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吸血少女は男に戻りたい!  作者: 秋野 錦
第4章 王都学園篇

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第150話 その色はその人の性格を現す

 グラハムさんから話を聞き、私は急ピッチで準備を進めた。

 まず最優先で行わなければならないのはお嬢様に雇ってもらうための面接だ。こればかりは絶対にミスをするわけにはいかない。聞いた話ではなかなか捻くれた性格のようだし、気を引き締めていかなければ。


 ……ということで。

 私は今、グラハムさんの紹介により王都の中にある貴族街と呼ばれるエリアに出向いていた。目的は勿論、お嬢様との初顔合わせのため。

 グラハムさんから事前にある程度の情報は貰っているが、初対面というのはやはり緊張する。


 名前はクレア・グラハム。

 年齢は私より二つ上の12歳。

 現在は学園近くの屋敷を買い取り、そこに自分で雇った従者を連れて住んでいる。両親とはすでに別居中。初めての一人暮らしを楽しみにしていたらしい。


(いや、メイドを住み込ませている時点で一人暮らしではないだろ……とか突っ込んじゃ駄目なんだろうなあ)


 こっちの世界ではメイドやら執事は物と同義なのらしい。

 故に学園に連れて行くメイドは学費を払わなくても通うことができる。その点は非常に助かった。あんな高い学費は到底だせるわけがない。奨学金といっても要は借金だからね。出来るだけ家計の負担にはなりたくない。

 途中脱線しながらも貰った情報をまとめていると、やがて目的地にたどり着いた。


「うおう……流石は貴族の屋敷。師匠の家より大きいな」


 門の前に立つだけで感じる圧迫感。

 荘厳な雰囲気を漂わせる屋敷はお嬢様の趣味なのだろうか。なかなか高い金がかかっていそうである。

 その辺の石とか売っても金になりそう。いや、盗んだりはしないけどね? そう見えるって話。


「さて……」


 いつまでもここでじっとしているわけにもいかない。

 緊張しすぎも良くないので、私は服装に乱れがないかだけチェックして……呼び鈴を軽く二回鳴らした。

 すると十数秒と経たない内に屋敷の扉が開き、メイドっぽい服装をした女性が私を出迎えた。


「いらっしゃいませ。本日はどのような御用向きでしょうか?」


 澄んだ海のような色をした頭髪に、整った顔立ち。

 歳は20代後半くらいだろうか。かなりの美人の登場に内心どきどきしながらも何とか用意していた言葉を告げる。


「始めまして。本日13時より、面接の件でお伺いすることになっておりましたルナ・レストンです。ご当主様はご在宅でしょうか?」


「ええ、伺っております。どうぞ中にてお待ちください」


 丁寧な口調で門を開き、私を中へと案内してくれる美人メイドさん。


「申し遅れました。私は当家のメイド長を仰せつかっておりますクロエと申します。どうかクロエとお呼びください」


「ご丁寧にありがとうございます」


 ほっ、とりあえずこのクロエという人は良い人そうだぞ。

 この丁寧な感じ、いかにもメイドって感じだし、少し参考にさせて……


「ところでレストン様」


「え、はい?」


「下着はきちんと黒のものを選んで来ましたか?」


「…………え?」


 突然の問いに思わず私は間抜けな返事をしてしまう。

 というか……下着は黒? え、やばい。なんだそれ。そんな指定あったっけ!?


「す、すいません。その、わ、私……」


「まさか……黒ではない、と?」


 私の慌てっぷりに黒ではないと察したらしい。

 クロエさんは真っ青な顔になると、私の下半身に視線を向けた。


「その……失礼ですが、今は何色を?」


「し、白ですっ! ど、どどど、どうしましょう! まさかこれでクビってことは……」


 最早パニックに陥った私は咄嗟にクロエさんに助けを求めた。

 なのだが……


「いえ、大丈夫です」


「え?」


 いきなり元のけろっとした無表情に戻って大丈夫だという。


「え、本当に大丈夫なんですか?」


「はい。だって冗談ですから」


「…………はい?」


「下着の色で雇うかどうか決まるわけないじゃないですか。今のはレストン様の緊張をほぐすためのジョークです」


「…………あの」


「ジョークです」


 口を開いた私の機先を制すかのように、クロエさんはジョークだと頑なに宣言する。いや、本人が冗談だというなら冗談なんだろうけど……普通初対面にそんな冗談を口にするか? 下手したらセクハ……


「着きました。ここがクレア様のお部屋になります」


「えっ!? ちょっ、私まだ心の準備が……っ!」


「では、ご健闘をお祈りしております」


 緊張がほぐれるどころか最悪な精神状態のまま、放り投げられた私。

 まさかのタイミングだ。幾らなんでもこれは酷い。

 もうクロエさんを参考にはしまいと心に決めた私が視線を上げると……


「ふん。貴方が新しいメイドってわけね」


 部屋の奥で椅子にふんぞり返って座る小さな少女の姿がそこにあった。

 クリーム色にも似た薄い金髪にくりくりとした綺麗な碧眼。

 聞いていた外見的特長に一致する。そうか……この子が……


「私はクレア・グラハム。貴方の……ご主人様よっ!」


 私の……雇用主となる女の子だ。

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