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吸血少女は男に戻りたい!  作者: 秋野 錦
第1章 吸血幼女篇

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第21話 ロリっ娘ツンデレハーフエルフとか属性詰め込みすぎでしょ

「おい、その子、まさか……」


「おっと慌てるなよダレン。こいつは長耳族(エルフ)じゃねえ。ハーフエルフっつー、全く別の種族だ」


「ハーフエルフ……? 確かに言われてみればそこまで長い耳じゃない?」


 私は実際の長耳族を見たことがないから判断できないけど、お父様から見ればアリスの耳は長耳族ほど長いものではないらしい。


「はっ、これだから人族は駄目ね。すぐに見た目で人を判断しようとする」


 そして、そんな不躾とも取れる私達の視線にアリスは髪を巻き上げながら、胸を仰け反ってそう言った。


「私はハーフエルフのアリス・フィッシャーよ。マフィが言うから仕方なく来てやったってのに、もう少し友好的な対応取れないの? ふん。やっぱり人族は愚かね!」


「おめえも半分人族だがな」


「うるさいわよマフィ。私は長耳族の血が濃いハーフエルフなの!」


 それはハーフじゃなくてクォーターとか言うのでは? と思ったけど言葉には出さない。なんだかめんどくさそうな性格みたいだし、あんまり話したくないな。

 っと、そうだ。一応、本当にハーフエルフなのか鑑定してみよう。


【アリス・フィッシャー ハーフエルフ

 女 6歳

 LV1

 体力:75/75

 魔力:620/620

 筋力:62

 敏捷:56

 物防:49

 魔耐:218

 犯罪値:88

 スキル:『知能』『器用』『魔導』『魔術師』『魔力感知』『魔力操作』『魔力制御』『火適性』『水適性』『土適性』『光適性』】


 ふぁっ!?

 な、なんじゃこのスキルの数は!? チート!? チートなのか!?


【魔導:魔法の扱いが上手くなる】

【魔術師:魔力ステータスの成長値に補正】

【魔力制御:魔力を制御する】

【火適性:火系統魔法への適性が上昇】

【水適性:水系統魔法への適性が上昇】

【土適性:土系統魔法への適性が上昇】

【光適性:光系統魔法への適性が上昇】


 私の知らないスキルがこんなに……『魔導』と『魔術師』は熟練度の表記がないし、多分長耳族の種族スキルだ。その上、人族の種族スキルである『知能』と『器用』も持っているというまさに良いとこ取り。

 ハーフすげー。私もハーフヴァンパイアが良かったよ。そんなのがいるかは分からないけど。

 後は……うん。全部魔法に関するスキルっぽい。流石は半分とはいえエルフ。魔法に関しては何でもござれって感じ。


「さあ、アリス。お前ならこのチビが潜在的に持ってる魔力量見えるだろ? だいたいどんなもんか教えてくれ」


「あのね。魔力見えるって言ってもそんな簡単じゃないのよ? ちょっと時間かかるし、めんどくさいわ」


「時間かけていいから頼む」


「めんどくさいのだけど?」


「後でおやつ買ってやるから頼む」


「……し、しょうがないわね。言っておくけど高いやつよ? それ以外は認めないから」


 おやつの辺りで耳がぴくぴくしてたけど、期待してたのかな? 言葉に反して分かりやすい耳だね。アリスと話す時は目よりも耳を見たほうが感情が分かりやすいかもしれない。

 耳は口ほどに物を言うってね。


「ほら、じっとしなさい」


 と、思ったらずいっ! と私に覆いかぶさるようにアリスが近づいてきた。

 女の子らしい甘い香りが鼻腔をくすぐる。というかこんな近くじゃないと判定できないの、ねえ?


「……ふーん。とりあえず色は黒ね。無色じゃないだけ才能はあるわよ、こいつ」


「ほう。それで肝心の魔力量のほうはどうだ?」


「もう少し待って」


 じっ、と私の瞳を覗き込むアリス。そこから見て分かるの? ふーむ。というか目を合わせている関係上、私もアリスの瞳を見ているわけなんだけど、なんだか靄みたいな塊が見えてきた気がする。

 瞳の奥、って言うのかな? 瑠璃色の向こうに別の色が見える。

 うーん。なんだかごちゃごちゃしてて良く見えない。赤色にも見えるし、水色にも見えるし、白色にも見える。まるで角度を変えたら全然別の模様が見える万華鏡を覗き込んでいるみたいだ。


「……なに、これ」


 私がアリスの瞳に集中していると、ぽつりとその小さな口から声が漏れた。


「何か分かったのか? アリス」


「いえ……分からない。分からないぐらい魔力が多いのよ、この子。今までこんなこと一度もなかったのに……少なくともマフィの10倍はあるのは確かね」


「10倍だと? おい、それマジで言ってんのかアリス」


「こんなことで嘘言っても仕方ないでしょう」


 というか今気付いたんだけど、魔力量測るってつまり魔力ステータスの数値を見るってことでしょ?

