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吸血少女は男に戻りたい!  作者: 秋野 錦
第1章 吸血幼女篇
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第15話 親バカ再び

 スキル『魅了』は危険すぎる。

 他人の人格まで変えてしまうなんて尋常ではない。

 精神系の攻撃が最も恐ろしいのだと、偉い人も言ってました。

 いや、知らんけど。

 とにかく、この『魅了』に関しては何をどうすれば発動するのかチェックする必要がある。そうでなければおちおち人と会うことも出来ない。

 というわけで……


「お母様、ちょっといいかな?」


 ティナを対象に実験することにしました。

 え? なんで自分の母親にそんな危険なことするのかって?

 そんなのティナだからに決まってるじゃないか。


「どうしたのルナちゃん?」


「じっとしててね」


 暢気な顔で私を見るティナの瞳を覗き込む。

 ティナの瞳は綺麗な蒼色をしている。私もだけど、こういうところは家族なんだなーって思う。私の髪もちょっと色素薄けど母親譲りだしね。

 ティナの可愛らしさ、そしてお父様の精悍さを併せ持つ私、イコール最強!

 いや、そんなことより今は魅了の調査だった。

 まずは視線が合うだけで魅了にかけられるのかどうかを実験。


「むむむ……」


「え、どうしたの? ……はっ、分かったわ! テレパシーね! 親子の絆を試そうというのね、ルナちゃん! お母さん頑張る……むむむ……来た! 『お母様大好きっ』!」


 違う、そうじゃない。

 それは単なるアンタの願望でしょう。誰もそんなこと考えてないわい。

 しかし、駄目だな。魅了にかかってる様子はない。別の意味で魅了はされてるけどアレは地だからなあ。

 となると視線が合った程度では駄目と。


「お母様、手を出して」


「……? はい、どうぞ」


 ティナの手を握る。ぎゅっと強く。

 でもこれも駄目だ。前にアンナにしたこと一通り試したけどどれも効果がない。となると残るはアレなんだけど……正直、嫌だなあ。

 でも、魅了の効果を確かめないといけないし、それに最適な人材が今目の前にいるわけで……仕方ない。女は度胸だ。どんな結果になっても後悔しない覚悟を決めろ。




 …………いや、私男だからね!?




 今、さらっと自分のこと女扱いしてたよ、あぶねー。セフセフ。

 ……本当にセーフなのか?

 まあいい。

 今はティナのことが先だ。


「お母様、ちょっと屈んで」


「全く、今度はどうしたの?」


 私の身長ではティナの口元に届かなかったのでしゃがんでもらう。

 そして……ちゅっ、と軽くティナにキスしてみる。

 さて、これで魅了できるかな?


「えっ、あ、る、ルナちゃん!?」


 おうおう、動揺してる動揺してる。

 それもそうだろう。ティナからキスしてきたことはそれこそ何万回とあるが私からはこれが始めて。

 ……あれ? となるとキスが条件じゃないのか?

 今まで何度もしたことあるし。いや、でもこっちから自分の意思でしたのは初めてだし……とりあえず。確認しよう。どうなる?


「る、るるる、ルナちゃんっ! か、か、か、か……」


 壊れたラジオのように呂律の怪しいティナ。

 真っ赤な頬、とろんとした瞳は確かにあの日のアンナちゃんと同じ雰囲気だ。これは……うん。魅了されてるっぽい。

 良し! 効果も確認出来たし……逃げろ!

 しかし、ティナに回りこまれて逃げられない!


 なにぃぃッ!? ティナ、お前そんなに敏捷性高くないだろう! なんでこんな時だけゴキブリばりの機動力発揮してんのさ!?


「私の娘、可愛いぃぃぃぃっ! あーん、どうしてルナちゃんはそんなに可愛いのよ、もう! 抱きつかせて、すりすりさせて、もっともっとキスさせて、そして舐めさせてー!」


 いーやー!

 ティナが暴走し始めたー!

 誰か! ヘルプミー!


「お母様、ストップ! 私そんなに可愛くないからっ!」


「私の娘がこんなに可愛い訳があるっ!」


「何の断言してるのよー!」


 いかん! 私が超絶可愛いのは当然のことだけどティナの暴走が予想外すぎた。どうも魅了にかかったとしてもその反応には個人差があるらしい。

 うん。検証できて良かった良かった。

 いや、それはともかくこの状況どうすんのさ!?


「ルナちゃん! お母さんとイケないことしましょう!」


「するかボケっ!」


「罵倒するルナちゃんも新鮮で可愛いっ!」


 駄目だ! 最早こいつ、私には止められない!

 誰か……誰かいないの!?


「つーかまーえたっ! ルナちゃん、もう逃がさないわよ?」


「いーやー!」


 まずい! ついに捕まってしまった!

 流石に大人の力には勝てない。というか、今のティナは普段のステータスより高い身体能力持ってる気がする。いや、冷静に分析してる場合じゃないけど。

 ああ、駄目。服、服を脱がさないで。ええっ!? し、下着まで!? こいつ……ガチだ!? おまわりさーん!


「……何やってんだ。お前は」


 ガインッ! と小気味良い音がしてティナが派手に地面に倒れ込む。

 え、ええ……?


「あ……お父様っ!?」


 見ればフライパン抱えたお父様の姿があった。

 流石ラスボスお父様! ティナを一撃で昏倒させやがった!

 わーい! おまわりさんは来なかったけどお父様が来てくれた!


「た、助かりましたお父様……」


 純度100%の感謝を捧げながら乱れた服を正す。


「……いや、本当に何があったんだよ」


「いや、まあ……色々ありまして」


 説明なんて出来るか!

 お父様には悪いけど真実は隠させてもらおう。

 ティナの名誉なんぞ知ったことか。娘に手を出す変態と思われておけば良い。


「まあ、その……なんだ。困ったことがあればすぐ俺に言うんだぞ?」


「お、お父様……」


 何も聞かず助けの手だけを差し伸べると? アンタ紳士だよ! 男の中の男だよ!

 ぴろりん♪ ルナのダレンに対する高感度が7上昇した。

 流石私の中で尊敬できる人ランキング2位や。惚れさせてくれる。

 ちなみに1位はマリン先生ね。あの人の聖人っぷりは次元が違う。この前みたらまた犯罪値が減ってたし。このままいけば0になるんじゃね? って勢いだ。


 え? ティナは何位なのかって?

 うーん、だいたい200位くらいじゃね? 考えた事もなかったわ。

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