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吸血少女は男に戻りたい!  作者: 秋野 錦
第2章 迷宮攻略篇

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第47話 制空権の確保は戦術の基本

 やあやあ、皆さんごきげんよう。ルナ・レストンだよー。

 最近、男に戻りたいとか考えてる暇もないルナ・レストンだよー。

 忘れた訳じゃないんだけどね。とりあえず現状を考えるに後回しにするしかない。全く、世の中と言うものはなかなか思い通りにいかないものだね。


 それはそうと、今回私はとあるブツを用意してみたんだ。

 聞いてくれ。

 それは……


「ちゃらちゃらっちゃらーん! 石ナイフ~!」


 そこらへんの石に闇魔術を使って加工した簡易ナイフ。

 うん。作ってみたはいいんだけどさ……これ、使えないわ。

 まず持ちにくいし、切れ味も最悪に近い。布一枚隔てただけでもう鈍器と大差なくなってるからね、これ。勢いつけてぶっ刺せばそれなりに痛そうではあるんだけど。


「うーん……そんな簡単に使える武器なんて作れないか」


 参った。石ナイフ製作にかかりきりだったせいで、丸一日を無駄にしてしまったよ。ちょっとお腹も空いてきたし……何かいないか探してみますか。

 一応、置いていくのも勿体ないので石ナイフも持っていく。何に使えるかは分からないけどね。


 周囲をきょろきょろと見渡しながら歩き回る。

 この辺のエリアはずっと前から変わらずほとんど一本道だ。少なくとも迷うことがない分、少しだけ安心できる。いや、今まさに迷ってる状態なんだけどね? でも知ってる場所に帰れるっていうのはかなり精神的に楽だ。あるとないとでは大違い。


(うーん、ウサギとかいれば最高なんだけどな……さすがに洞窟の中にウサギはいないか)


 洞窟内にいる生き物といえば、まず節足動物が挙げられる。

 昆虫やら、ゲジとかムカデみたいな多足類がそれだね。蜘蛛もここに入る。だけど流石にこいつらを食う気にはなれない。なんか変な病気とか持ってそうだし。

 となると狙うのは蛇や小鳥、魚なんかの比較的まともな食材になるんだけど、これがなかなか見つからない。というか魔物の姿すらあんまり見ない。深層付近は生き物があんまり生息していないのかもしれない。土蜘蛛みたいな化け物もいるしね。私にとってはかなりまずい状況だ。


「…………っ!」


 なんてことを考えていると、ついに私は獲物を発見した。

 壁際のちょっとした段差に止まっている鳥の姿。どこか白っぽい羽は見たことのない種類の鳥だった。

 というわけで早速鑑定。


【ヒエラクス LV7

 体力:100/100

 魔力:400/400

 筋力:50

 敏捷:200

 物防:30

 魔耐:200

 スキル:『鷹の目』『風適性』『操魔法』】


 ヒエラクス……まーた覚えにくい名前だよ。

 というか『鷹の目』? こいつ、鷹なのか? 羽とか白だし鷹っぽくはないけど、スキルが鷹というのだからきっと鷹なんだろう。


 よし、私は今からこいつを白鷹と呼ぼう。

 ステータスもそれほど高くないし、かなり手ごろな敵だ。今晩のご飯確定だね。今が夜かどうかは分からないけど。

 そっと白鷹に近寄ろうと一歩踏む出す、その時だ。

 バサァッ! と勢い良く白鷹が宙に向け舞い上がった。

 というか……なんだあの速度っ!?


「ぐっ……」


 速い。速すぎる。

 目で追うことすら難しい速度だ。

 遥か高くに見える天井付近まで飛び上がった白鷹は、そのまま重力に引かれるかのように反転。私の頭上めがけて降下を開始した。


「────ッ!」


 私はほとんど反射的に地面に転がるようにして回避行動を取っていた。そして……ドゴォォッ! と私が立っていた地面が唐突に抉られていく。

 白鷹は地面すれすれを飛行しており、そのままもう一度空へ。


 あいつ……またやるつもりだ。

 地面を抉ったのは恐らく白鷹自身ではなく、白鷹が纏っていた風圧……つまり操魔法で作り上げた空気の砲弾だ。自分の周囲の風をコントロールし、爆発的な速度も生み出しているんだろう。

 風魔法使いの鷹……なるほど。"魔物"というに相応しい性能じゃないか。

 きっと奴はあの特攻じみた操魔法を私に当てるまで続けるつもりなんだろう。    

 奴自身の速度が速すぎて私では全く追いつける気がしないし……これはまたしてもピンチってやつかな?


「ぐっ……またかっ!!」


 再度降下を開始する白鷹。

 最早流星のような勢いのそれを私は横っ飛びで回避する。

 だが……


「なっ……!?」


 私の動きを読んでいたのか、白鷹は空中でくいっ、と軌道を変え微調整してきやがったのだ。先ほどより更に近く、ほとんど真横に空気の砲弾が着弾する。

 衝撃に吹き飛ばされながら、地面を舐めるように転がっていく。

 幾つもの擦り傷を作りながらもとりあえず直撃しなかったことにほっと胸を撫で下ろす。もしも今の一撃が私の体に直撃していたら……多分、腐り落ちたトマトみたいにぐちゃぐちゃにされていたことだろう。


「……まーた、このパターンなわけね」


 すぅっ、と空中に再び舞い上がる白鷹。

 どうやら本当にずっとこの攻撃を繰り返すつもりらしい。

 ポ○モンで言うところの空を飛ぶ攻撃をこちらのターンなしに連発しているようなもんだ。手も足も出ない。


「ふう……落ち着け」


 こういう危機的状況でこそ、冷静な思考が肝要だ。

 まずは冷静になれ。

 そして、考えろ。


 まず走って逃げても白鷹のあの速度からは逃げ切れない。後ろから吹っ飛ばされるのがオチだ。なら一か八かでカウンターの闇魔術を狙うか? ……いや、奴の魔法抵抗とこっちの魔法抵抗を考えるに押し負けるのは多分私だ。


(くっ……もう時間がないッ!)


 有力な対抗策が見つからないまま、白鷹は次なる攻撃準備に入る。

 遥か頭上からこちらを見下ろす白鷹の眼光はどこまでも赤く、不気味に私を捉え続けていた。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 敏捷1700あった蜘蛛の攻撃を殆んどかわしてた事を思えば、今更敏捷200程度に何を驚くのか、と思ってしまう。 多少魔法と組み合わせて速くなったって、たかが知れてるような?
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