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吸血少女は男に戻りたい!  作者: 秋野 錦
第4章 王都学園篇

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第193話 吸血少女と天才少女

 突然現れた女子生徒、ノア・グレイは教室に入るや否やアリスの元に突撃して、妙なことを言い始めた。


「興味があるって……随分、不躾な物言いね。それで私が付いていくとでも?」


 当然、アリスも素直に付いていくわけもなく拒絶の意思を示すのだが……


「対価を求むのか? ふむ……分かった。お前の時間を一時間当たり十万で買おう。なに、心配はいらない。ノアは金持ちだ。それぐらいの金なら即金で用意できル」


 ノアはノアでまた、妙にずれたことを言い始めた。

 幾らか生徒は少なくなったとは言え、ここは放課後の教室。周囲の生徒もこの奇妙な二人のやり取りに聞き耳を立てる中……


「ちょっとノアちゃん! いきなりそんなこと言ったら失礼だよっ」


 ノアを後ろから止める声が聞こえた。

 どうやら最初からいたらしいが、ノアが余りにも目立つオーラを持っていたせいで気付かなかった。とはいえ、その生徒もとても可愛らしい容姿をしており、ゆるふわ系のウェーブがかかった茶髪はそれだけで彼女の温厚な性格が伺えるようで……


 ──って! アンナじゃねえかっ!?


「アンナ、服を引っ張るのは良くない。生地が伸びル」


「あ、ごめん。でも、このコートだとあんまり変わらなくない?」


「ノアが身の丈に合わない服を着る事と、このコートの貴重性は何の関連性もない事柄ダ。早急に手を離すことを求めル」


 妙に耳に残る語尾と共に、くいっ、とアンナの手を振りほどく仕草を見せるノア。他人に干渉されるのが嫌いなタイプなのか? 唯我独尊なタイプにはありがちな性格だな。そして、彼女がそのタイプであることは入学式の日に発覚している。


 ノア・グレイ。

 入試成績一位の生徒。

 それはつまり今期の学生の中で最も優秀な魔術師だということだ。そんな彼女がなぜ、アリスに興味を持ったのか。もしかしたら、純血派の新たな動きかもしれないと身構えるが……


「さて、アリス・フィッシャー。ノアはお前の才能を高く評価していル。その類まれなる魔術的センスはノアの研究の役に立つ。是非ともお前の力を借りたい」


 両手を広げ、大仰な仕草で歓迎の仕草を見せるノアは……どうも友好的な客だったらしい。それも演技の可能性もあるけど、アンナが一緒にいるし悪い奴ではないと思うのだが……どちらにせよ、判断材料が少なすぎる。もう少し様子を見よう。


「そういうことなら申し訳ないのだけど、私には私のやるべきことがある。貴方のために貴重な時間を割くわけにはいかないわ」


「金額に不服でも?」


「いいえ。そうじゃないわ。分かりやすく言うなら、私は貴方に興味がない。これで分かってもらえたかしら?」


 ことさら丁寧な口調でノアを断固として拒絶するアリス。

 そして、そんなアリスの態度にノアは分かりやすく落胆した様子を見せた。


「そうか……それなら仕方ナイ。また気が向いたら声をかけてくれ。ノアは平民クラス(アーティスト)の所属だ。いつ来てくれても歓迎する」


「ええ。機会があれば伺わせてもらうわ」


 一応社交辞令でそう言ってはいるけど……あれ、絶対に行く気ないな。私が西大陸に興味を持って、一度一緒に行ってみようと誘った時と全く同じ顔をしてやがる。


「だが、わざわざこんなところまで来て何の成果もなしでは時間の浪費が深刻だ。良ければ他に優秀な生徒がいれば教えてくれないか? ノアは無駄を嫌う」


「優秀な生徒……」


 友達のいないアリスは他人の成績なんて知りもしないのだろう。このクラスで最優秀の生徒はアリス、次いでクレアなのだがクレアお嬢様はすでにカレンお嬢様に拉致されてこの場にはいない。

 となると、彼女が視線を向ける先は……


「…………」


 ちらり、と控えめにこちらを見るアリス。

 そして、その視線をノアは見逃さなかった。


「おお。凄いな。このクラスには天使がいるのか?」


 私の容姿を見て最初の感想がそれか。

 ノア・グレイ……私は素直な子は好きだよ。


「お姉様っ! 学園でもお会いできるなんて感激ですぅ!」


 そして、私を見つけた途端に主人を見つけた子犬のように駆け寄ってくるアンナ、君もね。よしよしと頭を撫でてあげながら、視線だけをノアへと向ける。


「何だ。アンナも知り合いだったのか。それなら丁度良い。話がスムーズに進むな。ノアは面倒も嫌う」


 とことこと小さな歩幅で近寄ってくるノア……あ、後ろでこっそりアリスがこの場から逃げ出してやがる。私にコイツを押し付ける気か。


「始めまして、ルナ・レストンです。現在はクレア・グラハム様の従者をさせて頂いております。以後、お見知りおきを」


 とはいえ、私は私で立場がある。お客様を乱雑に扱うなんて事は出来ない。


「ん。ノア・グレイだ。それよりお前、これから時間アルか?」


「えっと……今のところ予定はありませんが」


「ならちょっとノアに付き合え。面白いモノも見せてやるぞ」


 強引に話を進めるノア。

 私が断ることは考えていないらしい。アリスに対しても最初はそうだったしな。まあいい。アリスに関わろうとする人間は全て調査対象だ。この子自身にも興味がないわけでもないし、付き合うとしよう。

 一つ気になることがあるとすれば……


「良し、行くぞ。付いて来い、二人とも」


 それ、私には時給出ないんですかね?

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