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吸血少女は男に戻りたい!  作者: 秋野 錦
第4章 王都学園篇

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第147話 二人の距離

「あの……あ、姉上」


「んー? どした? 怖すぎて漏らしちゃったか?」


「違いますっ! そうじゃなくて、その……」


 男達が去った後、気まずそうな様子でルカは私に話しかけた。

 お礼を言いたいけど、喧嘩した後だし気まずいなあって感じだ。


「…………」


 さて、私はここでルカに何と言ってあげるべきなんだろうか。

 前世では兄妹なんていなかったから、接し方がイマイチ分からない。

 でもまあ……そんなに悩むこともないか。

 ティナが私に無償の愛を注いでくれたように、私もそれをただ返せば良いだけだ。私たちは……家族なのだから。


「でも良かったよ。ルカに怪我とかなくて」


「え?」


「だってさ……」


 私はそっとルカに手を伸ばすと、


「こーんなに可愛い顔に傷でも出来たら大変でしょ?」


 その餅みたいに柔らかい頬をにょーんと横に引っ張ってやった。

 はは、間抜けな顔になってる。可愛い。


「い、痛いれふ姉上……」


「さっき私から逃げた罰だからね」


 まあ、単純にこの可愛らしい妹を弄りたかったってのもあるけど。

 しかし良い触感してるな、コイツのほっぺ。ええい。もっとむにむにしてやる。今度は罪悪感もあってかされるがままになってるし、今のうちだ。


「んー……こういうところは私と違うんだよなー。体型の違い? それとも単純に歳の差かな」


「あ、姉上ぇ……」


「ごめん、もうちょっと」


 むにむに。むにむに。ふう……堪能したぜ。

 あんまりやりすぎると嫌われてしまうのはリンの時に学習済みだ。うん。私は我慢ができる女……あ、違う、男。


「さて、罰もこんなもんで良いとして……」


「あうぅ……」


 涙目で頬をさするルカ。

 あれ……なんだろうこの気持ち。なんだかとてつもなく可愛らしい生物を見ている気がするぞ?


「私の妹がこんなに可愛いわけが……あるんだよなあ」


 さすが私の妹と言うべきか。

 ティナがどうしてあんなに私にちょっかいをかけていたのか今の私なら分かる。これは手が出るわ。いろんな意味で。


「か、可愛いとか言わないでください……」


「ん? そう言われるの嫌い?」


「……苦手、です」


「なら慣れた方がいいね。今後の人生で絶対一番言われる言葉だろうから」


 この子は将来絶対モテる。間違いない。私が保証する。

 まあ、悪そうな虫なら絶対ルカには近付けさせないけどね! 私が!


「しかしなんでこんなに可愛いんだ? 奇跡か? 神の悪戯か?」


 妹補正があるにしても、これはちょっと凄いですよ。

 まさしく天使というに相応しい。私と並べばちょっとした見世物くらいにはなるかもしれないね。今のうちにもう少し触っとこう。ご利益があるかもだし。


「あ、姉上ぇ……は、恥ずかしいです……」


「これは家族のスキンシップだから恥ずかしがる必要はないよ」


 嘘です。

 8割ぐらいセクハラ入ってます、はい。


「やっぱり、家族なんだよね……」


「……姉上?」


「いやね、お母様にもこうやってよくセクハラされてたなーって思ってさ」


「やっぱりセクハラだったんだっ!」


「あ、しまった」


 やばい、口が滑った。

 ああ、ルカが私の手から逃げていく。そりゃそうか。


「あ、姉上はフレンチです」


「それを言うならハレンチね。それだと私が料理になっちゃうから」


 まだ言葉を覚え切れていないのか、真っ赤な顔になって恥ずかしがるルカ。可愛い。


「はは、ルカもまだまだ勉強しないとね」


「あ、姉上に言われたくないですっ! ずっと……遊んでたくせに」


 最後は力なく言葉にするルカ。

 んー……やっぱり、そこが気になってるみたいだね。

 遊んでいたわけじゃないと否定するのは簡単だけど、そうするとじゃあ何をしていたのかってことで危険な話をいくつもしなくてはならなくなる。


 ティナが折角心配してくれているのだ。

 私もそれに乗っかるべきだろう。

 それに、そういう事情を抜きにしても私はルカに危険な世界を知って欲しくはなかった。たとえそれでルカに嫌われることになったとしても。

 だから……


「あー、それを言われると辛いなあ。でもルカも一度試してみると良いよ。あちこち見て回るのはすっごく楽しいから。あ、でもちゃんと危なくないように仲間も連れて行くようにね」


 私はルカにとってだらしのない、奔放な姉を演じることにした。


「い、行きませんよっ! 母上を一人には出来ませんから」


「ルカは母親思いだねえ。良い子良い子」


「だから頭を撫でないでくださいっ!」


 ははは、拗ねるルカも可愛いなあ。

 うん。やっぱりこういう形が落ち着くな。

 男達に絡まれてるルカを見たときは、格好良い姉になってやろうかとも思ったけど、どうやらそういうのは私のキャラじゃないらしい。

 まだ私とルカの5年間に渡る溝は埋まったとは言いがたいけど、それでもいい。時間はあるのだから。これからゆっくりと埋めていけばいい。


「それじゃあ、ひとまず帰ろっか。きっとお母様も心配してるし」


「……そういえば何で飛び出してきたんでしたっけ」


「細かいことは気にしない気にしない」


 ルカの肩を抱き、強引に連れ帰る。

 どうやらルカを連れ戻すという任務だけはなんとか達成できそうだ。

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