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名前がすべてを決めるこの世界  作者: たらたらこ
プロローグ 1 幼き少年の憧れ
1/12

遠き過去の日

週三投稿目指して頑張ります。

あと、次から一気に量が増えますので、ぜひ二話以降も見てくださるとうれしいです。

君に恋した。空を自由に駆けて闘う君に。

空はだんだんと暗くなっていく。目の前で優雅に飛びあう二者の存在を強調するかのように。

対立を煽るかのように。


君に憧れた。流れるように青紫と深紅の魔力弾を練り上げて放つ君に。

黒に少しだけ赤が差し込んだ黄昏に、弾幕が濃密な壁となってはじける。跳ね上がる。


君に見惚れたんだ。僕は。

君と一緒に空を駆けることが一生の憧憬となってしまうほどに。


君は聖騎士だ。今も昔も。

だから、僕も聖騎士になりたかった。けれど、聖騎士は世襲制だ。


いや、そんなことは関係が無かっただろう。この時の僕には。

全てを受け入れて乗り越える覚悟があった。努力を聖騎士なるためだけに注ぎ込む覚悟があった。

この理不尽な『名前』が全てを決める世界で。


『真名』はたったの一文節だけだったけれど、僕は努力をし続けた。

ひたすらに、愚直に。


――――ただ、だけど。僕は君の隣には立つことを許されない。


『星の二つ名』を与えられた僕には。与えられてしまった僕には。


努力も才能も時間も与えられた『星の二つ名』の力の前には霞んで見えた。

つまり、努力も才能も時間も水泡に帰した、一つ残らず。

そして、それらはただ、憧憬を失った莫大な力として残った。


――――つまり、僕は力を持て余すことになった。


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