遠き過去の日
週三投稿目指して頑張ります。
あと、次から一気に量が増えますので、ぜひ二話以降も見てくださるとうれしいです。
君に恋した。空を自由に駆けて闘う君に。
空はだんだんと暗くなっていく。目の前で優雅に飛びあう二者の存在を強調するかのように。
対立を煽るかのように。
君に憧れた。流れるように青紫と深紅の魔力弾を練り上げて放つ君に。
黒に少しだけ赤が差し込んだ黄昏に、弾幕が濃密な壁となってはじける。跳ね上がる。
君に見惚れたんだ。僕は。
君と一緒に空を駆けることが一生の憧憬となってしまうほどに。
君は聖騎士だ。今も昔も。
だから、僕も聖騎士になりたかった。けれど、聖騎士は世襲制だ。
いや、そんなことは関係が無かっただろう。この時の僕には。
全てを受け入れて乗り越える覚悟があった。努力を聖騎士なるためだけに注ぎ込む覚悟があった。
この理不尽な『名前』が全てを決める世界で。
『真名』はたったの一文節だけだったけれど、僕は努力をし続けた。
ひたすらに、愚直に。
――――ただ、だけど。僕は君の隣には立つことを許されない。
『星の二つ名』を与えられた僕には。与えられてしまった僕には。
努力も才能も時間も与えられた『星の二つ名』の力の前には霞んで見えた。
つまり、努力も才能も時間も水泡に帰した、一つ残らず。
そして、それらはただ、憧憬を失った莫大な力として残った。
――――つまり、僕は力を持て余すことになった。




