ!?」


 炎はブーツごと俺の足を焼く。初めて感じる耐えがたい痛みが神経を駆け廻り、自分の肉を焼く嫌な臭いが鼻腔を刺激する。体中から、油汗が噴き出した。

 煙が少し出るほど焼いた後、エプロムートは掌から炎を消した。


「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……」


 足がふらつく。眩暈で一瞬気が遠くなるが、戦闘中だと自分に言い聞かせ踏みとどまる。

 突然の行為に俺は思わずエプロムートに怒鳴った。


「何を、しやが……っ!そういう事か!」


 冷静さを失い、エプロムートに掴みかかってしまいそうにすらなったが、すぐに魔法剣士の狙いに気付く。

 炎は俺の足を焼いたが、同時に氷も溶かした。

 俺は火傷とブーツの焼失と引き換えに、再び自由を得た。

 これならば……!そう俺が思った時、


「……時間を稼いでくれ。」


 エプロムートが囁く。

 何をする気だ?エプロムートは魔法を打ち出すことは不得意だ。縫い付けから解放されたならば、俺が機動しながら魔法砲台になったほうがいいはずだが……

 エプロムートと目が合う。真剣な青眼の眼差し。

 ……冗談で無いのならば、答えは決まっている。


「後悔は、させてくれるなよ……?」


「……ああ、期待にこたえよう。」


 どうする気かは知らない。だが俺は世界が変わったとしても変わらない。



 仲間は、信じる!



「よっしゃあ!」


 俺は足に軽く回復魔法を掛けながら、盾の後ろから勢いよく飛び出す。


「【聖光クリスタ】!」


 指で銃の形を真似ながら、光弾をエアシャカール目がけて打ち出した。

 突然飛び出した俺の動きについていけず、魔法盾を発動し損ねて聖光魔法を胸に受ける。


「がっ!!」


「はっ!ざまぁ見やがれ!」


 再び魔法が通じたため、俺は思わず喝采をあげた。

 今度はエアシャカールが俺の煽りに顔を歪める。


「魔族将軍であるワタクシを、こうまで傷つけるなど……余程八つ裂きにされたいのでしょうかぁ!?」


「化けの皮が剥がれ始めたな、閑職・・!」


「!!」


 何故俺が前の世界でこいつの姿を見なかったのか?それは単純な話、戦場には出て来なかったからである。

 魔族にとって戦場で戦果を上げることは誉れだ。強力な我を持つ種族故、その傾向は人間よりも強い。

 よって強大な力を振るい、地位の高い魔族ほど前線に出てくる。にもかかわらずコイツが俺の世界で出番が無かったのか?それはエアシャカール自身が目立った戦果を上げられなかったからだろう。

 鉄偏向・・・の魔法も、対人を前提とした魔法戦法も、一騎討ちや少数人数を相手にした戦い等では強いかもしれないが……大魔法を連発して人間軍を蹂躙する他の魔族将軍と比較すれば影が薄くなってしまう。


 強力に思えた空飛ぶ鯨も、夜で無ければ簡単に発見されてしまうし、空襲には大量のゴーレムが必要となり、作戦ごとのコストが高い。

 今回の空襲で鯨が複数いないという事は、あまり数を用意出来ないという事だ。事実、他の戦場では影も形も無い。

 つまり落とされれば大損害。迂闊に戦場には出せない存在なのだろう。


 魔族将軍同士でのパワーバランスは保っていたとしても、戦場での評判が伴わなかった。だからあまり出番のない爆撃空鯨の艦長に就任させられたのだろう。

 つまり閑職に追いやられた、窓際魔族将軍・・・・・・というわけだ。


「キ、貴様……!」


「余裕を持てよ、エアシャカール様よぉ!」


 煽られ、俺に釘付けになるエアシャカール。

 魔法盾で攻撃を防ぐ体勢を捨て、最初の戦法に立ち変えた。


「【連鎖氷結アメジセン】!」


 魔法を詠唱し、周囲に氷塊を展開する。


「【針加工アンタレス】!【針加工アンタレス】!【針加工アンタレス】!」


 氷を針に変え、次々と打ち出してくる。俺は避け、弾き、一部を致命傷では無い部位で受ける。

 猛攻だ。魔法で反撃する隙も無い。だがおかげで奴の視線は俺にしか向いていない。


 さあ、頼むぜ!おっさん!



 ◇ ◇ ◇



「よっしゃあ!」


 動けるようになったロジャーは、俺の背後から躍り出た。聖光魔法を放って、わざと相手を煽りたてる。


 俺の提案は、不可思議に思えたはずだ。

 回復魔法を収めているが故に扱える聖光魔法だけとはいえ、魔法による遠隔攻撃手段を持つロジャーをただの盾持ちの戦士と化した俺がサポートするのが普通の戦術だ。


 だが奴は俺を信じた。

 ……不思議な奴だ。まだ会ってから半月も経っていないというのに、もう随分と一緒に戦ってきたように感じられる。

 だが、悪くは無い。

 信頼には、答えなきゃな。


「……【雷撃アンバー】。」


 右手に雷を生み出す。だが俺は魔力を遠くに打ち出すことは苦手だ。だからこそ魔法剣士になったわけだからな。

 だけど覚えている魔法の量は、そこいらの野良魔道士とは一線を隔している自信がある。


「【変化メタモセ】、【棒加工ケイン】。」


 雷の質を変化させ、棒状に変える。俺は雷を【握り】、構える。

 剣というには、不格好だが、支障はない。



 純粋な、魔法のみの魔法剣。



 俺の事を無害だと思いこみ、完全に注意を外している魔族の横っ面を見る。


 ――今までよくもイラつかせてくれたな。


 妹と、義弟と、姪の顔を思い浮かべる。


 ――怖い思いをさせたな。


 最後に、俺を信頼し、命を賭けてくれた仲間を見る。


 ――お前の信頼、最高の形で返す!


 溜め、駆け、振り上げる。


 魔族将軍が気付いたところでもう遅い。

 後はもう……振り下ろすだけ。




雷撃魔法剣抜身ブリッツクリークナックト!!」





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