第6話 バレなきゃあ吸血鬼じゃねえんだぜ
おうふ、きっつい。
【絹の服】
【木製の椅子】
【木製のベッド】
【布のシーツ】
あ、頭割れそう……けどもういっちょ!
【ガラスの窓】
【木製の窓枠】
【布のカーテン】
【木製の机】
はあ……はあ……もう、駄目……。
え? 死にそうな顔して何をやってるかって?
鑑定の熟練度上げだよ馬鹿やろう!
それ以外の何に見えるってんだ!
《スキル『鑑定』の熟練度が一定基準を超えました。新たな項目を追加します》
よしっ! 来た! ついに来た!
三日三晩鑑定し続けた甲斐があったぜい!
勿論、焦らず行こうといった次の日から無茶な熟練度上げを続けているのには理由がある。
私の母親であるティナ・レストンの種族が人族だったのだ。
これはつまり私と母親は別の種族であるということを意味している。後で父親のほうも鑑定したのだがこれも人族だった。
ちなみに名前はダレン・レストン。てめえ、吸血鬼っぽい名前してんだから吸血鬼であれよ! そしたらハーフの可能性が残ったのに!
とまあ、一通り逆ギレしたのをよく覚えている。
苗字が一致しているし、二人が私の両親であることは疑いようがない。
ないんだけど……そしたら何で私は吸血鬼なんだよっていうね。疑問が残っちゃうわけですよ。
とりあえず私の種族が吸血鬼ってバレたら何かヤバそうなのでこれは隠す方針で行く。もうすでにバレてる可能性もあるけど一応ね。
吸血鬼がこの世界でどのように扱われているか分からない以上、慎重になるにこしたことはない。
折角貰った命を無駄に散らすようなことにはしたくないし。
そういう流れで鑑定の熟練度を上げることにしたんだけど……
いやね。言いたいことは分かる。
それ何の意味があんの? っていうね。
うん。私も聞きたい。これ何の意味があんの?
だって仕方ないじゃん! 他に出来ることなんてないんだから! 今は圧倒的に情報が不足してるんだし、唯一の情報源である鑑定に頼って何が悪い!?
ふう、ふう……駄目だ。焦りで完全に情緒不安定になってるわこれ。
早いところ何とかしないと。
まずは、さっき新しい項目が開放された鑑定を試そう。
とりあえず自分を鑑定。
【名前:ルナ・レストン
年齢:0歳
性別:女
種族:吸血鬼
スキル:『鑑定』『システムアシスト』『陽光』『柔肌』『苦痛耐性』】
ん、んん!? すげえ! ついにスキルが読み取れるようになった!
しかも私5つもスキルあるじゃん! すげー!
これが一般的に多いのか少ないのか分からないけどすげー!
でも効果が分からない……。
あ、このスキル自体は鑑定できないのかな。
何かこう、頭の中に浮かんでる映像的なイメージなんだけど……出来る?
【鑑定:認識下にある対象の情報を入手する】
出来た!
なるほど、認識下だから実際に見えている必要はないのか。
ふむふむ。かなり使い方も分かってきたぞ。
熟練度の表記はされてないけど、これでずっと使いやすくなった。
んじゃ他のスキルも鑑定してみますか。
【システムアシスト:システムアシストを受けられるようになる】
いや、そんなもん字面から判断できるわい。
鉄板って何ですかって問いに鉄の板ですって答えるような不親切さだろ、それ。こっちはその本質を聞いとるんじゃい。
まあいい。多分だけど、ヘレナさんの声が聞こえてきたりすんのがそれでしょ。普通に考えておかしいもんな、あれ。日本語で聞こえてるし、この世界の人間が標準装備しているようなスキルではない気がする。
うん。そういうことにしておこう。
次だ次。
【陽光:太陽の光を浴びると継続ダメージ、筋力値・敏捷性・物理防御・魔法耐性ステータス減少の効果を得る】
まさかのデバフっ!?
いや、陽光って単語から予想はしてたけどさあ!
くう……これもうスキルってかただの弱点じゃん。
まあいい。吸血鬼の宿命として受け入れよう。
次だ次。
【柔肌:火系統魔法、水系統魔法、光系統魔法による被ダメージが増加】
まさかのデバフ二連続っ!?
ぐはっ、こ、これは酷いッ!
まさかとは思ってたけど吸血鬼ってハズレ種族なんじゃね? いや、もうスキルだけならどう見てもハズレだよね、これ。
何だろう、なんていうかこう……泣きたい。
ぐすっ……もういい。よしとしよう。このスキルを鑑定したおかげでステータスと魔法の存在は確認できたんだからよしとしよう。よしとしなけりゃやってられん。
次だ次。
【苦痛耐性:苦痛に対する抵抗が上昇】
ほっ、良かった。
こっちは普通に使えるスキルっぽいぞ。
これでまたデバフだったらどうしようかと……ん? そういやこのスキルって確か前にヘレナさんの声で言ってたやつじゃないか?
確か太陽光を受けてるときに入手したスキルだったはず。
となるとスキルは後からでも入手できるってことか?
おお! それなら希望出てきた!
今はデバフばっかりでも何とかなるかも!
よし……よし。これはいける。いける気しかしないぜ!
でもこのデバフのせいで吸血鬼バレする可能性があるんだよなー。というかそもそもの話、他の誰かに鑑定されたら一発で吸血鬼バレするんだよなー。
うーん……これ、詰んでね?
いやいや、何か道は残されているはず!
何か……使えるものはないのか!?
鑑定、システムアシスト、陽光、柔肌、苦痛耐性。俺が持っているのはこの5つのスキルだけ。この中で使えそうといったら……苦痛耐性?
あっ……もしかしてこの手ならいけるんじゃね?