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吸血少女は男に戻りたい!  作者: 秋野 錦
第4章 王都学園篇

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第152話 新魔法・影法師

 私とリチャードの戦いが始まる前、彼のステータスを鑑定で見てみたのだがかなり戦えることが分かった。素のステータスなら私より彼の方が上。今は吸血もしてないし、ノーマルモードの私ではちょっと分が悪いかもしれない。


「はあっ!」


 呼気と共に、リチャードの腹部に向け掌底を放つ。

 だが、これはあっさりと彼の丸太のような両腕でガードされてしまった。

 なら……


「ふっ!」


「!?」


 軽い跳躍と共に、膝蹴りをリチャードの顎に叩き込む。と、同時に前回りの要領で勢いの乗った踵落としを脳天へ!



 ──バシィィッ!



 と、派手な音がして私の足とリチャードの腕が交差する。

 ちっ……思ったより動きが悪い。簡単にガードされてしまう上、あの肉の鎧が厄介だ。今の私の筋力ではあの装甲を貫けない。


「なかなか素早い」


「そっちは固いね」


 軽く言葉を交わして、立ち位置を変える。

 彼の攻撃を10分間受けきることが条件だが、後手に回るつもりはない。

 先ほどと同じように、私は攻め続けることで勝機を得ようとしたのだが……


「むんッ!」


 私が懐に飛び込むよりも早く、リチャードのボディーブローが飛んでくる。

 腕の長さ(リーチ)に差がある以上、先に攻撃をしかける権利は向こうにある。作戦負けを自覚しながら、受けに回るしかなかった。


「くっ……!」


 言葉通り、一切の手加減がないのだろう。

 一撃一撃がまるで鉄塊を投げつけられているかのように重い。私と彼ではウェイトに差がありすぎる。単純にガードしただけでは押し込まれると判断した私は防御より回避に重点を置くことにした。


「ふっ、はっ!」


 交わし、いなし、時には反撃して。リチャードの隙を伺い続ける。

 だがそこは流石に経験値が違うらしい。今の私では彼の猛攻にカウンターを合わせることが出来そうに無い。元々、私は何かの武術を習っているわけではないのだからそれも当然といえば当然。


 身体能力(スペック)では向こうが上。

 経験値でも向こうが上。

 さて……どうしたもんかね、これは。


「動きにキレがなくなったぞ!」


「────ッ!」


 私が攻めあぐねたその一瞬の間隙に、リチャードが始めて蹴り技を繰り出してきた。これまでずっと手技による打撃ばかりだったから反応が……っ!


「遅いっ!」


「ぐっ……はっ……!」


 腹部に感じる衝撃。

 私はリチャードの攻撃を避けることが出来ず、そのまま地面を転がるように吹き飛ばされてしまう。初めてクリーンヒットしたが……やはり、重い。体の芯に響くような打撃だ。

 再生スキルも使えない以上、こんなもん何度も喰らってたら体が持たないぞ。


「ルナっ!」


「だ、大丈夫ですよ……お嬢様」


 本当なら威力が調整しやすい体術で片をつけたかったが……こうなっては仕方ない。使おう、"アレ"を。私はまだ負けてやるわけにはいかないんだ!




 ──お給料の為に!




「ふう……」


「……むっ!?」


 何か危険な雰囲気を感じ取ったのだろう。

 距離を取っていたリチャードが私に向け、駆け出すのが見えた。

 だが……もう遅い。


「させんっ!」


 私はずっと考えてきた。

 ノーマルモードの状態で戦闘力をどうにかしてあげることが出来ないかを。地下迷宮では吸血モードを乱発していれば良かったが、人の社会に溶け込むならそれでは駄目だ。

 私の素性を隠すためには、ノーマルモードの私が強くなる必要があった。


 必要に迫られたとき、血に頼るのではなく自分の力で道を切り開くために。

 そして、私は旅の道中、グラハムさんや師匠の助けを借りながら一つの"特訓"を重ねてきた。全てはそう……


「なっ!? こ、これはっ!?」


 生身のまま……"魔法"を使うために。




「来い──『影法師』」




 私がその名を唱えた瞬間──どろり──と私の右腕から真っ黒な影が溢れ出した。どこまでも黒く、黒く、黒く。淀んだ影色。まるで泥沼のようなその魔力の塊は私がこの半年で開発した新魔法だった。

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