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吸血少女は男に戻りたい!  作者: 秋野 錦
第4章 王都学園篇

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第146話 忘れかけてたアイツの置き土産

 ルカを探して外に出た私はとりあえず、五感を使って探し出すことにした。

 どうやらこれまでリンがいたおかげで使う機会に恵まれなかった新スキルを試すときが来たらしい。


【ルナ・レストン 吸血鬼

 女 10歳

 LV15

 体力:272/272

 魔力:6370/6370

 筋力:230

 敏捷:235

 物防:200

 魔耐:152

 犯罪値:212

 スキル:『鑑定(82)』『システムアシスト』『陽光』『柔肌』『苦痛耐性』『色欲』『魅了』『魔力感知(30)』『魔力操作(75)』『魔力制御(40)』『料理の心得(26)』『風適性(28)』『闇適性(55)』『集中(34)』『吸血』『狂気』『再生(23)』『影魔法(50)』『毒耐性(5)』『変身』『威圧』『感知(12)』】


 実は土蜘蛛を倒した後、私のレベルは一度に7も上昇した。

 どうやらレベル8とかで倒すような相手ではなかったらしい。それはそうだ。一気にレベル上限解放の音声が流れて、少しうるさかったのを覚えている。


 しかも、今回手に入れた新スキル『感知』はその名の通り五感を強化するスキルなのだが、リンの持つ種族スキル『五感』に比べてその精度がかなり低い。

 戦闘での実用性は皆無。しかもリンと一緒に行動する私には無用の長物だったわけだが、こうしてみるとかなり有用性は高い。


「匂いは……無理か。視界にもいないし、それなら……」


 意識を集中し、感覚を研ぎ澄ます。

 今の私は5キロ先にある紙に書かれた文字であろうとも認識することができる。それでもこうも建物が多いと、障害物が多すぎてうまく機能しない。

 私はリンとは違い、嗅覚と触覚に関してはこのスキルの恩恵を受けている気がしないのだが他の感覚……とりわけ視覚と聴覚に関しては自信があった。


「足音ってのは案外響くもんだよね……っと、ビンゴ!」


 音の軽さから小さな子供と判断した私はそちらに向け、駆け出した。

 たんっ、と地を蹴って長屋の屋上を駆け抜ける。

 早く動き出せたおかげで、すぐにその子供……ルカの姿を視界に収めることが出来た。ルカはそれほど運動が得意ではないのか、そこまで足が速くはない。これなら楽に追いつけそうだ。

 さっさと捕まえて……ん?


「はあっ、はあっ、はあっ……うわぁっ!?」


 全力でわき目も振らず走るルカは周囲が見えていないのか、わき道から出てきた強面のお兄さんに思い切りぶつかってしまった。

 しかも、その人は何人かの男を連れており明らかにアニキとか呼ばれていそうな立ち位置の人物に見えるぞ。流石にこれはちょっと……チャンスかもしれないね!


「このガキ、アニキの服に泥をつけやがった!」


「てめぇ、どういう了見だ? ああん!?」


 あ、やっぱりアニキとか呼ばれてるんだ。


「ご、ごめんなさい……ぼ、僕、慌てて……」


 そして、ルカもさっそく涙目になり始めてるし……ああ、可哀想に。

 というかルカは自分のことを僕って言うのか。僕っ娘とか始めて見たけど結構、可愛いかもしれない。


 ……はっ!? 私も私じゃなくて僕にすれば良かったのか!?

 そうすれば中性的な顔立ちも手伝って男に見えなくも……いや、流石にそれは無理があるか。だけど僕ってのは良い一人称かも。今度使ってみようかなあ。


「……おう。チビ助、前はよう見て歩けや。これや折角の服が台無しじゃろうが」


 私が目の前の出来事と全く関係のないことに思考を割いているとアニキと呼ばれた男はルカに向けて、手を伸ばし始めて……あ、それは駄目だぞ。


「うおっ!?」


「なっ!?」


 突然周囲に吹いた突風に男達の何人かが驚きの声を上げる。

 そして、その風を巻き起こした張本人……つまり、私は操魔法と魔力によるブーストを使い、アニキとルカの間に全力で割って入っていた。


 意識していないと目で追うことすら出来ないだろうから、男達には私が突然虚空から現れたように見えたかもしれないね。ほとんど全員がびっくりした目でこちらを見ているのが分かる。

 とはいえ……


「またチビ助が増えよったか」


 私が手首を掴んでいるアニキと呼ばれた男……コイツは全く動じていない様子だ。結構な力で握っているというのに、痛がっている様子もないし。なかなか出来る男っぽいぞ、こいつ。

 まあ、私からすればただの人間に毛が生えたようなものだ。大差ない。

 ……いや、普通人間に毛は生えてるか。例えるの下手だな、私。


「あ、姉上……?」


「心配すんな、ルカ。お前には指一本触れさせない」


 後ろで震えているのだろうルカを思うと、どんなことでも出来るような気がした。この男達、全員を殺してでも……私はルカを守る。


「ま、ここはお姉ちゃんに任せておきなさい」


 自分のことを姉と呼ぶことにはかなりの抵抗があったが、今はそんなことを言っている場合でもない。私は男達を睨みつけ……


「悪いけどウチの子が怖がってるみたいなんでね。お前達には……消えてもらう」


 ──『威圧』スキルを全力で発動した。

 アニキを除いた男全員が後ずさり、短い悲鳴のような声を上げるのが分かった。ただ、やっぱりこの男だけは別格のようで特に威圧スキルが利いている様子もない。


「……ほう」


 それどころか興味深そうにこちらを眺める始末。

 コイツには恐怖心がないのか?

 くそっ、面倒だな。向こうに引く気がないなら最悪戦闘になってもおかしくないぞ。威圧スキルでビビッて逃げてくれれば話は簡単だったのに。


「……ふっ、そう身構えるなや。別にここで事を起こそうなんちゅう気は無い」


「へ?」


「ワシは勝てん喧嘩はせん主義やからな。元々、喧嘩するつもりもないしのう」


 あれ? そうだったの? 男に嘘を言っている様子はないし、どうやら私の早とちりだったらしい。


「ちと頭を撫でたろうとしたんじゃが……怖い姉ちゃんを怒らせたくないし引き上げるとするわ」


「……なんだか申し訳ない。後ろの人もちょっと脅しすぎちゃったみたいで」


「ええ、ええ。こんなんビビっとる方が腰抜けなんよ。おら、引き上げるぞ」


 私がぱっと手を離すと男は「一般人にビビッてどうするんじゃ、ボケ」と周囲を叱責しながらこちらが拍子抜けするほどあっさりと踵を返した。

 そして、去り際に、


「そうじゃチビ助。お前……良い姉貴を持ったのう」


 にっと男前な笑みを浮かべるとルカに対して、そんな言葉を残していくのだった。

 ……去り際までかっけえな、こいつ。

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