 一般人は大体200。

 私は5056。

 ……うん。あんまり知られないほうが良かったんじゃないかな。これ。


「「…………」」


 案の定、皆黙りこくって深刻な空気が流れちゃった。


「……信じてもらえたか。マフィ」


「ああ……だが、これだけの魔力を完全に制御するのは大変だぞ。少なくとも一週間や二週間じゃ無理だ。数年かけて教え込めばなんとかってところか」


 え?

 そ、そんなにかかるの?

 私、てっきり長くても半年くらいかなーって思ってたんだけど。


「……それでも頼みたい。俺にはお前しか頼れる奴がいないんだ」


「つってもよ。俺は教えるのが上手い訳じゃねえし、本職の教師に頼んだらどうだ? 仲介ぐらいはしてやるぞ?」


「その場合ルナはどうなる? 魔法学園で軍事訓練を受けさせられるのがオチだろう。娘にそんなことはさせられない」


「……つまり極秘裏に育てろってことかよ。難しくはないが、結構な面倒事だぞ」


「無理を承知で頼む」


 そう言ってお父様はマフィに頭を下げた。

 なかなか見られないレア姿だ。脳内メモリーに保存しておこう。


「……ふん。分かったよ。他でもないお前の頼みだ。引き受けてやる」


「本当か!」


「ただし、条件がある。一つはこいつの教育方針に絶対口を出さないこと。もう一つは金銭面での折り合いはきっちりつけること。そんで最後に……一つ貸しだかんな。今度何かあったら無条件で私の要求を呑め。これが条件だ」


「分かった。その条件受け入れよう」


 一瞬の躊躇もなく頷くお父様。

 最早、そこにどんな条件があっても頷いてたんじゃないかってくらいの即答だった。流石お父様。格好良い。


「ありがとうマフィ。恩に着る。娘のこと……よろしく頼んだ」


 最後にもう一度頭を下げ、お父様はこの場を去った。

 アインズの街でティナが待っているし、お店のこともある。あまり長居は出来ないのだ。

 こうして私は一人、全く知らぬ土地で全く知らぬ人達と暮らすことになったわけだが……


「……はあ、ダレンの奴も本当に随分変わったもんだよ」


 呟くマフィさんは見た目ほど怖い人じゃなさそうだ。

 これからもやっていけると思う。

 問題なのは……


「いい? 私は貴方より先にマフィを師事していたのだから姉弟子に当たるわけ。せいぜい敬うことね」


 どうにも高飛車なこの女の子と仲良くなれるかってこと。

 これが男相手ならちょっと笑顔でも見せてやれば効果覿面なんだけど、女の子だからなあ……しかも私と同じくらい可愛い相手。私の魅了 (スキルではないほう)は通用しない。

 うーん。やりづらい。


「あの……アリス?」


「もう呼び捨て? 別にいいけど。何?」


「えと……これからよろしくね?」


「よろしくするかどうかは貴方次第よ。言っておくけど私に何か期待するのはやめてよね。私は私で忙しいんだから」


 うう……どうすればいいのこんな子。対処法が全く分からない。

 というか私のこと嫌いなの? さっきから私と一緒にいるとそわそわ落ち着きなさそうにしてるけど……私といるの嫌なのかなあ。ちょっとだけショック。


「とりあえず荷物置いてくるね」


「場所は分かるの?」


「いや、分からないからその辺に……」


「全く計画性のない奴ね。ほら、こっちに来なさい。3階に空き部屋があるからそこを使うといいわ」


「あ、ありがとう」


「別に礼なんて要らないわよ。それより長旅で疲れてるんじゃない? 荷物持ってあげるわよ」


 ほとんど強引に私から荷物を奪い取るアリス。

 ……あれ? もしかしてこの子って……


「ルナ。お腹空いてない? ご飯が欲しいならすぐ作ってあげるわよ」


「ルナ。長旅で疲れたでしょう。特別に一番に入浴する権利を上げるわ。感謝しなさい」


「ルナ。一人で眠れる? 慣れない土地で不安でしょうから一緒に寝てあげてもいいわよ」


 ……うん。この一日で確信した。

 この子……ツンデレですわ。

 しかもデレ分がかなり多めの。

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