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吸血少女は男に戻りたい!  作者: 秋野 錦
第1章 吸血幼女篇
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第8話 新しく出来るようになったこと

 かちゃかちゃと食器とフォークがぶつかる音が食堂に響く。

 そろそろ日が暮れ始める時間帯。私は両親が経営している定食屋で晩御飯を一緒に食べているところだ。ちょっと時間的に早いけど、お客さんが帰るのを待っていたら日が変わっちゃうからね。

 こうやって休憩時間に両親と一緒にご飯を食べるのが日課になってる。でも、このフォークとナイフってどうにも慣れないんだよねー。あー、箸が欲しい。


「ルナ、口元汚れてるぞ」


 あらやだ。注意されてしまいましたわ。

 父親であるダレンは結構こういうマナーにうるさい。

 ナプキンでふきふき……うん、これでいいかな。


「ルナちゃんはまだ子供だからね。仕方ないよ」


 すでに拭いたというのに、ティナが隣から再び口をナプキンで(ぬぐ)ってくる。子供扱いするなー!


「はい、出来ましたよ。ルナちゃん」


 にこにこと笑顔のティナは私を世話するのが楽しくて仕方がない様子。始めての子供だし、構いたくなるんだろうけど……もう少しこっちの気持ちも考えてね?


「……そういえばルナ、お前好きな食べ物とかあるのか? 一度も言われたことがないが、あれば作るぞ。幸いここは飯屋だ。大抵のものは作ってやれる」


 そうそう! これだよ。これこれ!

 ティナもお父様くらい気の効く性格になれば心の中でもお母様呼びしてあげるってのに。まあ、所謂(いわゆる)これが越えられない壁ってやつだね。


「んー、そうですね。お魚は結構好きですよ。お肉も好きですけど、私には少し量が多いので」


「ルナちゃん小食だもんね」


「魚か。分かった。また仕入れておく」


 こういう小さい気遣いが出来る男って良いよね。

 いや、女性的観点ではなく憧れる的な意味でね? 私、男だし。

 けど……正直、こっちの料理って美味しくない。だから好きな料理も挙げられないんだよね。どうも口に合わないというか、何なんだろう。調味料が合わないのかな?


「ご馳走様」


「ん? もういいのか?」


「はい。もうお腹一杯なので」


「そうか。食器は置いておいて良いぞ。残したのは俺が食べる」


 うん。お父様は今日も優しい。ぶっきらぼうな口調でよく誤解されがちだけど、根は凄く優しい人なんだ。

 これは日頃の感謝も込めて、お礼を言わなくちゃ。


「ありがとうございます、お父様」


 にこっ!

 出来るだけ可愛らしい顔を意識して作る。


「お、おう……」


 ふふっ、珍しくお父様が狼狽してる。

 そうでしょうそうでしょう。このただでさえ可愛らしい娘が更に可愛らしく微笑んでくれたとあれば、頬が赤くなるのも仕方がないというもの。

 隣で何かティナが「私にも何か言ってよ」的なことを言っているが無視。

 アンタはいつもべたべたしてるじゃないか。贅沢言うんじゃありません。


 それから私は歩いて定食屋の隣に建てられた実家に戻る。これからは一人の時間だ。定食屋ってのは結構忙しくて両親はなかなか私に構っている余裕がないみたい。

 別に今更構ってちゃんになるほど寂しいわけでもないが、二人はちょっと申し訳なく思ってるらしい。

 私はむしろ一人の時間が少ないほうが嫌なんだけどね。

 もともと引きこもりだし。

 とはいえ暇なのは事実なんだよなー。太陽が出てないから耐性も上げられないし、何しようか。とりあえず今の状態を見てみようかな。


【ルナ・レストン 吸血鬼

 女 3歳

 LV1

 体力:27/27

 魔力:5036/5036

 筋力:12

 敏捷:25

 物防:26

 魔耐:17

 犯罪値:127

 スキル:『鑑定(65)』『システムアシスト』『陽光』『柔肌』『苦痛耐性(67)』】


 鑑定の熟練度があれから更に二段階上がってステータスと熟練度が把握できるようになりました。

 ……うん。色々言いたいことがあるのは分かる。

 私も新しく項目が増えたときには突っ込んだもん。

 その中でも特に違和感強いのはお前だ、魔力!

 お前には足並みを揃えようっていう気はねーのかよ!? 見ろ、他の二桁の子なんて全員涙目じゃねーか!

 MPゲージだけ天元突破してやがる。なんつー見にくいステータス画面だ。


 他にもさ、犯罪値って何やねん。地味に数値高いのが怖いんですけど。

 多分、これがあの女神の言っていた『贖罪』うんぬんのことなんじゃないかと予想はしているけど……ぶっちゃけ、どうやればどう数値が変動すんのかさっぱり分からん。試しに前にティナの皿洗いとか手伝ったけど全く変わらなかった。むしろ、ティナが感動のあまり皿を落としまくって申し訳なかった。


 まあ、あんまり考えすぎても仕方ない。

 分からないことは分からないまま進むしかないね。

 私、取り説とか読まない主義だし。特に問題ない。

 気楽に行こうぜ!


 後はまあ……そうだ。熟練度だ。

 ぜひ欲しかった機能の熟練度の数値化。これがついに実装されましたよ。スキルの後にある括弧内の数値がそれだね。どうやら100が上限らしく、括弧がついていない他のスキルはカンストしていたので表記から外してみた。

 この鑑定の使い方もかなり慣れてきた。

 自分なりに見やすいようにいくらでもカスタムすることができるという便利さ。多分、こういう風に見えているのもネトゲやってた影響だろうね。もし他の人が使えたとすればまた別の見え方がするんだろう。

 とりあえず今の目標は苦痛耐性をMAXまで上げること。

 これで太陽光を浴びても悲鳴を上げることがなくなるからね。

 後はステータスを強化するぐらい?

 というのもこのステータス、日によって数値が違うのだ。

 そこまで大きく変わらないけど、少しずつ伸びてきている。多分日々成長しているからだと思う。お父様が平均200くらい、ティナが平均80くらい。お父様は元冒険者らしく、結構高いステータスになっていた。

 多分、人族の平均としては100くらいがいいところなんじゃないかな。

 お客さんを適当に鑑定してみても、そのくらいだったし。


 そう考えると私のステータスが低すぎるんだよねー。まあ、三歳児だし腕力とか脚力とか低いのは仕方ないけど。

 しかし……ほんとなんで魔力だけあんなに高いんだろう。

 もしかして吸血鬼補正?

 だとしたら嬉しいな。

 全く魔法が使えない今の状況じゃ意味ないけど。どうせなら他のステータス補正であって欲しかったよ……はあ……。

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