シフォンケーキと初めてのドレス
その日朝早くから由楽と雅楽は、天花の為にシフォンケーキを焼いていた。
実は昨日の晩ごはんの時に、それぞれの好きな甘い食べ物の話になり。
由楽が好きなシフォンケーキの話をすると、食べた事のない天花が、すごい興味をもち由楽を質問攻めにしたのだ。
なので、優しく基本天花に甘い由楽と雅楽の2人は、天花が寝ている早朝の朝早い時間からシフォンケーキを作り焼いてあげている。
「由楽、メレンゲ。グラニュー糖を2回にわけて加えて、ツノが立つぐらいまで泡立てたよ。
しかし、このハンドミキサー楽だね。僕このメレンゲ泡立て器でいちから泡立てると考えるだけで、腕がつりそうだよ。」
「ありがと、雅楽。僕の方も卵黄生地できたよ。
しかし、本当にハンドミキサー様々だね。
僕の方も卵黄と砂糖を混ぜた卵黄生地にサラダ油を加えた後、白っぽく変わって、マヨネーズ状に波が立つまでしっかり泡立てなきゃいけないから、泡立て器じゃあ、しばらく腕がプルプルしちゃうもん。
それに今日は、卵の世話を頑張ってる枇天達にもプレゼントしたいから。大量に作る時には、ハンドミキサーがなくちゃ2人とも泣いちゃてるね。
じゃあ!後は、僕の方の卵黄生地には、水もバニラビーンズもふるった薄力粉も加えてるから、雅楽が泡立てくれたメレンゲと合わせて、天花が起きてくる前に焼いちゃおうね。」
と2人でクスクス笑いながら、シフォンケーキを仕上げて焼いていく。
そして、焼き上がったシフォンケーキを型ごとひくっくりかえして冷ましていると、最近お気に入りの黒猫のぬいぐるみを持って天花が起きてくる。
「あっ、天花。起きてきたんだね。おはよう。」
「天花、おはよう。早く顔洗っておいで、朝ごはん食べよう。」
と雅楽と由楽が起きてきた天花に気づき声をかけると
「由楽、雅楽おはよう。なんかいいにおいがするね。天花お腹すいて目が覚めちゃったよ。」
と天花らしいセリフを残して、雅楽の言葉に従い顔を洗いにいく天花なのであった。
====================
その後、パジャマから服に着替えてきた天花は、由楽や雅楽と共に朝食を食べ始める。
「「「いただきます。」」」
「うわ~、今日の朝ごはんも美味しそう!今日の朝ごはんは、何て言うの?」
と必ず初めて見た料理やお菓子の名前を聞く天花に、聞かれた由楽は
「今日の朝ごはんはね、昨日の朝ごはんが和食だったから洋食にしてみたんだ。
メインにベーコン、トマト、ブロッコリー、じゃが芋、とろけるチーズが入った野菜いっぱいオムレツと豆とハムのサラダ、五種類きのこのオーブン焼き、フルーツヨーグルト、コーンポタージュ、ロールパン、オレンジジュース、牛乳になるよ。」
「うん。いつ食べても由楽のご飯は美味しいね!いつも美味しいご飯ありがとね、由楽。」
「ご飯ありがと、由楽!雅楽も家の事ありがと!」
とお互いにお互いの仕事を労う3人は、なごやかに食事を再開する。
「そうだ、天花。今日の3時のおやつは、昨日天花が食べたがってたシフォンケーキだよ。楽しみに待っててね。」
「本当に!やったー!絶対おやつまでには、空の散歩から帰ってくるから待っててね。」
と小躍りしながら喜ぶ天花を見て、由楽が雅楽に
「ねぇ、雅楽さん。今日はお天気がとても良いですわよね。
ですから、せっかくなので1階のティールームで、庭の草花を愛でながら優雅にお茶会でもいたしませんこと?」
いつもはねぐらのあるお城3階しか使用してない由楽が、何を思ったか、この前漫画を見て、かすかに覚えている貴族のお嬢様の真似をし。途中笑いがこみあげるのを必死にこらえ、雅楽に話しかける。
それを聞いた雅楽も笑いがこみあげるのを必死にこらえ、由楽の真似をして
「そうですわね、由楽さん。今日はお天気も良いから、1階のティールームでお茶をいただきましょうね。」
と由楽と雅楽がそくせきの寸劇をして、いつものように遊んでると
「天花、お茶会知ってる!この前由楽と見た漫画に描いてあった。ヒラヒラした綺麗なドレスという服を着て、お菓子を食べる事でしょう!」
とあってるようなあってないような漫画で得たお茶会の知識を語りながら、天花が急に立ち上がり。
「お茶会するなら天花もあのヒラヒラして、綺麗なドレス着たい!
