レモンメレンゲパイと蜜稚族と建国
その日 由楽と雅楽の二人は落ち着きなく部屋の中をうろうろと動き回っていた。
「天花、どうしたんだろう。おやつの時間30分も過ぎてるのに帰ってこないなんて……。いつもならおやつの時間5分前には、必ず帰ってきてるのに…何かあったのかなぁ……どうしょう、雅楽。」
「大丈夫だよ、由楽。何かあったら枇天達が必ず何か言ってきてくるはずだよ………大丈夫、大丈夫、天花は、もうすぐ帰ってくるはずだよ……。」
と3人一緒に暮らしだして、はじめての約束の時間になっても帰ってこない天花を心配して無意識に動き回っていたのだ。
その時 いつも天花が散歩するさいに出入りに利用するベランダ側の扉が開き、どこかぐったりした様子の3才ぐらいの蜂蜜色した髪の幼児を抱えた泥だらけの天花が帰ってきた。
驚いた由楽達は、天花と幼児に慌てて駆け寄り2人に怪我や何か悪いところがないかと魔法を使い念入りに調べると、幼児の方が軽い空腹とでるだけだったので、ひとまず怪我などない事に安心して、魔法で体や服の汚れをおとし天花に何があったのか聞いてみた。
すると 幼児と思っていた天花に抱かれていた人物が話だし、自分は蜜稚族のチハと言う、32才のれっきとした成人した大人で、たまたま主食の花の蜜を探して飛んでいて、泥にハマってもがいてる天花を見つけ、小さな体ながらも必死に助け出そうと頑張っていたところ……なんと、それは天花が泥遊びしていただけで、チハが泥遊びに参加してきたと勘違いした天花に巻き込まれ さんざんもみくちゃにされたあげく、体力を使い果たし動けなくなったチハを天花が心配して、無理矢理ここまで連れてこられたらしい。
話を聞いた由楽と雅楽は、ただひたすら平謝りして、3時のおやつに作っていたレモンメレンゲパイと蜂蜜入りのほんのり甘い紅茶を出しておもてなしした。
最初はまだ頑固親父のようにグチグチと文句を言っていたチハであったが由楽達に出されたレモンメレンゲパイを一口食べると幼児特有の少し甲高い可愛らしい声で
「お、お、美味しいだっち!!コレはなんなのだっち?
一番上のこんがり焼き色のついた部分はサクッとしてるだっち、中の白い部分はフアフアしたサクフアの食感だっち。
それに、黄色のクリームの部分は甘酸っぱく、濃厚な口当たりだっち。一番下はサクサクパリッとした食感に 全てを一緒に口にすると様々な食感や味が混ざりあい絶好なハーモニーを生み出しているだっち!実に美味しいだっち、いくらでも食べれるだっち。」
と、チハがレモンメレンゲパイに感動して、口では自分は大人で子供扱いするなと吠えていたチハであったが まるで小さな子供のように口の回りにメレンゲやレモンクリーム、パイ生地をつけながら小さな口いっぱいにつめこみモグモグ食べて進めていた。
その間にチハの前の席に座った由楽達は、改めてじっくりと32才に見えない可愛らしいチハを見ていると 髪の毛は蜂蜜色のマッシュルームカットに先っぽに白い綿毛のようなふあふあしたモノがついた黄色の角のようなモノが頭から2本ぴょこんと飛び出ており、顔は真ん丸の大きな黒目の瞳に ぷにぷにのリンゴほっぺのベビーフェイスで、首もとには白いフアフアしたモノをつけて、黒いシャツにまるでオムツをしているかのようにぷっくりとふくれた黄色と黒のボーダー柄の半ズボンに背中の真ん中にに左右2枚、2枚の合計4枚の光沢ある小さめの丸い羽を生やした3才児ぐらいの体格の大変可愛らしい、可愛い物好きの二人の心をくすぐる姿形をしているのだ。
