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「好きだ」と言えなくて  作者: 水城
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1、一樹【変態兄貴!?】

 また、だ――。

 毎晩同じ夢を見る。

窓から差す明るい光がまぶしい部屋。小柄でシンプルなエプロンを身に着けたショートヘアの子が何か言いたげに振り向く。けれど、その顔は逆光でいつも見えない。ただ、色艶の良い口元だけ見えていて何かを言っている。だけどそれが音になることもない。



「……いち兄、起きてる?」

ドア越しで聞こえる声に半分寝ていた俺は何故だかドキっと胸が高鳴る。慌てて目を開けるとカーテン越しに差し込む光で朝が来たことを知った。

「……起きてる」

目覚まし時計をかけているはずなんだけど、無意識で止めているのか、毎朝同じように起こされる。あの夢がいつも気になるところで醒めるから俺はきっと万年浅い眠りなんだと思う。だから、起きてしばらくボーっとしているのはこのせいなんだ! そんな言い訳を自分自身にしながら、のそりのそりと起き上がる。

一般的な家庭よりは少し裕福な家に生まれ、俺が高校に入ると同時にドバイへ赴任が決まった父親。その転勤先へついていくことになった母親。二人は結婚してだいぶ経つのにいまだに仲が良い。俺は次男で花の(?)高校三年生。一応大学付属の高校に通っている。現在、中学二年の弟、陽人はるとと二人暮らし中。俺の四つ上にも兄貴がいて、大学進学と共に都内で一人暮らしをしている。帰るのが面倒とかでめったに帰ってこない。制服に着替え、キッチンに入るといつもと同じように陽人手作りの朝食が今日もテーブルに並んでいる。ご飯、味噌汁、焼き魚と定番の和食が今日のメニューらしい。

「お前、マジですげーな!」

弟の手料理に毎回感激。俺は家事一切できない。海外へ引っ越すことになった両親が唯一心配したのはこの点だった。だけど、陽人が「僕がいるから大丈夫だよ」と言ったおかげで、こうして二人で日本に残ることができた。

「僕、料理好きだしね」

目の前で見上げるようにして満面の笑みを向けるから、可愛くて鼻血が出そうになったのは俺だけの秘密だ。

兄の高瀬一樹たかせかずきは弟の陽人はるとを溺愛中。

陽人を見つめながら朝ごはんを食べているとインターホンが鳴った。

「はるくん、もう行ける?」

ドアを閉めていても聞こえる大きな声で陽人を呼ぶのは俺らの幼馴染の知香ちか優介ゆうすけ

知香は見た目は可愛くて守りたくなるようなお姫様タイプ。だが実は変わった趣味を持っているとかで俺ら男性陣には教えてくれない。優介は無口で無愛想な一匹狼タイプ。だけど、俺にはなついているらしく、良くしゃべるやつ。そんな二人は毎朝、陽人を迎えに来る。親同士も仲良くて幼稚園から大学までの付属の学校に三人とも通っている。

「じゃあ行ってくるね」

エプロンを外し、椅子に丁寧にかけ、近くにあったかばんを手にする。俺は心の中で『陽人のエプロン姿最高!!!』なんて変態チックな妄想を繰り広げていたわけで……。

「……兄、いち兄! 夕飯何がいい?」

「え?」

陽人の言葉をまったく聞いていなかった。そんな俺を不思議そうに見ながら笑う。その笑顔も可愛すぎるんだけどね。

「いち兄、まだ寝ぼけてるんでしょ? で、夕飯何がいい?」

うーん……俺は少し考えてから答えた。

「オムライス!!!!」

「了解!ホントいち兄はオムライス好きだね」

子供みたいと笑いながら知香と優介の待つ玄関へ向かった。

いつもみたいに昨日見たテレビの話などを知香と優介が話していると陽人がいきなり笑い出す。

二人に不審がられるがそれでも笑いが止まらない。

高瀬陽人は高校三年にもなって可愛らしい兄を思い出し中。


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