ささみチップス短冊と七夕祭り
その日 由楽達が住む朝倉王国では、朝早くから由楽と雅楽の2人が夕方から開催される『七夕祭り』のため、ある料理を山のように揚げていた。
「よし、これでラスト1枚。終わりっと。フゥ~、雅楽。こっちのささみチップス揚げ終わったよ。そっちは、どう?終わった?」
「こっちも夏野菜の天ぷら揚げ終わったよ。ハァー夏
の揚げ物は、本当に疲れるねぇ。」
「本当だね。暑くて嫌になるよ。後は、素麺湯がくだけだったけ?」
「うん。そうだよ。素麺用の薬味やトッピングに葱、ミョウガ、生姜、山葵、刻み海苔、胡瓜、錦糸卵、鶏肉、ツナなんかも準備したから、後は素麺湯がくだけでバッチリだよ。」
と2人は、話しながらも手はテキパキと動かし、残りの祭り準備を終えていくのであった。
◇◇◇
そうして、あらかたの祭り料理を作り終えた2人が城の一角にある、七夕祭り会場に料理を持って来てみると、そこでは天花とチハが、何やらおかしな事をやっていた。
「だから、レッドの笹が七夕レンジャーのリーダーだってば!」
「何いってるだっちか!七夕レンジャーの真のリーダーは、少しニヒルで、しかし心優しきブラックだっちよ!」
と何やら口喧嘩している。
「ちょっと2人とも、この忙しい中 何喧嘩してるの!」
「そうだよ。今日の夕方からみんな集まって七夕祭りするて、話してたでしょう?」
と由楽と雅楽が2人を注意すると
「だってチハが、七夕レンジャーのリーダーがブラックだって言うんだもん!ねぇ、由楽。七夕レンジャーのリーダーは、レッドだよねぇ?」
「違うだっち!七夕レンジャーの真のリーダーは、ブラックだっちよ!雅楽もそう思うだっちよねぇ?」
「だから、レッドとかブラックとか、七夕レンジャーていったい何なの?」
と訳が解らない由楽が2人に聞いていると、隣で一緒に話を聞いていた雅楽が
「あっ!もしかして、七夕レンジャーて2人の後ろにある笹の事を言ってるんじゃない?」
と由楽に話すと天花とチハが2人が
「笹じゃないよ!七夕レンジャーだよ!ねぇ、チハ。」
「そうだっち!笹じゃないだっちよ。七夕レンジャーだっち!ねぇ、天花。」
「うん!これはまぎれもなく、この前見た戦隊物ヒーローの七夕レンジャーだよ!」
とさっきまで口喧嘩していたのが嘘のように、2人声をあわせて雅楽に抗議する。
「えっ!七夕レンジャーて、どういうこと?昨日の晩 七夕飾り用の笹が無かったから、チートで笹をだしただけだよ。」
と昨日の夜に半分眠ったような状態で、夢見心地のまま1人七夕祭り会場に来た由楽は、チートで笹をパッパッと生み出すと良く確認もせずに眠さに負けて部屋に帰ったため。
今の今まで、笹の事なんか綺麗サッパリ忘れていて、天花とチハの話を聞いて、慌てて何事かと2人の後ろの笹を除きこむ。
するとソコには、笹なんか何処にも無く。
七夕用の五色の短冊の赤・青・黄・白・黒(紫)の短冊ならぬ、ルビーやサファイア、トパーズ、ダイヤモンド、アメジストの5種類の宝石の用に光輝く戦隊物ヒーローのような姿形の銅像がカッコいいポーズを決めて立っていた。
「な!なんじゃこりゃー!笹は何処に行ったー!?あれ?そもそも僕 笹を生み出したよねぇ?」
と軽いパニックにおちいり。その場で1人バタバタする。
「ちょ、ちょっと。落ち着いて由楽。ゆっくり深呼吸して、それから、昨日の笹を作った時の事 思い出してみて。」
「そ、そうだね。フゥ~ハァー、フゥ~ハァー。」
と優しく落ち着いた雅楽の声に、少し落ち着きを取り戻した由楽が昨日の晩の事を思い出す。
「えっと、昨日海水浴場で雅楽や天花とチハ達と遊んで、疲れて帰って来た後、お風呂に入って、ご飯を食べて。
眠くなって来たから、忘れないうちにと今日の七夕祭り用の笹を作りに会場まで来たんだっけ…………。
えっと……それから、笹を作り出してる時に七夕飾りや短冊が必要だなぁーと考えていて。」
と昨日あった出来事や笹作りしている時に考えていた事を少しづつ思い出しながら、ブツブツ呟いていく。
「確か七夕は、中国の天の川をはさんで会う事ができるという伝説と習い事の上達を願う中国の行事『乞気巧奠』と、古くから日本にあった『棚機津女」がまじりあって出来たと言われる説があると爺ちゃんが教えてくれたなぁーとか
七夕用の短冊は、何かの本に書いてあったけど、中国の陰陽五行説という思想からきているんだっけと考えながら、赤・青・黄・白・黒(紫)なんて、戦隊物ヒーローみたいじゃんと思って1人笑ってたん…だ………あっ!あれか!」
と犯人が発覚し、1人落ち込む由楽の回りで天花とチハが
「やっぱり由楽が作ってくれたんだね!七夕のお祝いにこんなカッコいい七夕レンジャーありがとう!スゴく嬉しい!」
「本当だっち!こんなカッコいい戦隊物ヒーロー初めて見ただっち!七夕レンジャーありがとうだっち!」
「そうだ、チハ。せっかくだから、皆が来る夕方まで、七夕レンジャーの周りをかっこ良く飾り付けようよ!」
「良いアイディアだっちね!そうしょうだっち。」
と落ち込む由楽を華麗に無視した天花とチハが盛り上がるなか、雅楽に慰められた由楽達2人は、残りの七夕祭りの準備を終わらせるのであった。
◇◇◇
「みんな 忙しい中、七夕祭りに参加してくれてありがとう。
今日は、七夕なので笹に願い事を書いて短冊を結ぶ予定でしたが、とあるアクシデントがあったため………。
このささみチップスを短冊に見立てて、用意されているハニーマスタードチーズソースやチリソース等のソースをお好みでかけていただき
最初の1枚を食べるさいは、思い思いに願い事を思い浮かべながら食べて下さい。」
と、まだ少し落ち込んだ様子の由楽が挨拶するなか七夕祭りが始まるのであった。
☆☆オマケ☆☆
「うわー!何これ!ささみがパリパリしていて、甘しょっぱいハニーマスタードチーズソースがささみチップスと良く合っていて美味しい!ねぇ、チハ!これスゴく美味しいよ!」
「うん、うん。本当に美味しいだっち!薄くのばされて揚げられたささみがクリスピーのようにパリパリしてるだっち!
由楽、雅楽、このささみチップスなんで、こんなにパリパリしてるだっちか?」
「あぁ、それはね。ささみを生ハムくらいにヒラヒラになるまで薄くのばしてから、適量の片栗粉を薄くまぶして揚げたんだよ。
だから、パリパリサクサクで美味しいでしょう!」
「そうだっただっちか。だからこんなにパリパリサクサクで美味しいだっちね!」
「へぇー、片栗粉をまぶして揚げてあるからパリパリして美味しいんだね。」
と由楽の説明で天花とチハが納得するなか、雅楽がこそっと
「そうそう。ささみをのばすのは、簡単で楽しそうにやってたけど。揚げる時は、ちぎれやすくて大変なのか、由楽少しささみに悪態ついてたよなぁ。
お前の実力はそんなもんじゃないだろうや、ガッツをみせろだとか」