可愛い物好きな由楽と雅楽は、小さな口でレモンメレンゲパイを一生懸命に食べているチハの姿にメロメロになりながら見ていると、レモンメレンゲパイをその小さな体のどこに入ったのか7切れ食べ、満足げに紅茶を飲んだチハが由楽達に話しかけてきた。
「おの、ところでだっち。このお城に住む王様はどこにいるだっち?良かったらちょっと挨拶と相談したいことがあるだっちけど」
と言うチハに王様?と不思議に思いながらも 自分がこの城の一応城主だと由楽がいうと、大変驚かれながらも急にかしこまって相談したい事があると話し出した。
チハの話では、もともとお互い争いを好まない種族の間柄で天羽族と蜜稚族は仲が良く昔から交流があり、天羽族の力を使い保たれた自然豊かな草花が生息した場所を主食の花の蜜を集める蜜稚族の為に分け与えてくれ、そのお返しに蜜稚族秘伝で作り出す甘く光輝くキラキラした真ん丸の蜂蜜の実を渡していたと言う。
しかし、あの残酷な事件のせいで天羽族と連絡もとれなくなってしまい、自分達 蜜稚族も長年の確執があったナガハ族に天羽族を襲った国としめしあわせたように同じ時期に里を襲われ、天羽族が分け与えてくれ自然豊かな草花の生息した土地を奪われ、里や仲間を守るために戦った多くの一族の者達を失いながらも命からがら逃げ出した者達で細々と暮らしている事。
ここまでの帰り道に天花に この王国の成り立ちを聞いて良かったら自分達 蜜稚族も森の片隅でよいので王国に住ませてもらえないかとの事だった。
話を聞いた由楽と雅楽は、こんな可愛いらしい小さな蜜稚族を襲うなんてナガハ族は、可愛い物好きの自分達に喧嘩を売ってるのかと怒りMAXになりながらも森の片隅どころかこの城に住めば良いよと由楽と雅楽の2人が2つ返事で了承するとチハがあまり知られていない蜜稚族の内情を由楽達だけに特別に教えてくれた。
自分達は蜜稚族には性別がなく、大きな大木の中に各部屋を作り一番安全な部屋に新たな種族の者を生み出す実をつける生命の木を植え、大切に育てながら蜜稚族秘伝の蜂蜜の実を作ったり、のんびりと生活するらしい。
ちなみに生命の木は、ナガハ族との戦いとのさいに たくさんの犠牲をだしながらもなんとか種に変え持ち出せたらしい。
そうして、話しているとおやつのレモンメレンゲパイを食べて満足げに1人日課のおやつ絵日記を書いていた天花に頼み、呼んできてもらった天羽族 長の天飛と長老の天衣の二人も交えて5人で、天羽族や蜜稚族の間の話や住居の要望、この国での話などがある程度まとまったので、他の蜜稚族の者達への説明や移住を手伝う為に天羽族の者達とチハは一度 蜜稚族の隠れ里に帰る事りすぐに戻って来る事になった。
その間に由楽、雅楽、天花達3人は、空の散歩中に発見した天花オススメの城の広大な庭園一角にある広々した一面花畑になっている空き地にやって来た。
「ね、すごいでしょう!!この前、散歩中に見つけたんだよ。」
と、どこか誇らしげに天花が2人に話すと由楽が
「うわー、本当に見渡す限り花畑だね。すごーい!天花よく見つけたね。スゴいよ!
僕 一応この城の城主だけど、こんな場所があるなんて全然知らなかったし、いまだにお城が建ってる島のぜんぼうさえ解ってないよ。それに 島のぜんぼうさえ解ってないんだから天羽族の皆が住む森の中なんて一日で迷子になる自信があるよ。…………あれ?…………これって、城主やこの辺りの一応 主人と呼ばれてる者して…大丈夫…なの……かなぁ…?……あれ、あれれれ?…」
「天花、こんな素敵な場所に連れてきてくれて、ありがとうね。
それにしても 本当に広いね。僕の見た感じだと東○ドー○5個分の広さはあると思うよ。どうする由楽、蜜稚族の皆の家 この場所にする?
