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吸血少女は男に戻りたい!  作者: 秋野 錦
第4章 王都学園篇

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第161話 この世界には二種類のドSがいる

 クレアから直々に彼女の世話役に任命されてしまった。

 それは別に良い。入社後すぐの大抜擢は、確実に出世コースだ。それ自体は喜ばしいことなのだと思う。問題はこの話をした途端、同僚のメイドが全員不憫なものを見るかのような眼差しで私を見てきたことだ。


 ちなみにクロエさんは失笑していた。一体、どこに笑う要素があったのか謎だ。

 そんなわけで、若干の緊張感を残しながら私は早速朝の日課としてお嬢様を起こしに、彼女の自室にやってきたのだが……


「うわあ……」


 と、思わず声が漏れてしまうくらいに彼女の部屋はこの世の贅沢を詰め込んだかのような豪奢な内装をしていた。何に使うのか皆目見当が付かない調度品の数々。天蓋付きのベッドなんて二次元以外で始めてみた。

 そして、そんな寝転んだら二秒で夢の中に引きずり込まれそうな快適空間の中心に……彼女、クレア・グラハムはいた。


「すー、すー……」


 まるで赤子のように丸まったまま、だらしなく涎を垂らしながら寝息を立てている。そして何より問題だったのが……この人、全裸なのだ!

 赤子のように、という比喩はそのまま生まれたままの姿で、という意味だ。まさしく全裸オブ全裸。その堂々とした全裸っぷりに私はエロい気分になるどころか感心してしまった。


 ……どうやら私のお嬢様は裸族の方らしい。

 少し、いやかなり仕える気が萎んでいったがそんなことも言っていられない。私は出来るだけ、クレアの体には視線を向けないように起こすことにした。


「お嬢様、おはようございます。起床の時間になりましたので起きてください。そして、出来るだけ迅速に服を着てください」


「ん、んん~……あと、二年……」


「本当に二年も寝れるものならぜひとも見せてもらいたいところですが、入学式も近いので生活リズムを整えておきましょう。入学初日に辛い思いをするのはいやでしょう?」


「その時は学園を休校にするから大丈夫ー」


「全然大丈夫ではありません。そもそも、そんなこと出来るわけないでしょう」


「出来るもん。私のお爺ちゃん、学園長だもん」


「いくら祖父が学園長でも孫の頼みで休校には出来ないですよ。しかも、眠いからなんて理由で」


「むー……ルナのケチ」


 文句を言いつつもクレアはごそごぞと起床の準備を始めた。上半身を起こして、「ん~~~」と伸びをし始めたあたりで視線を逸らした。いくらまだ成長期手前とはいえ、レディの裸体をやすやすと見て良いものではない。というより、その辺はクレアに気をつけて欲しかった。

 やっぱりあれかな。メイドは人じゃなくて物だから全然恥ずかしくありませーんとか。そんな感じのあれかな。こっちとしては意識してしまうから困るんだが。


「さて、着替えるから手伝って頂戴、ルナ」


「え!?」


「早く。そっちの棚に下着が入っているから持ってきなさい」


 ま、マジか……付き人ってそこまでしないと駄目なの? これから四年間、毎朝こんなシチュエーションが続くの? とてもじゃないけど耐えれる気がしないんですけど。主に色欲的な意味で。


「あの、今までお付きがいなかったってことは昨日まで一人で着替えてらしたんですよね? だったら今日もその方がいいというか、私がそれをする必要性がないと思うのですがどうでしょう?」


「早くやりなさい」


 私の必死の抵抗も一刀両断。今後の進退を握られている私に拒否権はなかった。いくらなんでもパワハラが過ぎるよ。


「で、では……失礼します」


 しかもクレアは自分で履こうともしなかった。

 私より小さな女の子に手ずから下着を履かせる。これなんてプレイ?


「ふふ、ルナは反応が初心で可愛いわね」


「あの、まさか私を辱めるためだけにこんなことを命令したんじゃないですよね?」


「ふふふ、それはどうかしらね」


 うわー、めっちゃ良い笑顔。なるほど、肉体よりも精神的に追い込むタイプのドSか。とんでもなく厄介な性格をしていらっしゃる。朝からこんなペースで振り回されてたんじゃ精神が持たないぞ。


「さて、着替えも済んだし朝食にしましょうか。ルナも一緒に食べる?」


「いえ、私はメイドですからお嬢様と同席なんて出来ませんよ。しかも他の先輩の方々もいますし」


「そう。なら命令ね。一緒に食べなさい」


 この人は私が嫌がることをとことんやるつもりだな!?

 人の話を聞かないならまだしも、聞いた上でそれとは逆のことを強いるとはなかなかに捻くれた性格だ。君は好きな女の子に素直になれない小学生男子か。


「わ、分かりました……ではご相伴に預からせていただきます」


「ルナのテーブルマナーはどの程度なのか、楽しみね」


 本当に楽しみにしているから困る。

 私はこの我侭お嬢様とうまく付き合えるのだろうか?

 急に湧き上がる不安感を胸に、私はお嬢様の後に続いて食卓に向かうのだった。

 ちなみにテーブルマナーはそれなりにちゃんとしていたので、お嬢様からは「詰まらないわね」と愚痴を言われてしまった。酷い。

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