カップシフォンとドレスとひな祭りと決意
その日 由楽と雅楽の二人は、今度は様々な味のシフォンケーキを食べやすいように紙コップで焼き、トッピング用の生クリームやカスタードクリーム、フルーツ等とともに魔法を使いながら大量に作っていた。
何故ならば、お茶会をした次の日シフォンケーキの美味しさとドレスの綺麗さを天花が散歩の途中に会った天羽族の者にポロリと話してしまい、それを聞いた天羽族の者が別の者に話し、その者から別の者へと気がついたら天羽族全ての者が知る事とになっていたのだ。
しかし 蜜稚族の引っ越し等で、しばらく忘れさられていたのだが この前たまたま天花の部屋でチハが天花用のドレスをみつけ、この世界に無い美しさや細やかな作りに天花に詳しい話を聞き、今度はチハから蜜稚族にドレスやシフォンケーキの話が広がってしまい、天羽族の皆も思い出し、現在 王国では大変なシフォンケーキとウェディングドレスの話題でもちきりなのだ。
そして、天羽族と蜜葉族の両種族の間で噂が大きくなりすぎて困った天羽族の長 天飛と長老 天衣、蜜稚族の長のバーミリオンが一族の者達からの要望に困り果て、由楽達を訪ねてお城にやって来た。
訪ねてきた3人は、天羽族と蜜稚族で話題になっているフアフアして美味しいシフォンケーキの事やウェディングドレスの事などをいろいろ質問し、由楽達が着た2種類のウェディングドレスを見せると光沢のある純白の布やふわふわした柔らかそうなレースや細かな刺繍、スパンコールのキラキラ輝く美しさや可愛さに一目見た瞬間から気に入り、恥ずかしそうに控え目におねだりされた由楽達は、天飛と天衣とバーミリオンの要望を聞いて由楽のチートを使い調達してきたご所望のウェディングドレスをプレゼントしながら、3人だけに渡すのは不公平になってしまい後で、天飛達が他の天羽族や蜜稚族の人達から責められては可哀想だと考える。
それならば、いっそうの事3日後のひな祭りに天羽族と蜜稚族の皆をお城1階にある吹き抜けの広々したティールームに招待して、噂のシフォンケーキを食べ 由楽達が準備したウェディングドレスから自分のお気に入りを見つけて由楽達がプレゼントするひな祭りパーティーを開催する事にしたのだ。
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ひな祭りパーティー当日、由楽達が住むお城の1階ティールームは、由楽チートで作った天羽族と蜜稚族に似せて作ったダイアモンドと真珠のような物で出来たキラキラ光輝く2種類の7段雛人形や色とりどりの草花で飾り付けられて、たくさんの天羽族や蜜稚族の者達で賑わっていた。
それぞれが思い思いのテーブルに座りビュッフェスタイルに美しく並べられた、さまざまな美味しそうな焼き菓子や軽食のサンドイッチ、フルーツロールサンドや自分の好きなのように生クリームやカスタードクリーム、たくさんの種類のフルーツ等でトッピングできる紙コップで焼いたシフォンケーキや紅茶を楽しんだり、ティールーム一角に作られたウェディングドレスの特設会場で、ドレスを選ぶ者や試着室でさっそく着替える者など皆楽しそうに嬉しさに顔をほころばせながらひな祭りパーティーを楽しんでいた。
そうして、由楽に雅楽、天花の三人で準備したたくさんの種類や色の大人・子供・幼児用のウェディングドレスやドレスとお菓子やサンドイッチ、コップシフォンケーキは、天羽族、蜜稚族の皆に気に入られドレスは普段着では、もったいないと特別な日の天羽族と蜜稚族の晴れ着になり、ひな祭りパーティーは大盛況だ。
そんな天羽族や蜜稚族の皆をぼっーと見がら由楽は雅楽に
「ねぇ、雅楽。僕こうして天羽族や蜜稚族の皆が嬉しそうにウェディングドレスやドレスを選んだり、着てるのを見てたら、なんて僕は固定観念に囚われてた小さな人間だったんだろうと思うよ。
だって、僕の住んでた国ではウェディングドレスは女性が着るものであって男性が着るのは恥だとか可笑しいという固定観念があって、その固定観念から少しでも外れた行動や格好をするだけで、周囲の人からは あの人は頭がおかしいだの気でも狂ったんじゃないかと馬鹿にされたり差別され、周囲の人や社会から冷たい目で つまはじきにあうんだ。
けど、天羽族、蜜稚族の皆はそんな事知らなくて、ただ自分が好きなものや着たいものを着るというシンプルな考えでドレスを嬉しそうに着てる……………話がまとまらなくてうまく言えないけど、男らしさとか女らしさとか結局は誰かが自分の利益やエゴのために勝手に決めてたんだなて思うよ。
ランドセルの色じゃないけどさぁ、男の子や男性だって赤やピンクや淡く華やいだ色が好きな人もいるし、女の子や女性だって黒や青や茶色などの濃く暗い色が好きな人もいる。
今は だいぶランドセルの色などの種類が増えて変わってきてるけど、やっぱり 小学校6年間ずっと使うものだからこそ、本人が選んだ好きな色のランドセルの方が大事にするし思い出が残ると思うんだ……けど、結局 同級生や周りの大人達の周囲の固定観念がその子の この色が好きだからこの色のランドセルが欲しいや選んだというシンプルな思いや考え、個性を殺してしまって、知らず知らずのうちに幼い頃から男の子だから黒や青などの男らしい色や女の子だから赤やピンクの女の子らしい華やいだ色と言う固定観念に囚われたどこか生きにくい社会のしがらみにのまれていくんだろうね。
だいたい、男らしくあれや女らしくおしとやかにしなさいなんて考えがおかしいんだよ!
人と違うのは、それはその人の個性やアイデンティティー、そりゃあ、周りに暴力ふるったりとか迷惑かけたりとかは駄目だけどその人の人生は、その人自身のもの周りの人がとやかく言うのは僕は違うと思うんだ……。
けど、皆が皆好き勝手に生きてたら社会が回らなくなる事も頭では解ってる…けど、………けど、よくよく考えていったら結局生きにくい社会を作ってるのは、固定観念に囚われすぎた自分自身なのかも知れないね。」
この世界に移住して来て天羽族や蜜稚族に出会い、この世界の理不尽さや傲慢さにふれ、たまに考え込む事が増えた由楽は、しばらく黙って何か考え込み 何か1つ決意したかのような顔をして一度大きく頷き雅楽に優しく微笑みながら
「雅楽、僕達もシフォンケーキ食べに行こう。」
と誘い天羽族や蜜稚族が賑わうティールームへ歩き出した。
そして、由楽のガーディアンでもあり弟の雅楽もまた多くを語らない由楽に何か納得しているように微笑みながら隣に並び歩き出す。
「あっ!由楽、雅楽 何処にいたの?天花探してたんだよ!ねぇ、天花も新しいドレス選んでもいい?」
「うん。良いよ。どれが気に入ったの?」
「天花、どれになるの見せて?」
そうして、由楽の中で何か1つの決意が決まったひな祭りパーティーは大成功のうちに幕を下ろした。