由楽と雅楽も着て、3人でお茶会したら楽しそう!
だから今日の散歩は無念ではありますが、中止して。ドレスを探しに3人で行きます!」
と天羽族特有のキラキラしたり、ヒラヒラしたり、綺麗な物が大好きな天花のよく解らない宣言を聞きながら、いつの間にか由楽と雅楽と天花の3人のドレスを着る事が決定する。
自分達が始めた些細なお遊びがドレスを着る事になるとは思わなかった2人は、あまりの事に呆然とし。
一方天花は、宣言後なにやら一仕事終えたかのように1人満足げに残りの朝食を食べ始めた。
====================
あの後、天花になんとかドレスを諦めさそうと頑張った2人であったが、天花の決意は硬く。
結局朝食後、天花の満足するドレスを由楽のショッピングチートを使い3人で探し回るはめになったのであった。
ちなみに3人がピッタリのドレスをやっと見つけたのは、姉が結婚する際、小柄な身長等の関係で。
田舎の結婚式場には、ちょうど良いサイズや気に入ったデザインのウェディングドレスがなかったため、都市にある幅広いサイズやデザインがあるウェディングドレス専門店に何度か訪れる事になったおり。
仕事でこれなかった義兄の代わりに、2度だけ姉の付き添いで由楽が行ったのを思いだし。ショッピングチートで扉を実現させ事なきを得た。
「このキラキラしたドレス可愛いね。天花の為に背中の羽がだせるように布がないから着るの楽だった。
由楽も雅楽も探してくれてありがと!それに二人とも似合って可愛いね。
シフォンケーキもふわふわして美味しいし。
この生クリームとカスタードクリームとそれぞれ食べてもクリーム同士を合わせて一緒に食べても全部美味しい!
天花、シフォンケーキ大好き!また、作ってね。」
とドレスのスカートがくるぶしまでで、足首が見えスッキリとした印象のアンクル丈に背中があいたホルターネックの純白のキッズ用のウェディングドレスを完璧に着こなした天花が、ニコニコと口のまわりに生クリームをつけながら、ドレスやシフォンケーキの感想等を由楽と雅楽に話しかける。
「うん。天花が喜んでくれたら僕も雅楽も嬉しいよ。」
と天花が由楽と雅楽の為に選んだ上半身はタイトで、スカートにふんわりとしたボリュームを持たせた形のプリンセスラインのウェディングドレスを着た。
まるでどこかの国のお姫様にしか見えない由楽が、力なく微笑みながら天花に答える。
その横で、胸下の切り替えからスカートが伸びていくデザインのエンパイアラインの袖付のウェディングドレスを着た。
可愛らしいお姫様にしか見えない雅楽も何か大切なものを失った喪失感を漂わせながら、力なく微笑み頷く。
こうして、なにも知らない者がみれば、可愛らしい3人のお姫様が優雅にお茶会を楽しんでいるかのようにしか見えないなか、由楽と雅楽の黒歴史になる1日が過ぎていったのであった。
ブックマーク、お気に入り、評価をしてくださった方、本当にありがとうございます。
誤字、脱字が多々ある作品ですが、これからもよろしくお願いします。