もし、この場所で決定なら日当たりや家の構造から計算して………」
と、この場所を発見した天花を誉めながら、2人に誉められてご機嫌な天花と城主やこの辺りの主人として自分は大丈夫なのかと自虐気味の由楽、この場所に家を建てる最適な場所を考え始めた雅楽の三者算用の3人であった。
雅楽や天花に慰められて、少し立ち直った由楽は、さっそく雅楽が計算してはじき出した家(大木風の)を建てる最適な場所まで、魔法で花達を移動させながら光輝くキラキラしたダイアモンドみたいなレンガの道を作り移動した。
「あれ…おかしい……僕 赤レンガの道を思い浮かべながら魔法使ってるのに いつものダイアモンドみたいな道になってるよ。」
「由楽 この道キラキラして天花大好き!」
そうして、由楽が軽く混乱しながら 雅楽の決めた家を建てる場所につくと家を建てる広大なスペースを作るために花達を移動させ花畑を一回り大きくしたり、その際に花畑周りの木々を可愛らしい様々な動物の形に変えて周囲にバランスよく少々メルヘンチックな空間に配置したりした。
その際、由楽達は気づいてなかったが1/4の花や動物の形に変えた木々が光輝くダイアモンドみたいな新種の植物に進化していたのだった。
そして 家を建てるスペースを作り出したした由楽は、チートを使い天羽族の皆の玉子ハウスを建てた時のように集中して魔法を発動した。
すると辺り一面が眩しい光に包まれ、次の瞬間 由楽達3人の目の前に毎度お馴染みのダイアモンドのように光輝くキラキラしたビル20階立ての高さの規格外な大きさの大木が実現した。
あまりの大きさと高さに加え、またしても普通の木の大木をイメージして魔法を発動したのに光輝くダイアモンドの建物が実現した事やあんなに蜜稚族の家になる大木の外建・内部等を話し合って決めたチハになんと説明しようとショックを受けた由楽は、その場に崩れ落ち また雅楽に必死に慰められていた。
そんな2人をよそにマイペースな天花は、大木の上まで羽で空高く舞い上がり光沢がありキラキラした真珠のような素材の大木から生えた葉っぱを4~5枚とり、2人のもとに帰ってきた。
「由楽、雅楽、見てみて。この木の葉っぱ 見た事ない素材で光沢があってキラキラして綺麗だよ!いっぱいあったから1枚づつあげるね。」
「えっ!なにこれ。こんな葉っぱが上のほうにたくさん生えてるの?しかもこの葉っぱ いつものダイアモンドみたいなのじゃなく真珠みたいな素材でできてるよ!!
由楽、スゴいよ!今度は、ダイアモンドのような物だけじゃなく真珠のような物まで作り出せるようになってるよ!!」
天花から貰った葉っぱを見て少し興奮気味の雅楽から、ただでさえダイアモンドのような光輝くキラキラしたヘンテコな道や建物しか造れない事に落ち込んでる由楽に、本人気づかないうちに新たなダメージをあたえた天花と雅楽なのであった。
「ダイアモンドに続き真珠………どうなってるんだ、僕の魔法は…………」
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そうして、完成したばかりの規格外な大きさの大木を前に しばし三者算用の思いで由楽達が見上げていると他の蜜稚族の者達を連れて戻ったチハや蜜稚族の生活雑貨等を持った天羽族の者達などの大勢の者達が大木の周りに降り立った。
「由楽、もしかしてこの素晴らしい大木はわが一族の為に作ってくれた家だっちか?」
「……コクリ…」
「ありがとうだっち!!スゴいだっち!嬉しいだっち!こんな立派な家に住んだ事ある蜜稚族は、これから住む僕達だけだっち!」
と由楽の無言の頷きに かなり興奮気味に由楽達の回りを飛び回り感謝の言葉を述べるチハやチハの言葉を聞き嬉しそうに無邪気に飛び回る3才児にしか見えない可愛らしい蜜稚族を見ながら、本当は失敗作などとは口が避けても言い出せない由楽と雅楽であった。
その後、蜜稚族と話ながら大木の室内の細かな手直しや天羽族の手伝いのもと引っ越し作業などしていると天花が持っていた大木の真珠色した光沢のある美しい葉っぱを見て、羨ましがる天羽族の為に蜜稚族に一言断りを言い、今日の日の記念にと天羽族、蜜稚族の者達全てに1人1枚づつ葉っぱを配る事になった。
こうして 新たに可愛らしい蜜稚族を仲間に加えて、いつの間にやら天花の説明で、蜜稚族から天羽族に広がり由楽は王様、雅楽は補佐官の朝倉王国なる王国が由楽達が知らぬ間にひっそりと建国していたのであった。
ちなみに その事を知った経緯は、大木の生活を一通り満喫し美味しいお菓子や料理が食べれる城に押しかけ女房ならぬ押しかけ執事でやって来た少々言動がじじくさい蜜稚族のチハからであった。